共有持分の遺産分割協議書の作成方法
共有持分の遺産分割協議書の作成方法

目次
不動産を相続したものの、相続人が複数いるため「共有持分」の状態になりそうだとお悩みではないでしょうか。
「遺産分割協議書」を正しく作成しなければ、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。
本記事では、不動産を共有持分で相続する際の遺産分割協議書の作成方法について、ひな形を交えながら詳しく解説します。
最後までお読みいただくことで、遺産分割協議書の正しい書き方がわかり、将来の相続トラブルを回避する方法を具体的に知ることができます。

遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分割について話し合った結果(遺産分割協議)を書面にまとめた契約書のことです。
不動産をはじめとした遺産の分割方法について、誰がどの財産をどれくらいの割合で相続するのかを明確に記します。
遺産分割協議書は、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きなど、さまざまな相続手続きで必要となる非常に重要な書類です。
特に不動産を共有持分で相続する場合は、それぞれの持分割合などを正確に記載しないと、将来のトラブルの原因になりかねません。
共有持分の遺産分割協議書の書き方
では早速、この記事の核心である遺産分割協議書の書き方について、具体的な記載内容とひな形を見ていきましょう。
遺産分割協議書に記載すべき必須内容
遺産分割協議書に決まった形式はありませんが、以下の内容は必ず記載する必要があります。
特に不動産を共有名義で相続する際は、それぞれの「共有持分の割合」を分数で正確に記載することが極めて重要です。
- 被相続人の情報: 氏名、最後の住所、本籍、死亡年月日を正確に記載します。
- 相続人全員の合意: 協議書の内容が相続人全員の合意に基づくものであることを明記します。
- 遺産の分割内容: 「誰が」「どの財産を」「どれだけ」取得するのかを具体的に記載します。不動産は登記事項証明書の通りに、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで正確に記します。
- 共有持分の割合: 共有で相続する場合は「Aが持分3分の2、Bが持分3分の1の割合で共有する」のように、分数で明確に記載します。
- 後日判明した遺産: 後から見つかった遺産の取り扱いについて、あらかじめ決めておくとトラブルを防げます。
- 作成年月日
- 相続人全員の署名・実印
遺産分割協議書のひな形
遺産分割協議書には、既定の書式はありません。
しかし、サンプルがなければ作成は難しいため、以下の遺産分割協議書ひな形を参考にしてください。
なお、作成は手書き・パソコンのいずれでも問題ありません。
遺産分割協議書 被相続人 共有太郎(昭和○○年○○月○○日生まれ) 死亡日 令和○○年○○月○○日 本籍地 ○○県○○市 ○丁目○番 最後の住所地 ○○県○○市 ○丁目○番○号 被相続人の遺産について、共同相続人の全員において分割協議を行った結果、下記のとおり遺産を分割することに同意した。 1.相続人 共有松子が取得する遺産 【土地】2分の1 所在:○○市○○町○○丁目 地番:○番 地目:宅地 地積:○○.○㎡ 【建物】2分の1 所在:○○市○○町○○丁目 家屋番号:○番 種類:居宅 構造:木造瓦葺2階建 床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 【現金】○○,○○○,○○○円 【預貯金】 ○○銀行○○支店 定期預金 口座番号○○○○○○○ ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○ ただし口座名義人はいずれも被相続人 共有太郎 2.相続人 共有竹男が取得する遺産 【土地】 2分の1 所在:○○市○○町○○丁目 地番:○番 地目:宅地 地積:○○.○㎡ 【建物】2分の1 所在:○○市○○町○○丁目 家屋番号:○番 種類:居宅 構造:木造瓦葺2階建 床面積:1階○○.○○㎡ 2階○○.○○㎡ 3.相続人 共有梅美が取得する遺産 【有価証券】 ○○株式会社 株式1000株 ○○株式会社 株式500株 ただしいずれも○○証券○○支店(口座名義人は共有太郎)保護預り 4.上記以外の被相続人にかかる遺産が新たに発見された場合、相続人共有松子が相続することに合意した。 以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を3通作成し、署名捺印のうえ、各1通ずつ保管する。 令和○○年○○月○○日 【住所】○○県○○市○丁目○番○号 【氏名】 実印 【住所】○○県○○市○丁目○番○号 【氏名】 実印 【住所】○○県○○市○丁目○番○号 【氏名】 実印 |
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遺産分割協議書は自分で作成できる?
遺産分割協議書は、専門家に依頼せず自分で作成することも可能です。
ひな形を参考に、記載すべき内容を漏れなく記述すれば、法的に有効な書類となります。
ただし、不動産の表示を誤ったり、記載内容に不備があったりすると、法務局で登記申請が受理されないリスクがあります。
内容が曖昧だと将来のトラブルの原因にもなりかねないため、少しでも不安がある場合は専門家への依頼を検討しましょう。
「公正証書」で作成するメリット
作成した遺産分割協議書を公証役場で「公正証書」にしておく方法もあります。
公正証書にしておくことで、非常に高い証明力と執行力が得られるという大きなメリットがあります。
万が一、協議書の内容を守らない相続人がいた場合、裁判を起こすことなく、直ちに給与や財産の差し押さえといった強制執行の手続きが可能になります。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽造のリスクがなくなる点もメリットです。
司法書士に作成依頼する場合の費用
遺産分割協議書の作成を司法書士に依頼する場合、費用は相続財産の内容や相続人の数によって変動しますが、一般的には5万円〜15万円程度が相場です。
不動産の相続登記まで一括で依頼することが多く、その場合は登記費用も別途必要となります。
費用はかかりますが、書類の不備による手戻りや、将来のトラブルリスクを考えれば、専門家に依頼する価値は十分にあると言えるでしょう。

遺産分割協議書が必要となる具体的なケース
遺産分割協議書の作成が事実上必須となるケースとしては、以下のようなものがあります。
- 遺言書がなく、法定相続分と異なる分割をする場合
- 遺言書はあるが、相続人全員の合意で異なる分割をする場合
- 遺言書の内容が不明瞭、または無効である場合
ケース①:遺言書がなく、法定相続分と異なる分割をする場合
遺言書がない場合、遺産の分割方法は相続人全員の話し合いで決めることになります。
民法で定められた割合(法定相続分)通りに分けるのであれば、必ずしも遺産分割協議書は必要ありません。
しかし、不動産を特定の相続人が単独で相続する場合や、法定相続分とは違う割合の共有持分で相続する場合など、少しでも法定相続分と異なる分け方をする際は、その合意内容を証明するために遺産分割協議書が不可欠です。
ケース②:遺言書はあるが、相続人全員の合意で異なる分割をする場合
遺言書が存在する場合でも、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容とは異なる方法で遺産を分割できます。
例えば、「長男にすべての不動産を相続させる」という遺言があっても、相続人全員が「長男と次男で2分の1ずつの共有持分で相続しよう」と合意すれば、その内容が優先されます。
このようなケースでは、全員の合意があったことを証明するために、遺産分割協議書の作成が必要になります。
ケース③:遺言書の内容が不明瞭、または無効である場合
遺言書に「不動産は子たちで分けるように」といった曖昧な記載しかなく、具体的な分割方法が指定されていないケースがあります。
また、日付や署名がないなど、法律上の要件を満たしておらず遺言書自体が無効となってしまうケースも少なくありません。
このような場合も、相続人全員で改めて分割方法を協議し、その結果を遺産分割協議書として残す必要があります。
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遺産分割協議から協議書作成までの流れ
遺産分割協議書を作成する流れは以下の通りです。
- 相続人の調査・確定
- 相続財産の調査
- 相続人全員で協議(遺産分割協議)
- 遺産分割協議書の作成
Step1. 相続人の調査・確定
まず、誰が法的な相続人であるかを確定させる必要があります。
被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの一連の戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を取得して、相続人を一人も漏れなくリストアップします。
前妻との間に子がいる場合や、認知している子がいる可能性も考慮し、慎重に調査を進めることが重要です。
Step2. 相続財産の調査
次に、被相続人が遺した財産をすべて調査し、その価値を評価します。
預貯金や有価証券といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も調査の対象です。 不動産については、法務局で登記事項証明書を取得したり、役所で名寄帳や固定資産評価証明書を取得したりして、正確な情報を把握します。
不動産の価値は、後の協議や相続税申告の基準となるため、必要に応じて不動産鑑定士に評価を依頼することも検討しましょう。
Step3. 相続人全員で協議(遺産分割協議)
相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で遺産の分割方法について話し合います(遺産分割協議)。
協議は相続人全員の参加が必須であり、一人でも欠けていると、その協議は無効となります。
遠方に住んでいる相続人がいる場合は、電話やオンライン、手紙などでの参加も可能です。
全員が納得するまで話し合い、誰がどの財産を、どのような割合で相続するのかを決定します。
【協議が難航する場合】家庭裁判所の調停・審判
相続人間で意見が対立し、どうしても協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。
調停では、調停委員が間に入って話し合いを進め、合意を目指します。
それでも合意に至らない場合は、「遺産分割審判」に移行し、裁判官が一切の事情を考慮して分割方法を決定します。
Step4. 遺産分割協議書の作成
相続人全員の合意が得られたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。
作成した協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印します。
そして、全員分の印鑑証明書を添付して、1通の契約書として完成させます。
この後、完成した遺産分割協議書を使って、不動産の名義変更(相続登記)を法務局に申請します。
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不動産を共有名義で相続する3つのリスク
ここまで遺産分割協議書の作成方法を解説してきましたが、そもそも不動産を「共有名義」で相続すること自体に大きなリスクが潜んでいます。
安易に共有名義を選択する前に、以下の3つのリスクを必ず理解しておきましょう。
- 自分の持分だけで自由に売却・活用ができない
- 固定資産税や管理費の支払いを巡るトラブル
- 相続のたびに共有者が増え、権利関係が複雑化する
リスク①:自分の持分だけで自由に売却・活用ができない
不動産全体を売却したり、賃貸に出したり、大規模なリフォームをしたりするには、原則として共有者全員の同意が必要です。
自分は売りたいと思っていても、他の共有者の一人でも反対すれば、不動産全体を売却することはできません。
自分の持分だけを売却することは理論上可能ですが、不動産全体の利用権限がない「持分」だけを欲しがる一般の買い手はほとんど現れないのが実情です。
結果として、専門の買取業者に安価で買い叩かれるケースが多くなります。
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リスク②:固定資産税や管理費の支払いを巡るトラブル
固定資産税の納税通知書は、代表者1名(通常は持分割合が最も大きい人)に送付されます。
しかし、支払い義務は共有者全員が持分割合に応じて負っています(連帯納税義務)。
代表者が立て替えて支払った後、他の共有者からスムーズに費用を回収できないケースは非常に多いです。
管理費や修繕積立金、火災保険料なども同様で、金銭の支払いを巡るトラブルは後を絶ちません。
リスク③:相続のたびに共有者が増え、権利関係が複雑化する
共有状態は、次の相続が発生するたびに、ネズミ算式に共有者を増やしていきます。
例えば、兄弟2人で共有していた不動産で、兄が亡くなると、その持分は兄の妻や子に相続されます。
当初は2人だった共有者が、甥や姪、さらには会ったこともない人まで加わり、10人以上に膨れ上がることも珍しくありません。
共有者が増えれば増えるほど、全員の合意形成は絶望的に困難になり、不動産は塩漬け状態になってしまうのです。
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【結論】トラブル回避のため不動産は単独名義での相続が望ましい
ここまで解説した通り、不動産の共有名義は多くのトラブルの火種となります。
公平に見える共有名義は、実は将来の紛争の種をまいているのと同じなのです。
したがって、遺産分割協議においては、可能な限り特定の相続人が一人で不動産を相続する「単独名義」を目指すべきです。
他の相続人には、代わりに現金や預貯金を渡す(代償分割)などの方法で調整し、不公平感をなくすことが重要です。
もし、どうしても共有名義での相続を避けられない場合は、将来的に共有状態を解消する方法(持分の売却など)も視野に入れておく必要があります。
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まとめ
遺産分割協議書は、相続トラブルを防ぎ、円滑に手続きを進めるための重要な書類です。
この記事で解説した書き方や流れを参考に、不備のない書類を作成してください。
しかし、最も重要なのは、共有名義という状態が持つリスクを理解し、できる限り単独名義での相続を目指すことです。
「遺産分割協議がまとまらない」「自分の持分だけでも現金化したい」といったお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度、共有持分専門の不動産会社にご相談ください。
センチュリー21中央プロパティーは、共有持分を専門とする不動産仲介会社です。
これまでに延べ4万件を超えるご相談・売却実績があり、共有持分の取り扱いに関するノウハウは業界内でも随一です。
また、共有持分に強い社内弁護士が常駐しているため、いつでも法的な観点からの的確なアドバイスが可能。
書類の作成や契約など、あらゆるフェーズで安全・確実にお手続きを進めてまいります。
ご相談から売却まで諸費用は完全無料とさせていただいておりますので、共有持分のトラブルや売却でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
司法書士
司法書士ALBA総合事務所 代表
東京司法書士会新宿支部所属。平成16年に司法書士試験合格以来、一貫して司法書士業界で研鑽を積む。
相続に関する手続き・対策(遺言書作成、相続手続き、成年後見など)、不動産登記(共有持分、権利変更など)、そして債務整理(自己破産、個人再生、過払い金請求など)において、豊富な実績と深い知見を持つ。
会社設立などの商業(法人)登記や、各種裁判手続きにも精通し、多岐にわたる法的ニーズに対応可能。