共有不動産に強い弁護士はどうやって探せばよいの?|法律・税金
共有不動産に強い弁護士はどうやって探せばよいの?
目次
「弁護士へ相談したいけれど、いくらかかるかわからないし不安」
「共有不動産に強い弁護士の探し方を知りたい」
当社へ相続不動産のトラブル相談をされるお客様の多くが、このような悩みを抱えています。
相続不動産における持分状態の解消や売却の話がまとまらない場合は、訴訟(共有物分割請求訴訟)に発展する可能性があるためです。
共有物分割請求訴訟とは、裁判所を通じて不動産の所有権(持分)を他の共有者(相続人)から買い取ったり、不動産を売却して代金を分割したりして共有状態の解消を目指すものです。
実際、共有物分割請求訴訟にまで進展すると、費用や時間、労力などの負担がかかるほか、精神的なストレスも非常に大きくなります。
そこで今回は、共有不動産のトラブル解決をサポートしてくれる共有不動産に強い弁護士の選び方や費用感などを解説します。
相続による共有不動産のトラブルで悩んでいる方は、ぜひ本記事を参考にして不明点や不安を解消してください。
1.共有不動産に強い弁護士の探し方
共有不動産に強い弁護士を探す際は、次のようなポイントを押さえておくことが重要です。
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弁護士に依頼する理由
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弁護士に相談するメリット
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弁護士に相談するデメリット
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共有物分割請求の段階
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弁護士を選ぶ際の最大のポイント
以降では、上記それぞれについて解説していきます。
1-1 共有不動産のトラブル解決を弁護士へ依頼する理由は「共有状態の解消」が最も多い
当社へのトラブル解決相談において、共有不動産のトラブル解決を弁護士へ依頼する理由は、「共有状態の解消」が最多です。
「共有不動産のトラブルを弁護士へ相談したい理由は何ですか?」 (N=68 )
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共有状態を解消したい(51%)
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自分の相続持分を確保したい(21%)
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相手が話し合いに応じない(16%)
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その他(12%)
円グラフで表すと以下の通りです。

(図1_共有不動産のトラブルを弁護士へ相談したい理由)
1つの不動産について複数の所有者がいる共有状態は、トラブルになりやすい傾向があります。なぜなら、共有不動産は共有者1人の意思だけでは自由に不動産を売却したり、リフォームしたりできないからです。
つまり共有状態を解消できれば、他の共有者の意思に左右されずに済みます。
このような背景から、共有状態を解消するために弁護士に依頼したいといったニーズがあるのは当然ともいえるでしょう。
1-2 弁護士へ相談して解決するメリット
共有不動産のトラブルについて弁護士へ相談すると、次のようなメリットがあります。
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他の共有者に対してプレッシャーを与えて解決に進みやすくなる
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他の共有者に対して法的に正しい主張ができ、有利な解決を期待できる
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共有状態が解消される共有物分割請求訴訟にも安心して臨める
模式図に表すと以下の通りです。

(図2_弁護士に相談して解決するメリット)
自分だけで他の共有者に対して法的に正しい主張をするのは難しいですが、弁護士に相談すると法的に正しい主張ができます。その結果、より迅速かつ有利な価格で共有状態を解消できるなど、自分にとって有利な解決に進みやすくなる点がメリットです。
ただし、弁護士を通じて話し合いをしても話がまとまらず、訴訟(共有物分割請求訴訟)になる場合もあります。
そのような場合でも、弁護士が手続きを代行してくれるので安心して訴訟に臨めるでしょう。
1-3 弁護士へ相談して解決するデメリット
共有不動産のトラブルについて弁護士へ相談して解決すると多くのメリットがある一方、次のようなデメリットもあります。
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費用がかかる
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時間がかかる
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望み通りの結果になるとは限らない
模式図に表すと以下の通りです。

(図3_弁護士へ相談して解決するデメリット)
不動産の共有トラブル解決に向けて弁護士に相談や協議・調停・訴訟の委任をしようとすると、安くない費用を負担しなければなりません。弁護士に依頼するときにかかる費用の内訳や相場については後述しています。
また、弁護士の協力を得ると話し合いを進めやすくなる期待が持てる反面、かえって共有者間の争いが発展し、解決まで時間がかかる場合もある点に注意しなければなりません。
一方直接のデメリットではありませんが、弁護士に相談したからといって必ず望み通りの結果になるとは限らないことも、認識しておく必要があります。
1-4 共有物分割請求の3つの段階「協議」「調停」「訴訟」
共有物分割請求には、「協議」「調停」「訴訟」の3つの段階があります。他の共有者との協議から始まり、協議で解決できないときは調停または訴訟で解決を図るといった段階を踏まなければなりません。
協議は口頭や書面で話し合って解決を図ること、調停は良識を持つ一般市民である調停委員と一緒に解決を図る手続き、訴訟は裁判官の判断によって解決する手続きです。
ただし協議または調停を経ず、いきなり訴訟で共有物分割請求の訴えを提起することはできません。(民法258条1項)
弁護士に依頼すると費用がかかる点がデメリットだと紹介しましたが、協議や調停の段階で解決できれば、弁護士費用は訴訟に進んだ場合と比べて3分の2程度に抑えられます。
なお、仮に共有物分割請求訴訟に至った場合でも、判決ではなく和解によって解決に至るケースも少なくありません。
1-5 弁護士を選ぶ最大のポイントは「相続と不動産に長けているか?」
共有不動産のトラブルについて弁護士を選ぶ際、最大のポイントは「相続と不動産に長けているか」です。
前提として、弁護士によって「離婚問題に強い」「労働問題に強い」「不動産に強い」など得意分野があります。
特に共有状態は、相続によって発生する場合が多いため「相続と不動産に長けている弁護士」を選ぶのが望ましいでしょう。
もっとも、共有状態は相続だけでなく夫婦がペアローンを組んで取得した場合でも発生するため、状況によっては相続不動産に強い点だけが弁護士選びのポイントになるとは限りません。
したがって、共有不動産の状況に合わせて同様の事案を扱った経験がある弁護士を選ぶことも当然のポイントです。
2.共有不動産に強い弁護士への依頼費用
共有不動産に強い弁護士への依頼方法は、弁護士に電話やメールなどを通じて相談を予約し法律相談を受けたあと、依頼する内容や費用を内容とする委任契約を締結して行います。
弁護士費用は、大まかに相談料・着手金・報酬金の3つがあります。
いずれも具体的な金額は弁護士や締結する委任契約の内容によって異なりますが、それぞれどのような費用なのかを、以下の図で確認しておきましょう。

(図4_相談料、着手金、報奨金の違い)
2-1 相談料
相談料とは、弁護士に法律相談を受けるときに発生する費用のことです。相談料の相場は、30分5,000円または1万円程度に設定されています。
もっとも、初回の相談料は30分または1時間まで無料としている弁護士も少なくありません。
相談料は基本的に30分ごとなど時間制で設定される場合が多いです。
相談料を抑えるため、可能な限り不動産の登記事項証明書や査定結果、協議書面を準備するほか、相談したい内容を明らかにしておくとよいでしょう。
登記事項証明書は、自宅からインターネットを通じて法務局に対して交付請求ができます。費用は郵送受取の場合は500円、窓口受取の場合は480円です。
2-2 着手金
着手金とは、その名のとおり弁護士に依頼するときに支払う費用です。着手金は、自分の希望通りに解決しなかった場合でも返ってきません。
共有不動産の分割請求の場合、着手金は事案の難易に応じておよそ0~50万円の範囲で定額設定されているか、金銭請求をともなう場合や訴訟の場合は経済的利益に20~30%程度の割合を乗じた額などとされています。
経済的利益とは、交渉や調停、訴訟等によって、最終的に獲得または減額した権利利益の合計金額ですが、具体的な算定方法は、事案や個別の契約によります。
一方で、着手金を無料としている弁護士事務所(法人)もありますが、次のような場合は有料になる可能性があるため注意が必要です。
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共有者が多い場合
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不動産の売却が難しい場合
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賃料相当損害金の請求がある場合
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協議や調停だけでなく訴訟に至る場合
着手金は弁護士との法律相談、あるいは委任契約の締結前によく確認しておきましょう。
2-3 報酬金
報酬金とは、事件が成功した場合に、成功の度合いに応じて事件終了時に支払う弁護士費用です。
弁護士との委任契約の内容によりますが、着手金と異なり、自分の希望通りに解決しなかった全面敗訴の場合には報酬金を支払う必要はありません。
報酬金は、経済的利益に弁護士側が設定する割合を乗じた金額と設定されています。
共有不動産の分割請求の場合、経済的利益を不動産の時価の3分の1として報酬金を算出する方法と、経済的利益を不動産の時価として、乗じる割合をおおむね5~10%として報酬金を算出する方法の2種類があります。
当然、経済的利益を不動産の時価の3分の1として報酬金を算出する方法のほうが報酬金を低く抑えられますが、この方法は、分割の内容について特に争いのない場合に採用されることがある方法です。
経済的利益に乗じる割合については、ケースに応じておおむね次のようになっています。
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相手または第三者に売却する場合:売却額の5~10%
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相手から取得(買取)した場合:取得額の5%前後
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現物分割の場合:取得額の5~10%
一般的な住宅の場合、報酬金の目安は50~100万円程度です。
報酬金についても、具体的な算定方法は事案や個別の契約によるため、法律相談または契約締結時によく確認しておきましょう。
3.共有物分割請求以外の共有不動産の解消方法
共有物分割請求以外にも、不動産の共有状態を解消する方法があります。
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共有持分を放棄する
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共有持分を売却(譲渡)する
どのような方法なのか、それぞれ解説します。
3-1 共有持分を放棄する
不動産の共有状態を解消する方法として、自分の共有持分を放棄する方法があります。
共有持分の放棄は、持分があるだけで固定資産税の負担だけがかかっているなど、いわゆる「負動産」と呼ばれる不動産に効果的な方法です。
共有持分を放棄するには、通常、口頭で自分の共有持分を放棄する旨の意思表示を行ったうえで、内容証明郵便などによって通知書を他の共有者に送付します。
通知を送付したら、他の共有者と一緒に共有持分の移転登記を申請しましょう。移転登記申請が行われなければ、共有持分を放棄したとしても固定資産税の負担からは免れないことには注意が必要です。
3-2 共有持分を売却(譲渡)する
不動産の共有状態を解消する方法として、自分の共有持分を売却(譲渡)する方法があります。不動産全体の売却は自分1人だけではできませんが、自分の共有持分だけは自分1人で売却可能です。
共有持分の売却は他の共有者と協議が進まないときに有効な選択肢ですが、不動産全体を売却するときよりも売却価格が下がることに注意しなければなりません。
また、共有持分だけでは共有不動産の自由な利用に制限がかかることから、共有持分の売却は買手がつきにくく容易ではない点にも注意が必要です。
そのため、共有持分の買い取りに対応する業者に依頼して売却することが一般的となっています。
共有持分を買取業者に売却すると、短期間で共有状態から離脱できることがメリットです。
ただし、共有持分の売却は、売却価格が通常よりも下がるだけでなく、業者によってはトラブルが発生しやすい点に注意しなければなりません。
共有持分の売却を検討する場合は、取り扱いの実績が豊富であるかどうか、担当者が信頼できるかどうかなどに気をつけておきましょう。
まとめ
共有不動産の共有状態を解消するためには、共有不動産に強い弁護士を探すことが重要です。不動産に強いことはもちろん、相続問題にも明るい弁護士を探すことをおすすめします。
弁護士に依頼すると、より迅速かつ有利な価格で共有状態を解消できるなど、自分にとって有利な解決に進みやすくなることを期待できます。一方で、相談料や着手金、報酬金といった弁護士費用の負担がある点には注意しなければなりません。
共有状態の解消方法には、持分放棄や持分売却(譲渡)などの方法もあります。自分がどのような解決を望むかある程度整理しておき、不動産会社や弁護士などに相談しましょう。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。