共有持分をトラブルなく高額売却するためのコツ

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共有持分をトラブルなく高額売却するためのコツ

共有持分は、他の共有者の同意なく、売却することが可能です。

共有持分の性質上、売却相場は低くなりがちですが、高額売却するためのコツを知っていれば、相場よりも高い金額で売却できる可能性があります。

本記事では、共有持分の基礎知識をふまえて、共有持分を高額売却する方法や売却時の注意点について、解説します。

1.共有持分とは

共有持分とは、複数人で不動産を所有しているとき、それぞれの人がその不動産について持っている所有権の割合のことです。

1-1 共有持分が発生するきっかけ

共有持分が発生するきっかけは、相続と夫婦での不動産購入です。

両親が亡くなり、兄弟間で共同相続した場合です。その場合、特に当事者間で決まりがなければ、法定相続分の割合で、持分割合が決まります。実は、この相続による共有状態の発生がかなり多くを占めています。誰もが相続により、持分を有する可能性があるのです。

夫婦でペアローンを組んで、家やマンションを購入した場合、その名義は出資割合に準じて持分比率が定められ夫婦で共同所有という形になります。

1-2 共有持分の売却を検討する理由

共有持分の売却を検討する理由は、9割が共有者間での意見の違いです。

共有不動産の活用や処分をめぐり、共有者間で意見が分かれた場合に、自己持分を売却し、共有関係を解消することでトラブルの解決を試みる方が多いです。

2.共有持分がトラブルになりやすい理由

一般的に、共有持分はトラブルになりやすいと言われています。

その理由は、主に次のようなものが挙げられます。

  • 不動産の活用には共有者の同意が必要
  • 税金や管理費を負担しない共有者がいる
  • 共有者が増えすぎて権利関係が複雑になる

2-1 不動産の活用には共有者の同意が必要

共有名義不動産は、単独所有の不動産のように自由に扱うことができません。

各共有者の同意が必要となる行為は、法律で次のように決められています。

行為具体例行為の制限
保存行為①共有物の修理
②不法占拠者への明渡請求
各共有者が
一人で対応可能
管理行為共有物を貸すこと共有者の持分価格の
過半数で決定
変更行為(軽微なもの)①外壁や屋根の修繕
②砂利道のアスファルト塗装
③植樹伐採
共有者の持分価格の
過半数で決定
変更行為(軽微以外)①共有物の売却
②別荘の増改築
共有者の全員の同意が必要

これまでは「保存行為」「管理行為」「変更行為」の3つの行為に分けられており、リフォームは変更行為として共有者全員の同意が必要でした。

しかし2024年の法改正で上記のように軽微な変更行為が追加され、リフォームなどは共有者の持分価格の過半数で決定できるようになりました

2-2 税金や管理費を負担しない共有者がいる

共有名義不動産の税金(固定資産税)や管理費は、共有者の持分割合に応じて全員で負担するよう民法に定められています。(民法第253条第1項)

しかし税金や管理費を払わない共有者がいて、トラブルになるケースもあります。

共有名義不動産の固定資産税は連帯納付のため、税金を払わない共有者がいれば、他の共有者が肩代わりして払わなければいけないのです。(地方税法第10条の2第1項)

また、共有名義不動産の納付書は原則、代表者宛に届きます。

代表者が納付していると思っていたが納付していなかったというトラブルや、誰も払わないので代表者のみが負担し続けているといったトラブルも起こっています。

2-3 共有者が増えすぎて権利関係が複雑になる

共有名義不動産は、共有者に相続が発生すると、芋づる式に共有者が増えていく性質があります。

また、各共有者が持分の売買をおこない、気づけば面識のない人と共有状態になっていることも珍しくありません。

先述した通り、共有名義の不動産の活用には、共有者の同意が必要になる場面が多々あります。

共有者の連絡先すら分からないなどの問題が起き、手続きがスムーズに進ま

3.共有名義不動産を売却する方法

共有名義不動産を売却する方法は次のように3つあります。

  • 不動産全体を売却する
  • 共有者間で持分を売買する
  • 第三者に持分を売却する

それぞれの方法を詳しく解説していきます。

3-1 不動産全体を売却する

共有名義不動産全体を売却する方法が、最も高額売却できる方法です。

ただし、不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要です。(民法第251条)

最も理想的な方法ですが、一人でも同意を得られない共有者がいれば売却できないため、共有者の人数が多いほど難しい売却方法でもあります。

3-2 共有者間で持分を売買する

共有者間で持分を売買することも可能です。

売る人と買う人が合意すれば、他の共有者の同意は必要ありません。

但し、買う側の資金力が問われるため、売買金額をめぐって折り合いが付かないケースが多いのが現状です。

3-3 第三者に持分を売却する

自己の持分のみを第三者に売却することも可能です。

共有名義不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要ですが、自己持分のみの売却であれば他の共有者の同意は必要ありません。(民法206条)

いつでも、単独の意思で売却できます。

4.共有持分の売却にかかる費用

共有持分の売却には、一定の費用がかかります。

高い金額で売買契約が成立しても、売却に伴う費用が高額になるのは勿体ないです。売却にかかる費用は、依頼する不動産会社によって大きく変動しますので、あらかじめ確認しておくことが大切です。

ここでは、一般的に共有持分の売却に必要となる費用を解説します。

4-1 仲介手数料

仲介手数料は、不動産業者への報酬として支払う手数料です。

売買価格に応じて上限が設けられています。

売買金額上限額
400万円超え売買金額(税抜)×3%+6万円+消費税
200万~400万以下売買金額(税抜)×4%+2万円+消費税
~200万円以下売買金額(税抜)×5%+消費税

仮に1,000万円(税抜)で不動産を売却した場合、仲介手数料は39万6,000円となります。

売買金額によっては、仲介手数料も高額になりますので、共有持分の売却時は、仲介手数料が無料の業者を選びましょう。

4-2 印紙税

印紙税は、不動産売買契約書等の課税文書に課せられる税金です。

課税額は、売却金額によって変動します。

また、租税特別措置法により、令和6年3月31日までは、不動産の譲渡に関する契約書について、印紙税の軽減措置が講じられ、税率が引き下げられています。

国税庁:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

4-3 抵当権抹消登記費用

住宅ローンの完済後は、「抵当権抹消登記」の手続きをおこなう必要があります。

住宅ローンが完済されると自動的に抹消される訳ではないので注意が必要です。

もし、売却時にローンは完済しているものの、抵当権の登記が残っている場合は、抹消の手続きが必要となります。

抵当権抹消登記にかかる費用は、3,000円~5,000円が相場と言われています。

4-4 弁護士相談費用

共有持分の売却では、何かしら共有者とトラブルになっているケースがほとんどです。

費用の内訳は、相談料と着手金と報酬料に分けられます。

相談から共有物分割請求訴訟まで依頼する場合は、少なくとも100万円以上かかるでしょう。

関連記事:共有不動産に強い弁護士はどうやって探せばよいの?

5.共有持分を高く売却する5つのポイント

共有持分は、権利関係の複雑さや自由に活用できない制限があることから、買い手が見つかりにくく売却価格が低くなりがちです。

それでも、できるだけ高く売ることを望むでしょう。

共有持分を高く売却するポイントは次の5つです。

  • 共有持分専門の不動産会社に依頼する
  • 買取業者ではなく仲介業者を選ぶ
  • 不動産鑑定士に査定を依頼する
  • 弁護士のサポートを受ける
  • 売却にかかる費用を抑える

5-1 共有持分専門の不動産会社に依頼する

共有持分の売買取引には、不動産や法律などの専門的な知識が必要です。

特殊なジャンルであることから、街中の不動産屋さんでは断られるケースも少なくありません。

共有持分に関する知識とノウハウが豊富な、共有持分専門の不動産会社に依頼しましょう。

5-2 買取業者ではなく仲介業者を選ぶ

不動産会社には、買取業者と仲介業者があります。

同じ不動産会社ですが、両者にはビジネスモデルの違いがあります。

買取業者は自社で買い取った不動産を高く転売してその差額で利益を得ます。

一方、仲介業者は仲介手数料で利益を得ます。

仲介手数料は売買価格によって決まるため、仲介業者は利益が多く出るよう高く買ってくれる買主を探します。

このような違いがあるため、共有持分を高く売るためには仲介業者を選んだほうが良いでしょう。

5-3 不動産鑑定士に査定を依頼する

共有持分の査定には、不動産の利用状況だけでなく共有者の人数、共有者とのトラブルの有無が影響するため、高い査定スキルが必要です。

営業マンの感覚値だけで査定額を提示する業者もあるため、共有持分の査定は、不動産鑑定士に依頼しましょう。

不動産鑑定士は不動産価格鑑定の国家資格者であり、査定額の算出根拠となる調査報告書を作成してくれます。

調査報告書があることで、購入希望者も不動産価値を把握しやすくなり、結果、買い手が見つかりやすくなるという大きなメリットがあります。

5-4 弁護士のサポートを受ける

共有者との権利調整や交渉などは、法律問題に精通した弁護士の見解をもとに進めることで円滑に進みます。

共有持分を専門に扱う不動産会社では、ほとんどが弁護士と提携しています。

提携しているだけではなく、初回の相談時から弁護士の同席があり、トラブルの詳細や共有者との関係性等、個々の状況を相談できる業者だとなお安心です。

5-5 売却にかかる費用を抑える

先述した通り、共有持分の売却には費用がかかります。

せっかく売買価格が高額でも、売却にかかる費用が高いと手元に残る金額は減ってしまいます。

仲介手数料や弁護士費用、書類作成代行費用が無料または安い業者を選びましょう。

6.共有持分売却のリスク

共有持分は単独の意思で売却できますが、次のようなリスクがあります。

  • 他の共有者との関係性が悪化する
  • 持分を購入した第三者と他の共有者がトラブルになる
  • 共有物分割請求訴訟に発展する可能性がある

リスクもあらかじめ把握しておきましょう。

6-1 他の共有者との関係性が悪化する

他の共有者に黙って持分を売ったことで、他の共有者から嫌がらせを受けることは珍しくありません。

黙って売却したとしても、いずれは売却したことが知られてしまうからです。

共有持分の購入者によっては、他の共有者の持分まで買取ろうと無理な交渉をおこない、共有者の怒りの矛先が共有持分を売却した本人に向くこともあります。

6-2 持分を購入した第三者と他の共有者がトラブルになる

共有持分を売却すると、持分の購入者である第三者と他の共有者での共有が始まります。

見ず知らずの人が共有者になったことで、共有不動産の活用を巡って対立したり、持分の売却を迫られたりするケースは少なくありません。

購入した第三者にも共有不動産を利用する権利があるため、共有者のひとりが共有不動産に居住しているケースでは、持分に応じた家賃相当額を新しい共有者から請求され、トラブルに発展することもあります。

6-3 共有物分割請求訴訟に発展する可能性がある

共有不動産の活用を巡ってトラブルが続くと、共有物分割請求訴訟に発展する可能性があります。

共有物分割請求訴訟とは、共有物分割の分割方法を裁判所に委ね、共有状態を解消するための訴訟です。

他の共有者が訴訟を提起する可能性もあれば、購入した第三者が訴訟を提起する可能性もあります。

共有物分割請求訴訟を提起すると、必ず共有状態は解消されます。

しかしどのように分割するかは、裁判所が判断するため、必ずしも思い通りの結果にならない点は留意しておきましょう。

7.共有持分の売却で起こるトラブル事例と解決方法

自分の持分のみであれば、他の共有者の同意なく売却できます。(民法206条)

しかし、同意を得ず売却した場合、売却後に共有者とトラブルになるケースもあります。

自分の持分のみを売った際に起こるよくあるトラブルと解決方法を紹介します。

7-1 自分の持分を売却した時に起こるトラブル事例

自分の持分を他の共有者の同意を得ずに売ることは、民法上の問題はありません。

しかし、以下のようなトラブルが考えられるので注意が必要です。

  • 他の共有者との関係性が悪化する
  • 購入者と他の共有者との間でトラブルに発展する
  • 共有持分の売却価格が安い

同意を得る必要はありませんが、売ったことが全くバレないというわけではありません。登記簿に共有不動産を売ったことが明記されるため、黙って売ったことが発覚して他の共有者の反感を買う可能性があります。

また、自分の持分のみを売却した場合、第三者が共有者の中に加わることで不動産に対する意思決定が困難になる、購入後の第三者が他の共有者に対して持分を売り渡すように迫るといったトラブルに発展するケースも多いです。

7-2 自分の持分を売却してトラブルを防ぐ解決方法

上記のようなトラブルの解決方法として、以下の3つが挙げられます。

  • 他の共有者に事前に相談しておく
  • 共有持分専門の業者に持分を売却する
  • 売却後のトラブルにも対処してもらえる業者を選ぶ

他の共有者に事前に相談してから売れば、「勝手に売った!」と非難されることはないでしょう。

また、共有持分を専門に取り扱う不動産会社であれば、共有者への交渉スキルや権利調整に長けているため、購入後のトラブルリスクを軽減することができます。

また、「売却して終わり」ではなく、売却後もトラブルが起きた際には、弁護士のフォローを受けられる不動産会社を選ぶことも重要なポイントです。

共有持分のよくある質問

共有持分を高く売るにはどうしたらいいですか?

共有持分を高く売るには、共有持分専門の不動産業者に依頼することが大切です。
不動産会社の中でも、買取業者ではなく、仲介業者へ依頼する方が、高値で売却できる可能性が高いです。
また、不動産鑑定士の鑑定書付きがあれば、買い手が見つかりやすく高額売却ができます。

自分の持分のみを売却することは可能でしょうか?

自己持分は、共有者の同意なく売却可能です。(民法206条)
共有名義不動産全体の売却が難しい場合、自己持分のみの売却を検討するとよいでしょう。

共有者とのトラブルを解決する方法はありますか?

結論から申し上げますと、共有状態を解消することです。
共有状態を解消する方法として、自己持分を売却する、または共有物分割請求訴訟によって、不動産を分割する方法があります。
どのような方法が最適かわからない方は、当社へご相談ください。

共有持分はいくらで売れますか?

共有持分の売却価格は、不動産全体の売却と比べると低くなります。
また他の共有者が住んでいるなど、利用状況や立地条件によっても大きく変動します。
少しでも高値で売却したい場合は、当社の不動産鑑定士による無料査定サービスをご利用ください。

共有持分を売却した後、他の共有者はどうなりますか?

持分の売却後は、持分の購入者と他の共有者が、共有状態になります。
購入者によっては、他の共有者に持分の売買に関する交渉を持ちかけることがあります。無理な交渉は、共有者間でのトラブルに発展します。
売却後のトラブルを防ぐためにも、売却先は慎重に選ぶことが大切です。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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