共有名義不動産の相続税で困らない! 計算方法からトラブル対策まで徹底解説

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共有名義不動産の相続税で困らない! 計算方法からトラブル対策まで徹底解説

共有名義不動産の相続税で困らない! 計算方法からトラブル対策まで徹底解説

共有名義不動産を相続すると、気になるのが相続税についてです。
しかし、相続を初めて経験する人にとって、税金の計算や納付は分からないことだらけではないでしょうか。

「どうやって計算したらよいのか……」
「自分も申告や納付が必要なのか」
「使える控除や特例はないのだろうか」

このように疑問がたくさん出てくるかもしれません。

本記事では、共有名義の不動産を相続した方向けに、相続税の計算方法や申告方法を分かりやすく解説します。

さらに、相続税の負担を軽減できる控除・特例や、共有名義不動産ならではの注意点、トラブル対策についてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

不動産の相続時に共有名義は危険? よくあるトラブルと注意点

共有名義の不動産に課される相続税を考えるうえで、ご自身の持分割合を正しく把握することが最初のポイントです。

共有名義不動産を相続するパターンは、次のように大きく2つあります。

  1. 被相続人(亡くなった方)と相続人がもともと不動産を共有していた場合
  2. 被相続人名義の不動産を、複数の相続人が相続した結果、共有状態になる場合

それぞれのパターンを解説していきます。

パターン①:被相続人と相続人が共有状態の場合

不動産を購入する際に、親子などで共有名義にすることがあります。
このケースの場合、親が死亡すると親の共有持分のみが相続財産になります

課税対象額は、不動産全体の相続税評価額に被相続人の持ち分を乗じて計算した金額です。

つまり、親子共有名義の場合は親の持分に相続税が発生します。

もし相続人が複数いると、親の共有持分を誰が相続するかを他の相続人との間で調整しなければいけません。
共有名義人が自動的に相続できるわけではないからです。

一方で、仮に親1人、子1人だった場合、子は親の持分を相続するため単独所有となり共有状態は解消されます。

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パターン②:複数の相続人で共有状態の場合

共有名義の相続で最も多いパターンが、複数の相続人で共有状態となるケースです。
例えば実家を兄弟で相続するケースなどがこれに当たります。

本記事では、主にこのケースをもとに相続税の計算方法を解説していきます。

公平に相続する方法として共有状態を選択する方が多いですが、共有名義での不動産所有は将来的なトラブルを避けるため、一般的に推奨されません

共有名義不動産は売却や建て替えなどをする際に、共有者全員の同意が必要となり、どのように活用するかで意見が合わずにトラブルになることが多いからです。

共有状態の解消は、相続後に共有者間で持分を売買したり、第三者に売却したりすることで可能です。

相続時に「とりあえず共有名義」にすることは、将来トラブルの火種になりかねないため、長期的な視点では共有状態の解消も検討したほうがよいでしょう。

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共有名義不動産の相続税はいくら?計算方法を3ステップで解説

相続税は相続財産を受け取った方が負担するため、相続が発生すると相続税の計算方法が気になるものです。

相続税は次の3つのステップで計算します。

  1. 課税対象となる遺産総額を調べる
  2. 法定相続分で各相続人の税金を計算し合計する
  3. 実際の相続割合をもとに最終的な相続税額を算出する

Step1. 課税対象となる遺産総額を調べる

はじめに課税対象となる遺産総額を調べます。

相続税の対象となる財産は、現金や預貯金、不動産や有価証券といったプラス財産だけでなく、借入金や未払いの税金といったマイナス財産など、経済的価値のあるすべてのものです。

さらに、財産は次のように3つに区別されます。

  • 課税財産
    相続税が課税される財産。金銭に見積もれる経済的価値のあるものすべてが含まれるため、マイナス財産も含む。

  • 非課税財産
    相続税が課税されない財産。
    墓地や仏具、神祭道具など。
    ただし、骨董的価値がある場合や投資対象の場合は課税対象となる。

  • みなし財産
    被相続人が存命の間は財産にならず、死亡がきっかけで受け取れる財産。
    生命保険金や死亡退職金など。
    みなし財産には非課税枠があり、それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」までは課税されません。

相続する財産の価値は、相続人が財産を取得したときの時価で評価しますが、財産の種類によって評価額の算出方法は異なります。

代表的な財産の評価方法は以下の通りです。

財産の種類評価方法
現金現金の額面金額
預貯金元本と既経過利息の手取り額合計
宅地路線価方式または倍率方式
家屋固定資産税評価額×1.0
上場株式以下の4つのうち最も低い価格▼
・相続発生日の最終価格
・相続発生月の最終価格の平均額
・相続発生月の前月の最終価格の平均額
・相続発生月の前々月の最終価格の平均額
自動車再取得価格-既経過年数に応じた減価償却の額
借金などの負債必要返済総額

相続した財産すべてに税金がかかるわけではありません。

相続税は、相続財産の合計額から一定の控除額を差し引いた、残りの金額に対して課税されます。
この控除の中で、相続人全員が利用できるのが「基礎控除」です。

基礎控除額は、以下の計算式で求められます。

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) = 基礎控除額

例えば、法定相続人が4人の場合、基礎控除額は3,000万円 + (600万円 × 4人) = 5,400万円です。

もし相続財産の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も原則不要です。

仮に相続する財産が1億円であれば、1億円 - 5,400万円 = 4,600万円が相続税の課税対象となる遺産総額(課税遺産総額)となります。

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Step2. 法定相続分で各相続人の税金を計算し合計する

続いて、Step1で算出した課税遺産総額を、法定相続分で仮に分割し、各相続人の税金を計算して一旦合算します。

法定相続分とは、法律で定められた各相続人がもらえる財産の割合のことです。

誰が相続するかによって、以下のように割合が決まっています。

配偶者直系尊属
(親など)
兄弟姉妹
配偶者と子1/21/2
(子全員で)
配偶者と直系尊属2/31/3
(全員で)
配偶者と兄弟姉妹3/41/4
(全員で)

例えば相続人が配偶者と子3人、課税対象となる遺産総額が4,600万円だったとすると、法定相続分は以下のようになります。

  • 配偶者:4,600万円 × 1/2 = 2,300万円
  • 子ども:4,600万円 × 1/2 = 2,300万円(3人で分けるので1人あたり約766万円)

各相続人に課せられる税金は、以下の税率表をもとに計算します。

法定相続分に応じた取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

上記の例で計算すると、

  • 【配偶者】2,300万円 × 15% – 50万円 = 295万円
  • 【子ども(一人あたり)】約766万円 × 10% = 約76.6万円

各相続人に課せられる税金が分かったら、最後にそれぞれの相続税額を合算します。

  • 295万円 + 76.6万円 × 3人 = 524.8万円

この家族の相続税の総額は、524.8万円となります。

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Step3. 実際の相続割合をもとに最終的な相続税額を算出する

最後に、Step2で計算した相続税の総額を、相続人それぞれの実際の相続割合に基づいて按分し、最終的な相続税額を算出します。

先ほどの例で、相続税の総額が524.8万円で、遺産分割協議の結果、配偶者が1/2、長男が1/4、長女が1/4を相続したとしましょう。

この場合、各人が納税する金額は以下のようになります。

  • 配偶者:524.8万円 × 1/2 = 262.4万円
  • 長男:524.8万円 × 1/4 = 131.2万円
  • 長女:524.8万円 × 1/4 = 131.2万円

ここから、各相続人の状況に応じて、さまざまな控除や特例を適用して最終的な納税額が決まります。

例えば、配偶者には「配偶者の税額軽減」という強力な特例が適用されるため、このケースでは配偶者の相続税負担は0円になります。

結果として、長男と長女がそれぞれ131.2万円を納税することになります。

このように、共有名義不動産の相続税計算では、まず全体の税額を算出し、それを実際の取得割合で按分することが重要です。

ご自身の状況に合わせた正確な税額を知りたい場合は、専門家へご相談ください。

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相続税の負担を軽減する方法:知っておきたい控除と特例

特定の要件を満たせば、相続税の負担を軽減できる控除や特例があります。
ここでは代表的なものを紹介します。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除(配偶者の税額軽減)
  • 小規模宅地等の特例
  • その他の控除・特例(贈与税額控除・未成年者控除・障害者控除・相次相続控除・外国税額控除・地積規模の大きな宅地の評価)

基礎控除

基礎控除は、先述の通り、財産総額から必ず引かれる控除です。

法定相続人の人数で基礎控除額が変わります。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=控除額

最低3,600万円(法定相続人1人の場合)の基礎控除が適用され、法定相続人の人数が増えるほど控除額が増します。

配偶者控除(配偶者の税額軽減)

配偶者控除は、被相続人の配偶者に適用される控除です。

配偶者の法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい額までであれば、相続税はかかりません。

非常に強力な制度ですが、この特例の適用を受けるためには、たとえ納税額が0円でも相続税の申告が必要です。

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小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人等が住んでいた宅地(特定居住用宅地等)や、事業をしていた宅地(特定事業用宅地等)などについて、一定の要件を満たす場合に、評価額を大幅に減額できる特例です。

特定居住用宅地等であれば、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。

この特例は相続税の節税効果が非常に高いため、適用できるかどうかの確認は必須です。

ただし、適用要件が複雑であり、同居親族の有無や、相続後の不動産の利用状況など、細かな規定がありますので、適用を検討する場合は必ず専門家へ相談しましょう

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その他の控除・特例

上記以外にも、状況に応じて以下のような控除が利用できます。

  • 贈与税額控除
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除
  • 地積規模の大きな宅地の評価

贈与税額控除

贈与税額控除とは、贈与税と相続税の二重課税を防ぐための制度です。

相続開始前3年以内(2024年1月1日以降の贈与からは7年以内に段階的に延長)に被相続人から贈与を受けて贈与税を納めている場合は、相続税の計算時にすでに納税した贈与税額を差し引けます。

未成年者控除

未成年者控除は、相続人が未成年者である場合に適用される控除です。
成年に達するまでの年数に10万円を乗じた金額を、課税総額から控除できます。

10万円×(18歳-相続開始時の年齢)=控除額

※令和4年3月31日以前の相続または遺贈については、18歳の部分が20歳となります。

障害者控除

障害者控除は、85歳未満で障害を持っている方に適用される控除です。

障害の重さによって一般障害者と特別障害者に分けられ、以下の金額に相続人が85歳になるまでの年数をかけて控除額を算出します。

  • 一般障害者:10万円
  • 特別障害者:20万円
10万円または20万円×(85歳-相続開始時の年齢)=控除額

相次相続控除

相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)は、最初の相続が発生してから10年以内に次の相続が発生した場合に適用される控除です。
課税総額から一定金額を控除できます。

最初の相続から次の相続までの期間が短いほど控除額が大きくなります。

外国税額控除

外国税額控除は、相続財産の中に海外の資産があり、その国で日本の相続税にあたる税金を納めた場合に適用される控除です。

国際的な二重課税を調整する目的があります。

地積規模の大きな宅地の評価

これは控除・特例とは少し異なりますが、一定規模以上の広い土地を評価する際に適用される評価減の規定です。

具体的には、三大都市圏では500平方メートル以上、それ以外の地域では1,000平方メートル以上の宅地で、路線価地域に所在するなどの要件を満たす場合に適用されます。

広大な土地を相続する場合には、この評価減が適用できるか確認することで、相続税を軽減できる可能性があります。

相続税の申告と納付方法:期限と注意点

ここでは、相続税の申告と納付方法を解説します。

相続税の申告や納税には期限があり、期限を過ぎるとペナルティが課される可能性もあります。

相続税の申告と納付の手順

相続税の申告と納付は、原則として相続人自身が行う必要があります。

もしも、財産の総額が基礎控除額以下となった場合には相続税の申告は不要です。

しかし、先述の配偶者控除や小規模宅地等の特例を適用して相続税がゼロとなった場合には申告が必要です。

相続税の申告は、基本的に相続財産を受け取った人全員が共同で、または個別に行います。
代表者がまとめて申告することはできません。

相続税の納付の手順は以下の通りです。

  1. 申告書を作成し、期限内に税務署へ提出する
  2. 納付書を入手して必要事項を記入する
  3. 相続税を期限内に支払う

申告と納付の期限は、どちらも被相続人が死亡したことを知った日(相続開始の日)の翌日から10ヶ月以内です。

例えば、5月1日が相続開始の日であれば、翌年3月1日が申告・納付期限です。

申告書の提出先は、被相続人の最後の住所地を所轄する税務署です。
相続人の住所地ではないので注意しましょう。

納付書は税務署や金融機関で入手でき、納税者1人につき1枚の納付書が必要です。

相続税の納付方法は以下の通りです。

納付方法持ち物手数料納付限度額領収書の発行
税務署窓口・納付書
・納付する現金
なし上限なしあり
金融機関窓口・納付書
・納付する現金
なし上限なしあり
クレジット決済クレジットカード
(国税クレジットお支払いサイト内で手続きが必要)
納付税額により異なるクレジットカードの決済可能額以下で1,000万円未満。
1,000万円以上でも決済可能額以下なら複数回納付可能
なし
コンビニエンスストア・バーコード付き納付書
・納付する現金
なし30万円以下なし

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相続税の納付が遅れた場合のペナルティ

繰り返しになりますが、相続税の申告と納付は相続開始から10ヶ月以内に完了させなければいけません。 

相続税の納付が遅れた場合は、本来の税額に加えて無申告加算税や延滞税が加算されます。

  • 無申告加算税:正当な理由なく期限までに申告しなかった場合に課税されます。 税率は最大20%です。
  • 延滞税:期限を過ぎてから相続税を納付した場合に、納付期限の翌日から納付した日までの日数に応じて、利息に相当する金額が課税されます。

期限までに申告も納税も行っていない場合は、無申告加算税および延滞税の両方が課されます。

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相続税を支払わない共有者がいる場合はどうする?

本来、財産を相続した割合に応じて相続税を負担しますが、共有名義不動産の場合は、他の共有者の相続税についても「連帯納付義務」があります

そのため、相続税を支払わない共有者がいれば、他の共有者がその人の分まで支払う責任を負うのです。

相続税が未納付のままだと、連帯納付義務を負った他の共有者の財産も差し押さえられる可能性もあるため、注意しなければいけません。

もし共有者間での支払いでトラブルになっている場合は、早急に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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相続税が払えない場合、「共有不動産の売却」も有効な解決策

相続税は原則として現金一括で納付しなければいけませんが、それが困難な場合もあるかもしれません。

相続税が払えない場合には、次のような対処法があります。

  • 【延納】
    相続税額が10万円を超え、現金一括での納付が困難な事情がある場合は、一定の要件を満たすと分割払いでの納付(延納)が可能です。
    ただし、原則として担保が必要であり、共有名義不動産を担保にする場合は他の共有者全員の承諾が必要です。

  • 【物納】
    延納での納付もできない場合は、共有名義不動産そのものを相続税として納めること(物納)もできます。
    ただし、物納の要件は非常に厳しく、共有者全員が各自の持分を物納する場合のみ可能など、ハードルは高いです。

そこで、より現実的な解決策として、共有不動産を売却して納税資金を確保することも有効な選択肢です。

ただし、共有不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要となるため、あらかじめ他の共有者と話し合い、合意を得ておくことが重要です。

もし他の共有者の同意が得られない場合でも、ご自身の持分のみを売却することは可能です。
共有者全員で協力して売却を進めることで、円満に相続税の納税を完了させることができます。

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まとめ

共有名義不動産の相続は、税金計算だけでなく、将来的な不動産の活用や売却においてもトラブルに発展する可能性があります。

相続税の計算や申告、共有者間のトラブルなど、少しでも不明な点や不安があれば、早めに税理士や不動産の専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。

センチュリー21中央プロパティーは、共有持分を専門に扱う不動産仲介会社です。

共有名義不動産に詳しい社内弁護士が社内に常駐しているため、共有者とトラブルを抱えている場合や売却後のトラブルが不安な方にも、ご安心いただける体制が整備されております。

社内弁護士への相談費用や仲介手数料など、売却にかかる諸費用は0円です。

共有者と不仲で関係を解消したい、不動産を活用できていないなど、共有名義不動産でお悩みの方は、一度当社へご相談ください。

この記事の監修者

山口 義重

税理士

ワールド法律会計事務所 代表
東京税理士会 日本橋支部所属登録番号 117651
ワールド法律会計事務所の代表を務める、相続税のスペシャリスト。特に共有持分の相続案件で多く相談される相続税が得意分野。

生前贈与や親族間の不動産売買など、多岐にわたる相続対策にも豊富な経験と実績を持つ。税務の専門知識と実践的なアドバイスで、複雑な税金問題をサポート。

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