共有持分にかかる税金一覧~知って得する税制メリットもご紹介~|共有持分の基礎知識
共有持分にかかる税金一覧~知って得する税制メリットもご紹介~

不動産には、取得するとき・所有している最中・売却時において、さまざまな税金が課せられます。共有持分であっても発生する税金は変わりありません。しかし、単独の所有とは若干異なるルールも存在します。
そこで本記事では、共有持分の不動産にかかる税金の種類や利用できる控除制度について解説します。これから共有持分の不動産を取得・所有・売却しようとしている人は、ぜひ参考にしてください。

共有持分の税金ルール
共有持分に発生する税金のルールや、税金の種類、利用できる控除制度について解説します。
持分割合に応じて負担
共有持分に関する税金は、民法第253条にて以下のように記されています。
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用元:民法第253条
民法にも定められている通り、原則持分割合に応じて共有者全員が負担しなければなりません。
ただし、共有者の一人が共有不動産に住んでいる場合、ほかの共有者は家賃を徴収しない代わりに固定資産税を支払わないと取り決めしているケースもあります。
参照:民法第253条
共有持分にかかる税金一覧
共有持分にかかる税金一覧 | |
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共有持分の所有にかかる税金 | 固定資産税 |
都市計画税 | |
共有持分の取得にかかる税金 (購入・贈与) | 不動産取得税 |
登録免許税 | |
贈与税 | |
共有持分の売却にかかる税金 | 譲渡所得税 |
住民税 |
共有持分にかかる税金の一覧は以下の通りです。
各税金の概要については、以下の表をご参照ください。
固定資産税 | 土地・家屋などに課せられる税金 |
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都市計画税 | 購入・贈与・建築によって土地・家屋などの不動産を取得した際に課せられる税金 |
登録免許税 | 不動産を取得し、登記する際に課せられる税金 |
贈与税 | 個人から財産を贈与してもらった際に課せられる税金(法人からの場合は所得税) |
譲渡所得税 | 土地・家屋などを譲渡した際に発生する所得に対して課せられる税金 |
住民税 | その地域に住む人に課せられる地方税 |
共有持分の不動産における各種税金については『共有持分の所有でかかる税金』以降で詳しく解説します。
共有持分で利用できる控除一覧
共有持分の不動産にかかる税金には、以下の図にある控除が利用できます。
共有持分で利用できる控除一覧 | |
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共有持分の「所有」で使える控除 | 認定長期優良住宅に関する特例措置 |
中古住宅の個人間売買の消費税 | |
共有持分の「取得」で利用できる控除 | 住宅ローン控除 |
認定住宅等新築特別税額控除 | |
相続時精算課税制度 | |
配偶者控除 | |
共有持分の「売却」で使える控除 | 3,000万円控除 |
居住用不動産の売却時の軽減税率 | |
相続した空き家の売却時の特例 |
各控除制度の概要は、以下の表をご参照ください。
認定長期優良住宅に関する特例措置 | 一定の要件を満たした住宅を取得・新築した際に税金が減税となる特例措置 |
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中古住宅の個人間売買の消費税 | 企業ではなく、個人同士で住宅を売買した際の消費税が非課税になる制度 |
住宅ローン控除 | ローンで住宅を取得した場合、ローンの残高に応じて最長13年間税金が控除される制度 |
認定住宅等新築特別税額控除 | 一定の要件を満たした住宅を取得・新築し、特定の期間内に居住した際に利用できる控除 |
相続時精算課税制度 | 生前贈与にて、一定の要件を満たした場合利用できる控除制度 |
配偶者控除 | 納税者に配偶者がいる場合に利用できる控除 |
3,000万円控除 | 住居を売却した際に発生する譲渡所得から、最大3,000万円控除できる制度 |
居住用不動産の売却時の軽減税率 | 一定の要件に当てはまる不動産を売却した際に適用される軽減税率の特例 |
相続した空き家の売却時の特例 | 一定の要件に当てはまる空き家を売却した際に適用される軽減税率の特例 |
以降の章にて、各控除制度の詳しい内容を解説します。
共有持分の所有でかかる税金
共有持分で不動産を所有する際に発生する税金や、対象の税金に利用できる税制・特例を解説します。
共有持分の所有でかかる税金一覧
共有持分で不動産を所有する際にかかる税金は、以下の2種類です。
- 固定資産税
- 都市計画税
それぞれの税金について解説します。
固定資産税
固定資産税は、市町村が管轄する地方税です。
共有持分の場合は、持分割合に応じた固定資産税を各共有者が支払わなければなりません。
請求書は共有者全員ではなく、代表者1人に郵送されます。代表者が一括で払い、ほかの共有者が代表者に対して持分割合の固定資産税を支払う仕組みです。支払いは年4回で、納期は市町村によって異なります。
共有持分の固定資産税について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
都市計画税
都市計画税とは、開発・整備の対象となっている、もしくは既に商業施設・住宅地となっている地域に発生する税金です。
固定資産税と同じように代表者へ納付書が届き、立て替えて納付したあとにほかの共有者から持分割合分の都市計画税を支払ってもらいます。
なお、固定資産税・都市計画税には「連帯納付義務」があり、共有者のうち誰か一人でも税金を払わなかった場合、ほかの共有者が立て替えて支払わなければなりません。
共有持分の所有で使える税制メリット
共有持分で不動産を所有した際に発生する税金に対して、利用できる税制は以下の2つです。
- 認定長期優良住宅に関する特例措置
- 中古住宅の個人間売買の消費税
それぞれの適用条件や控除額をみていきましょう。
認定長期優良住宅に関する特例措置
認定長期優良住宅に関する特例措置とは、耐震性・耐久性・可変性などに優れ、長期的な居住・維持が可能な住宅に適用される特例措置です。固定資産税をはじめ、所得税・登録免許税・不動産取得税などが軽減できます。
特例措置を利用するためには、以下の要件にあてはまる住宅を所有していなければなりません。
- 平成21年6月4日〜令和6年3月31日までに新築されている
- 認定長期優良住宅である
- (そのほか、床面積などは各市町村で要件の違いあり)
上記の要件を満たした場合、固定資産税が5年間(マンションは7年間)軽減されます。一般住宅の場合は3年までしか軽減されないため、特例を利用すれば通常よりも2年間長く固定資産税を節約できます。
参照:国土交通省「認定長期優良住宅に関する特例措置」
中古住宅の個人間売買の消費税
不動産を個人間で売買した場合、売買に際する消費税は発生しません。消費税は物やサービスに対して課せられる税金であり、個人間のやりとりには適用されないためです。ただし、業者と売買取引を行った場合は、消費税が発生します。

共有持分の取得でかかる税金
共有持分で不動産を取得する際に発生する税金や、対象の税金に利用できる税制・特例を解説します。
共有持分の取得でかかる税金一覧
不動産を共有持分で取得した場合は、以下の税金が発生します。
- 不動産取得税
- 贈与税
各税金の内容や支払い方法について見ていきましょう。
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得または贈与してもらった際に発生する税金です。ただし、不動産が法定相続人に相続された場合は発生しません。
不動産取得税は「不動産の価格(令和6年3月31日までに取得した不動産は、価格が2分の1に軽減)×税率」で算出され、土地・住宅用家屋の場合は3%、住宅用以外の家屋は4%の税率が適用されます。
不動産取得税は、代表者が一括して支払ったのち、ほかの共有者が代表者に持分割合に応じた不動産取得税を支払うのが原則です。
また、不動産を取得した際の登記手続きで「登録免許税」も発生します。登録免許税も連帯納付義務があるため、共有者全員が持分割合に応じて支払います。
参照:東京都主税局「不動産取得税」
贈与税
贈与税とは、贈与により財産を取得した際にかかる税金です。課税方法には「暦年課税」「相続時精算課税」の2種類があり、贈与を受けたものは、どちらかの課税方法を選択して納税します。
また、共有状態の土地を分割した際に持分に応じた価値よりも高かった場合も、贈与税が発生する可能性があります。
共有持分の取得で使える税制メリット
共有持分を取得した際に利用できる税制は、以下の2つです。
- 住宅ローン控除
- 【新築時】認定住宅等新築等特別税額控除
- 【贈与時】相続時精算課税制度
- 【贈与時】配偶者控除
各税制の概要・適用要件・控除額についてみていきましょう。
住宅ローン控除
正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、不動産の取得・新築に際してローンを組んだ場合に利用できる控除制度です。
控除期間は10年〜13年で、年末のローン残高に応じて税金が減税されます。住宅ローン控除の適用要件と控除額については、以下の表をご参照ください。
適用要件 | 新築から6ヶ月以内に居住 床面積が50㎡以上 床面積の2分の1以上が居住用 合計所得が3,000万円以下……など |
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控除額 | 年末時点のローン残高×0.7% |
ただし、0.7%を乗じた額が所得税を上回った場合、控除しきれなかった分は住民税で税額控除します。
例えば、年末時点のローン残高が4,000万円で所得税が25万円だった場合、4,000万円×0.7%は28万円ですので、所得税が控除されるのは所得税額の25万円までです。残りの3万円は住民税から控除されます。
また、夫婦でペアローンを組み、共有持分で不動産を購入した場合は、両者とも控除を利用できます。
【新築時】認定住宅等新築等特別税額控除
新築した不動産が「認定長期優良住宅」または「認定低炭素住宅」などの要件を満たした場合に利用できる制度です。適用要件や控除額は以下の表をご参照ください。
適用要件 | 認定住宅の新築または新築の取得である 取得日から6ヶ月以内に居住している 合計所得が3,000万円以下 床面積が50㎡以上で2分の1以上が居住用となっている 不動産を2つ以上取得している場合は、主として居住用としている 居住年を含む3年間に譲渡所得の税制を受けていない 居住年の翌3年で、一定の資産を譲渡して譲渡所得の税制を受けていない |
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控除額 | 1㎡に定められた金額(45,300円)×床面積 ※上限650万円 |
注意点として、住宅ローン控除と併用できません。どちらの控除制度がより節税になるかを計算して選択しましょう。
参照:国税庁「認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)」
【贈与時】相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、生前贈与をした際に2,500万円までは贈与税が課せられない制度です。制度の対象者と控除額は、以下の表をご参照ください。
対象者 | 贈与者:60歳以上の父母・祖父母 受贈者:18歳以上の直系卑属 |
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控除額 | 2,500万円までは非課税 2,500万円を超えた部分には一律20%の課税 |
2024年(令和5年)に改正が行われ、贈与税の課税価額から基礎控除額110万円が控除されるようになりました。
つまり、贈与額が3,000万円だった場合、基礎控除の110万円を引いた2,890万円から、さらに2,500円を差し引き、残りの390万円に20%の税率が課税されます。
参照:国税庁「相続時精算課税の選択」
【贈与時】配偶者控除
配偶者から不動産を贈与された場合に利用できるのが、配偶者控除です。持分を贈与された場合も該当します。適用条件や控除額は以下の通りです。
適用条件 | 婚姻期間が20年以上婚姻期間が20年以上 居住用の不動産である 贈与された住居に受贈者が居住している |
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控除額 | 基礎控除110万円+最大2,000万円まで控除 |
なお、住居用の建物が借地権の土地にあり、配偶者から金銭の贈与を受けて地主から底地権を購入した場合も「住居用の不動産」とみなされ、配偶者控除が利用できます。
参照:国税庁「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
共有持分の売却でかかる税金
共有持分の不動産を売却する際に発生する税金や、対象の税金に利用できる税制・特例を解説します。
共有持分の売却でかかる税金一覧
共有持分の不動産を売却した際にかかる税金は以下の2つです。
- 譲渡所得税
- 住民税
各税金の概要や支払い方法について解説します。
譲渡所得税
不動産の売却に際して発生する税金です。管轄は国であり、売却した翌年に確定申告をして納付します。所得として計上する金額の計算式は「譲渡収入額-(取得費+譲渡費用)」です。
また、所得税の区分は、不動産の保有期間によって長期・短期に分けられ、それぞれ税率が異なります。保有年数における税率の違いは以下の通りです。
保有年数 | 所得区分 | 税率 |
---|---|---|
5年超 | 長期譲渡所得 | 15% |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 30% |
共有持分すべて・自分の持分のみの譲渡、どちらに対しても課せられる税金です。ただし、購入価格よりも売却価格の方が安かった場合、譲渡所得税は発生しません。
参照:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
住民税
共有持分の不動産を売却した際には、譲渡所得税と合わせて住民税も課せられます。住民税も保有年数によって税率が異なり、長期譲渡所得の場合は5%、短期譲渡所得の場合は9%です。住民税は市町村管轄の地方税ですので、市役所から届く納付書にて納税します。
共有持分の売却で使える税制メリット
共有持分の不動産を売却した際に利用できる税制は以下の3つです。
- 3,000万円控除
- 居住用不動産の売却時の軽減税率
- 相続した空き家の売却時の特例
各税制の概要・適用要件・控除額についてみていきましょう。
3,000万円控除
3,000万円控除とは、居住用の不動産を売却した際に利用できる特例制度で所有期間に関係なく最高3,000万円まで控除できます。
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれており、制度を利用するには、以下の要件に該当していなければなりません。
- 自分の住んでいる家屋もしくは家屋のある借地・借地権
- 売却した年の前年・前々年に同じ特例・譲渡損失を損益通算・繰越控除の特例を利用していない
- 売却した年の前年・前々年にマイホームの買い替え、マイホーム交換の特例を利用していない
- 売却した家屋に収用の特別控除などを利用していない
- 災害によって損失した家屋の場合は、居住しなくなった日から3年以内に売却する
- 売買の相手が親子や夫婦ではない
共有持分の場合、共有者それぞれが控除を利用できますが、各々が確定申告をする必要があります。
居住用不動産の売却時の軽減税率
「マイホームを売った時の軽減税率の特例」とも表されており、長期譲渡所得の税額をより低くできる軽減税率の制度です。軽減税率を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 自分が住んでいる家屋または家屋とともに敷地も売却する
- 所有期間が10年以上
- 売却した年の前年・前々年に同じ軽減税率を利用していない
- 売却した年の前年・前々年にマイホームの買い替え、マイホーム交換の特例を利用していない
- 売却する相手が親子や夫婦関係ではない
上記の要件に該当した場合は、以下の税率が適用されます。
長期譲渡所得の金額 | 税率 |
---|---|
6,000万円以下 | 10% |
6,000万円超 | 15% |
本特例は3,000万円控除と併用できるため、節税対策として有効です。
相続した空き家の売却時の特例
相続によって取得した不動産を売却した際に利用できる特例制度です。譲渡所得から最高3,000万円が控除できます。
正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といい、利用するためには、以下の要件に該当しなければなりません。
- 相続により取得している居住用の家屋である
- 売却する対象が、以下a.b.のいずれかに該当している
a.相続によって取得した居住用の家屋か、被相続人の居住用家屋と敷地である
b.被相続人の居住用家屋を全部取り壊したあとの敷地を売却する - 相続から3年以内
- 売却代金が1億円以下
- 相続財産を譲渡した場合の取得費・特例・特別控除などを利用していない
- 同じ被相続人からの相続・贈与により取得した家屋と敷地に同じ特例を利用していない
- 売却先が親子や夫婦関係ではない
なお、本特例は空き家にのみ適用される制度であり、分譲マンションを相続した場合は利用できません。
参照:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
まとめ
共有持分の不動産には、所有・取得・売却のタイミングで、それぞれ「固定資産税・都市計画税・不動産取得税・登録免許税・贈与税・譲渡所得税・住民税」が発生します。
共有持分は、持分割合に応じた税金を支払うのが原則です。それぞれに納付書が届くわけではなく、代表者が一括して支払い、共有者が代表者に対して持分割合に応じた税金を支払います。
ただし、自分の持分だけ売却した場合の所得税や住民税は当人のみ支払い、ほかの共有者に納税の義務はありません。
かかる税金には各種控除制度が用意されており、うまく利用すれば数百万円単位の節税が可能です。
中央プロパティーでは、共有持分の売買仲介だけでなく、相続・売却・譲渡などの節税対策についての相談も承っております。共有持分にかかる税金について不安のある人は、ぜひ無料相談をご利用ください。

この記事の監修者
税理士
税理士。東京税理士会品川支部所属。日本税務会計学会訴訟部門所属。福島健太税理士事務所代表。不動産デベロッパーから税理士に転身した経歴をもつ不動産と税のスペシャリスト。共有持分で不動産を相続される方が相続税を相談する税理士として多くの顧客を得る。趣味は釣り。