空き家を放置するリスク|共有持分とは|空き家
空き家を放置するリスク
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質問先日父親が亡くなり、実家が空き家になってしまいました。
私は東京で働いており、実家には帰れません。他の兄弟も同じです。
売却や取り壊しなども考えておりますが、他の兄弟と話がなかなかできず、そのままの状態です。
いつかは整理しないと思ってはいますが、放置しておくリスクはありますか?

空き家放置のリスク
誰も住んでいない家は傷むのが早く、危険な建物になってしまいがちです。動物、浮浪者、犯罪、火事など。少し考えただけでもリスクは山ほど出てきてしまいます。仮に、空き家が原因で第三者に危害を与えてしまったような場合、不法行為責任を問われることもあります。

空き家放置はすぐにでも解消すべきです。と分かっていてもなかなか解消できないのが実情だと思います。全国的にみても空き家は年々増えており、この先空き家になりそうという潜在的なケースも踏まえると相当な数になってしまいます。
このままではまずいということで、ついに国レベルで空き家問題に取り掛かり2015年5月に空き家対策特別措置法という特別法が施行されました。国が空き家問題に乗り出した格好です。
空き家対策特別措置法の存在
「空き家対策特別措置法」のポイントは、自治体が倒壊の恐れや衛生上問題のある空き家を「特定空家等」に指定し、撤去や修繕を勧告・命令できるようになったことです。
(特定空家等に対する措置)
空き家対策特別措置法14条1項:「市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(…)をとるよう助言又は指導をすることができる。」
同条3項:「市町村長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかった場合において、特に必要があると認めるときは、その者に対し、相当の猶予期限を付けて、その勧告に係る措置をとることを命ずることができる。」
上記措置命令に違反すると50万円以下の過料に処されてしまいます。
(過料)
同法16条:「第十四条第三項の規定による市町村長の命令に違反した者は、五十万円以下の過料に処する。」
- 「過料」とは国または地方公共団体が、行政上の軽い禁令を犯した者に科する制裁のための金銭罰のことで、「科料」との違いは、「過料」は行政罰に対し、「科料」は刑事罰の点で大きく異なります。
同条9項:「市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。」
空き家が危険な状態にも関わらず所有者が除去などの対応をしない場合、自治体や第三者が義務者に代わって撤去をすることもできるようになりました。
行政代執行とは
文字通り「行政」が「代」わりに「執行」する(させる)ということです。よくテレビなどで見る、ゴミ屋敷を行政が代わりに除去し、その費用を義務者から回収するという方法がこの典型例です。実際にこの法律を根拠に行政代執行が行われているケースはまだまだ少ないですが、少子高齢化が進み空き家が増えてくれば、増えてくると考えられます。
気が付いたら、行政から請求が…とならないよう、空き家はできるだけ早く処理した方が良いです。空き家になる可能性がある人も事前に処遇などを兄弟・親族と話し合っておくと良いでしょう。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。