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共有持分での相続は危険!揉めないための遺言書作成のポイント

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共有持分での相続は危険!揉めないための遺言書作成のポイント

不動産を複数人で相続する場合、トラブルは絶えません。共有持分での不動産相続は危険と言えるでしょう。法定相続人が複数いる場合、相続から生じるトラブルを防ぐためには、遺言書の作成がとても重要となります。

そこでこの記事では、不動産を相続するときのリスクや遺言書作成のポイントをまとめました。

遺言書以外にもできる対策や共同相続してしまった場合の対応方法も紹介しているため、不動産の相続で揉めたくない方はぜひ参考にしてください。

<この記事でわかること>

  • 共有持分の相続が揉める理由
  • 揉めないための遺言書作成のポイント

1.不動産を共同相続するリスク

不動産を共同相続するリスクを解説します。共同相続とは、相続人が2人以上いる場合に、相続分に応じて債務を含む被相続人の権利義務を承継することです(民法第899条)。

不動産を共同相続したとき、2人以上の相続人が相続分に応じて所有権を承継し、不動産は共有となります(民法第898条第1項)。

このとき、共有不動産の所有者を共有者と呼び、各共有者が持っている所有権の割合を共有持分といいます(民法第249条ほか)。

不動産を共有すると次のようなリスクが生じるため、注意が必要です。

  • 不動産の活用を巡ってトラブルになる
  • 持分の売却を巡ってトラブルになる
  • 共有物分割請求訴訟に発展する
  • 不動産管理が放置される場合がある
  • 相続人がどんどん増え続ける

それぞれ詳しく解説します。

1-1 不動産の活用を巡ってトラブルになる

まず挙げられるリスクは、不動産の活用を巡ってトラブルになりやすい点です。不動産の共有者は、それぞれが不動産の使用、収益、処分ができる権利(民法第206条)を持っているため、自分一人の判断で不動産を自由に活用することができません。

下表のとおり、保存行為は単独でできますが、管理行為や変更行為は他の共有者の同意が必要です。

共有物の管理
行為の種類内容具体例行為の制限
保存行為共有物の現状を維持する行為(1)共有物の修理
(2)不法占拠者への明渡請求
各共有者が一人で対応可能
管理行為共有物を利用する行為共有物を貸すこと共有者の持分価格の過半数で決定
変更行為
(軽微な変更)
形状または効用の著しい変化をともなわない行為(1)外壁や屋根の修繕
(2)砂利道のアスファルト塗装
共有者の持分価格の過半数で決定
変更行為
(軽微以外の変更)
共有物の形もしくは性質に変化を与える行為(1)共有物の売却
(2)別荘の増改築
共有者全員の同意が必要

つまり、自分の意思だけでは不動産の売却や賃貸、増改築などの活用ができません。不動産の活用や処分を巡って、意見が割れた際に、共有者間のトラブルに発展してしまいます。

1-2 持分の売却を巡ってトラブルになる

不動産全体の売却には、共有者全員の同意が必要ですが、自己持分の売却は単独の意思で可能です。

しかし、自分の持分を赤の他人である第三者に売却すると、他の共有者はまったく面識のない人と共有状態になります。持分の購入者によっては、他の共有者に持分の売買を強引に交渉するケースもあり、共有者間でトラブルに発展する可能性があります。

1-3 共有物分割請求訴訟に発展する

遺産分割協議により共有持分で不動産を相続した後、共有名義不動産の活用や処分を巡って意見が割れ、当事者間での話し合いが困難な場合、共有物分割請求訴訟に発展する可能性があります。

共有物分割請求訴訟とは、裁判所の判断により共有状態を強制的に解消する訴訟です。裁判所に情報や希望を提供して適切な分割方法を具体的に決めてもらいます。

訴訟に発展した場合、共有状態の解消までに少なくとも半年以上はかかります。長い場合は、3年以上に及ぶケースもあり、費用面はもちろん、精神的な負担も大きいです。当然ながら、訴訟に発展すると共有者間の関係性も悪くなります。

1-4 不動産管理が放置される場合がある

不動産を共同相続すると、誰も不動産を管理せず放置されてしまう場合もあります。誰も不動産を活用しない場合、空き家のまま固定資産税を負担し続けることになります。

なお、令和5年中には、適切な管理が行われない空き家は、特定空き家になる前の段階でも管理不全空き家として市区町村からの指導対象となる場合があり、状態が改善しない場合には修繕などの勧告がされるようになります(新空家等対策特別措置法第13条)。

勧告がされた管理不全空き家の敷地は、固定資産税の住宅用地の特例が解除され、固定資産税の額が最大6倍になってしまうので注意してください(新地方税法第349条の3の2)。

税金の負担が勿体ないことはもちろん、空き家のまま放置すると火災や防犯面で近隣住民に迷惑をかける自体にもなりかねません。放置し続けると劣化の進行も早くなり、後になって売却や賃貸をしようとしたときに不利になる可能性があります。

1-5 相続人が増え続ける

共有者に相続が発生するとさらに共有者が枝分かれして増えてしまい、不動産の権利関係は極めて複雑となります。売却しようにも共有者と連絡が取れないといったケースも少なくありません。

共有関係を放置すると、将来世代にまでさらに複雑化したトラブルの種を残してしまうため、適切に対応することを強くおすすめします。

中央プロパティーにご相談いただいた方のなかに、共有者が15人もいる一軒家もありました。どのように解決したのかなど、詳しくは以下の記事を参考にしてください。

2.不動産相続時の遺言書作成のポイント

不動産の共同相続に関しては、さまざまなリスクがあることを紹介しました。紹介したリスクは、次のように遺言書を作成すると、防げる可能性があります。

  • 一人を相続人に指定する
  • すべての不動産の相続人を指定する
  • 遺留分を考慮する

それぞれ詳しく解説します。

2-1 一人を相続人に指定する

相続人が2人以上いるとき、1人を相続人に指定しておくことがおすすめです。

相続人となる人や法定相続分は、法律により定められています。

参考:国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分

多くのケースでは、「相続人が一人しかいない」ということは珍しく、2名以上の相続人がいることが一般的です。

遺言書がなければ、法定相続分に基づいて遺産分割をおこなってしまったり、その場を穏便にまとめるために「とりあえず共有名義にしておこう」と安易に考え、共有状態になってしまうことが考えられます。

不動産の相続がある場合には、相続人のうち、誰か一人を指定するようにしましょう。

2-2 すべての不動産の相続人を指定する

相続人を指定すると共有状態になりませんが、遺言書に記載のない不動産は、共同相続によって共有関係が生じてしまいます。

そのため、遺言書ではすべての不動産について、誰に相続(承継)させるのか記載しておく必要があります。

2-3 遺留分を考慮する

遺言を書くときは、相続人が受けている遺留分に気をつけることもトラブルを防ぐためのポイントです。遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人が、相続で得ることを保障された最低限の利益をいいます。

相続人の遺留分の割合は下表のとおりです。

相続人遺留分の割合(個別的遺留分)
配偶者のみ2分の1
配偶者と子(孫)配偶者:4分の1
子:4分の1を等分
配偶者と父母(祖父母)配偶者:3分の1
父母(祖父母):6分の1を等分
配偶者と兄弟姉妹配偶者のみ2分の1
子(孫)のみ2分の1を等分
父母(祖父母)のみ3分の1を等分
兄弟姉妹のみなし

仮に遺言で不動産を配偶者1人にだけ相続させても、子が配偶者に対して遺留分侵害額の請求をすることにより、配偶者は子に金銭を支払う必要があります。(民法第1042条以下

遺留分を巡る争いを避けるためには、遺留分を侵害しないように各相続人に財産を承継させるなどの工夫が必要です。

3.トラブルを避けるために被相続人が生前にできる対策

不動産の相続トラブルを避けるために被相続人が生前にできる対策は、遺言書の作成だけではありません。生前贈与や家族信託などを含め、生前対策を紹介します。

3-1 遺言書の作成

まずは、遺言書の作成で対策する方法です。

2.不動産相続時の遺言書作成のポイントで解説した点に注意して作成しましょう。

遺言書の効力は、被相続人の意思として最優先で尊重されます。

しかし、遺言書の効力が適切に発揮されるためには、定められた様式で記載されている必要があります。

日付や署名、押印がない場合は、遺言書は無効になります。自分で遺言書を作成する場合は、注意しましょう。

不安な場合は、公証人に作成してもらう公正証書遺言がおすすめです。

3-2 生前贈与

遺言書を書いて相続させなくても、生前に贈与しておくといった方法もあります。贈与は、遺贈と同じく法定相続人ではない人に、無償で不動産の所有権を移転する方法です。

生前贈与した不動産は既に贈与を受けた人(受贈者)の財産であるため、相続が開始しても共同相続は発生しません。したがって不動産が共有になることを防げます。

しかし、生前贈与の受贈者には特別受益があったとして遺産に対する相続分が減る方向で調整されてしまう可能性があるため、遺言書で特別受益としない意思表示をしておくのが無難です。(民法第903条

また、生前贈与は相続させるまたは遺贈する旨の遺言と同様に遺留分の問題が発生する可能性があるので注意しておきましょう。それだけでなく、贈与税が発生する可能性もあります。

3-3 家族信託(民事信託)

遺言書や生前贈与ではなく、家族信託で不動産の共有を防ぐこともできます。家族信託とは、特定の目的のために家族に財産を託し、管理・処分を任せる仕組みです。

配偶者に不動産の所有権を託しておき相続開始後には子を受益者とするよう設定しておくと、不動産は配偶者のものであるため共有状態にならず、受益権のみ共有にすることができるため、近年ではこの家族信託による相続対策が少しずつ増加傾向にあります。

家族信託について詳しく知りたい方は、ぜひ以下のページを確認してください。

3-4 売却する

共同相続により不動産が共有状態になる前に、売却するのも1つの手です。売却すると、特別受益や遺留分の問題に悩まされることなく、売却益が出た場合には相続人に現金を相続させることができます。

遺言書や生前贈与、家族信託なども考慮する必要はなくなるため、売却に問題がなければ売却も検討してみましょう。

4.遺言書がなく不動産を共同相続してしまった場合

もし遺言書がなく不動産を共同相続した場合は、さまざまなリスクを負ってしまいます。共有状態を解消するためにできることを確認しておきましょう。

4-1 共有者間で持分を売買する

まず考えられる方法は、共有者間で持分を売買する方法です。不動産全体を売却するには全共有者の同意が必要ですが、一部の共有者に共有持分を売ることは一部の共有者だけでできる手続きです。

ただし、共有持分をいくらで売買するかについて争いが生じることもあるので注意しておきましょう。また、この方法では他の共有者の持分を買い取る資力が必要です。

4-2 第三者に自己持分を売却する

共有者間ではなく、第三者に自己の共有持分を売却することもできます。第三者に売却するときは、他の共有者の同意は不要です。買主と売買について合意ができれば売却でき、共有関係から離脱できます。

しかし、不動産全体ではなく共有持分だけを買ってくれる人を見つけるのは簡単ではありません。共有持分の取扱実績のある不動産会社に相談するのがおすすめです。

4-3 全員で不動産全体を売却する

全共有者からの同意が得られるのであれば、不動産全体の売却を一番おすすめします。自己の共有持分だけ売却すると自分の取り分は少なくなりがちですが、不動産全体の売却ならそのようなデメリットがないためです。

しかし、全共有者からの同意を得ることが前提なので、難しければ他の方法を検討しなければなりません。

4-4 土地を分筆して単独名義にする

不動産が土地の場合は、土地を分ける分筆(現物分割)をして単独名義にする方法もあります。もちろん共有者全員の合意が必要ですが、共有持分や土地全体を売って所有権を失うことがないため、土地の使用や賃貸をしたいときに有効な方法です。

土地の状況によって異なりますが、分筆はほとんど資力を気にする必要なく単独名義にできる点がメリットです。

まとめ

不動産の共同相続では、共有持分に関して不動産の活用や持分の売却を巡ってトラブルになるほか、訴訟に発展したり相続人が増え続けたりするなどのリスクがあります。

このようなリスクを防ぐためには、遺留分の侵害に気をつけながら、すべての不動産についてそれぞれ1人を相続人に指定する遺言を作成するのがポイントです。また、遺言書以外にも生前贈与や家族信託、売却などの対策も考えられます。

中央プロパティーは、共有持分の専門仲介業者です。共有持分の相続でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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