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共有持分の抵当権設定とは

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コンテンツ番号:1479

共有持分の抵当権設定とは

質問1. 土地持分に抵当権が設定された場合
AB共有土地上にA単独所有の建物が存在している場合、Aの土地持分に設定されていた抵当権が実行されCが買受人(競落)した場合、法定地上権が成立するか。
2. 土地持分ではなく、建物に抵当権が設定された場合
AB共有地上にA単独所有の建物が存在している場合において、Aの建物に設定された抵当権が実行され、Cが買受人(競落)した場合、法定地上権は成立するか。
※抵当権を実行する=債権者が競売手続きをする

1、2とも法定地上権は成立しません。

土地持分にのみ抵当権が設定された場合

土地持分にのみ抵当権が設定された場合のイメージ

建物持分にのみ抵当権が設定された場合

土地持分にのみ抵当権が設定された場合のイメージ

法定地上権とは

法定地上権とは、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属している場合に、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときに当該建物に成立する地上権のことを言います(民法388条前段)。約定地上権とは異なり当事者間の合意による設定ではなく法律の規定によって当然に生じます。

民法388条「土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。」

「地上権」とは、簡単に言うと他人の土地を使用する権利です。

「法」律で「定」められた「地上権」なので、「法定地上権」と呼ばれます。ただ、無制限に認めると抵当権者に大きな不利益を被らせてしまうので、一定の要件を元にこれを認めています。

法定地上権と約定利用権(賃貸借契約が一般的)の違い

約定利用権の代表例は賃借権になります。不動産の賃借権は、借地借家法で賃借人が保護されていますが、あくまで債権です。その点、法定地上権は「物権」であるので、債権よりも強い権利です。

例えば、地上権は譲渡転貸ができますが、賃借権は賃貸人の承諾なき限り譲渡転貸できません。つまり、法定地上権の成立は建物所有者にとっては利益になりますが、土地所有者にとっては不利益になるという点がポイントです。

A所有の不動産に抵当権(競売)が実行され、土地を第三者が落札して、A所有の家屋のみ法定地上権が設定されているず

法定地上権が成立する要件は

民法388条:「土地及びその上に存する建物が、同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは」

整理すると

  1. 抵当権設定時に建物が存在していたこと
  2. 抵当権設定当時、土地と建物が同一所有者に帰属していたこと
  3. 土地と建物の一方または双方に抵当権が設定されていること
  4. 競売が行われて別の者に帰属すること

となります。

共有と法定地上権

土地または建物に共有関係が存在する場合(土地または建物を共同名義で所有している場合)に、一方の共有者については要件を満たすが、他方の共有者に用件が備わっていない場合、法定地上権の成立をどのように考えるかという問題です。設問を参考に検討していきましょう。

土地の持分に抵当権が設定された場合

この場合各共有者について見てみると、Aの土地持分に対する関係では法定地上権が成立します。しかし、Bとの土地持分関係では成立しません(抵当権設定当時、土地と建物が同一所有者に帰属していたことの要件を満たさない)。この場合に、Bの土地持分についても法定地上権が成立するとしましょう。

前述しましたが、法定地上権は土地所有者にとっては不利になります。そうすると、他の土地共有者の関与なく、法定地上権という強力な権利を認めることになってしまいます。

また、自己の土地持分との関係では法定地上権が成立し、他の共有者との土地持分との関係では約定利用権が存続すると考えるのは、法律関係を複雑にしてしまいます。そこで、法定地上権は成立せず、約定利用権(賃貸借など)を取得することになると考えられえます。

【最判昭29年12月23日】
判旨:「右法条(民法388条)により地上権を設定したものと看做すべき事由が単に土地共有者の一人だけについて発生したとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘わらずそのものの持分までが無視さるべきいわれはないのであつて、当該共有土地については地上権を設定したと看做すべきでないものといわなければならない。…同条が建物の存在を全うさせようとする国民経済上の必要を多分に顧慮した規定であることは疑を容れないけれども、しかし同条により地上権を設定したと看做される者は、もともと当該土地について所有者として完全な処分権を有する者に外ならないのであつて、他人の共有持分につきなんら処分権を有しない共有者に他人の共有持分につき本人の同意なくして地上権設定等の処分をなし得ることまでも認めた趣旨でないことは同条の解釈上明白だからである。」

としています。一方の共有者の土地持分に抵当権が設定され実行された場合、他方の共有者の土地持分だけではなく土地全体につき、法定地上権は成立しないとし、同様に解しています。

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建物に抵当権が設定された場合

他の共有者の土地持分に関しては法定地上権の成立要件を欠く場合です。上記事例と同じく、Aの土地持分に対する関係では法定地上権の要点を具備していますが、もともとBの土地持分に関しては法定地上権の要件が欠けています(抵当権設定当時、土地と建物が同一所有者に帰属していたことの要件を満たさない)。

この場合もと全体について法定地上権が成立した場合、Bの利益を害して、妥当ではありません。そこで法定地上権は成立せず、約定利用権が成立すると考えられます。

  • 土地共有者の不利益を考え、一方の共有者の土地持分に抵当権が設定され実行された場合も、共有不動産上に建つ家屋に抵当権が設定された場合も法定地上権は成立しません。

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この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

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