自己破産 共有名義|法律・税金|その他
自己破産 共有名義
目次

まず、そもそも、自己破産とはどのような場合をいうのか解説していきます。単にお金がなさそうというイメージはあると思いますが、実際には下記になります。
自己破産とは、裁判所に「破産申立書」を提出し、裁判所を得ることで、非免責債権(税金や養育費)を除く、全ての借金を0にするというものです。
ただし、借金を免除してもらう代わりに、財産を全てお金に換え(競売により換価)、債権者に配当されることになります。自己破産の具体的な要件は、「支払不能」です。
♦破産法2条11項
この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
「支払不能」について簡単に言うと、「現在持っている資産、また、今後得られる可能性のある収入等から、総合的に判断して、債務を完済することが不可能であると考えられる状態のこと」を指します。
自己破産をすると、財産は全て差し押さえられ、破産者の手元には20万円以上の資産を残すことは認められません。
また、新たな借り入れができなかったり、公職に一定期間就くことができなかったり、官報に記載されてしまったり等のデメリットも多く存在します。自己破産により、財産が抑えられてしまった後は、競売により換価され、債権者に債権額に応じて分配されます。それでは、この、競売について見ていきましょう。
競売とは、財産を裁判所が代わりに売却する手続のことを指します。競売物件という言葉を聞いたことがある人もいると思いますが、裁判所が入札方式で買い手を募集し、一定上の金額を満たした上で、金額が高い入札者が新所有者となります。
当然、元の所有者は完全に権利を失ってしまいます。競売は裁判所が代わって手続きを進めてくれますが、売却価格は市場価格よりも安くなってしまいます(相場の6~7割)。
共有者が自己破産した場合の対応策
それでは、共有者の一人が自己破産した場合、その不動産はどのようになってしまうのでしょうか。基本的には他の共有者が自己破産してしまった場合でも、自身の持分について、差し押さえられたり、競売に付されたりという事はありません。
原則的には自己破産した者の持分のみが差し押さえられ、競売に付されます。ただ、自宅の場合では、ローンの有無によって大きく変わってきますので、ここからはローンの有無で分けて解説していきます。
1. 住宅ローンがない場合
ローンがない場合には、自己破産した共有者の持分のみが差し押さえられ、競売に付されることになります。例えば、甲乙夫妻がマンションを2分の1ずつの割合で、共同で所有しており、乙が自己破産してしまった場合(住宅ローン無し)、自己破産した乙の持分部分が差し押さえられ、競売に付されます。
競売に付され、第三者に売却されると、その第三者が新たな所有者となり、甲とその第三者とで、共有状態になります。そうです、見ず知らずの第三者と共有になってしまう可能性があるのです。また、自己破産をすると、破産管財人という人が就く場合があります。
そうすると、自己破産者に代わってその破産管財人が代わりに、管理及び処分を進めていきますが、場合によっては、「自己破産した乙の持分を買い取ませんか?」という交渉をしてくることがあります。
乙の持分を甲が買い取ることができれば、甲は自身が単独で所有することができるようになります。破産管財人も他の共有者に売れれば手間も省けるので、この方法で交渉してくるケースが多いです。
- 破産管財人とは、「破産法の破産手続において、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する人のことです。」
破産法2条12項
「…「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。」
2. 住宅ローンが残っている場合
上記例で、住宅ローンが残っている場合はどうでしょうか。住宅ローンを組む場合、マンションに抵当権がついていることが通常でしょう。自己破産した乙がそのローンを支払わない場合には、そのマンション全体が抵当権実行(競売)されてしまいます。
競売については上述でも述べましたが、市場価格の7割程度でしか売却できません。そのため、任意売却という方法を採り、市場価格に近い相場で売却することができる方法を模索すべきです。
任意売却とは、債権者(借り入れ先の金融機関)の同意を得て対象不動産を売却することです。任意売却を進める場合には、破産管財人の承諾は必要なのはもちろん、債権者の同意が必要な点は注意が必要です。
特に重要な点が、借入先の金融機関の承諾が得られなければならない点です。任意売却を打診しても、必ず金融機関が承諾してくれるとは限りませんし、この交渉には高度な専門知識が必要になります。
任意売却を進めたい場合には、自己破産した共有者の破産管財人と共に金融機関などと交渉し、許可を得られれば、不動産を売却していくという形になります。
悩んでいる間も、手続きはどんどん進行してしまい、気が付いたらもう手遅れにというケースもありますので、決断は早くした方がよいでしょう。他の共有者に資力がある場合には、自己破産した者の債務の分も返済することも方法の一つです。ローンを完済できれば、面倒なことに関与せずに済みます。
任意売却のメリット
任意売却のメリットは、売却価格が高額になる可能性の他に、買い手とリースバック契約が結べれば、そのまま住み続けられる可能性がある点です。
確かに、家やマンションの所有権は第三者に移ってしまいますが、そのまま住み続けられれば、表向きは何ら変わることなく生活ができます。特に子供がいる場合などには、引っ越ししたくないと思う方も多いことでしょう。任意売却+リースバックという方法により、今の状態で住み続けられる可能性があるのです。
もちろん、そのためには、買い手となる第三者との交渉が必要になります。高度の交渉内容になるので、詳しい専門家に依頼するとよいでしょう。
FAQ
質問破産管財案件は取り扱ってもらえるのでしょうか?また担保権がついたままでの取引は可能でしょうか?

取り扱いは可能です。
このような場合、破産手続きにかけられるのは、破産した者の持分のみになります。破産管財物件の売却に当たっては、売却方法、代金設定、売却先など管財人(弁護士等)に裁量権がありますが、基本は、売却して債権者に配当することにあるので、売却先に問題がなければできるだけ高い申し込み者に売るというのが原則です。
不動産共有名義の自己持分のみの売却は、一般的に流通している不動産とは違い、権利関係が複雑で売却査定や仲介することが非常に困難と言われています。
担保権付の場合、担保権がついたままで売却すること自体は可能です。担保権(多くは抵当権)がついている場合、第三者に共同売却する場合は、売却代金の中から抵当権などの担保権で担保されている債務の支払を行って、残った代金の中から共有者で分配を行います。
通常、担保権者は不動産の価値を把握している立場にあり、一定額の支払を受けなければ登記抹消を認めません。
そこで、一定額の支払い能力がある旨を疎明するために弊社では不動産鑑定士による調査報告書を無料で作成致します。
ただし、担保権付きの不動産を購入する人は非常に少なく、売れたとしてもかなり安い値段でないと売れないことが多くあります。
私たち中央プロパティ専門チームは、不動産共有名義の持分売却を専門的に扱う仲介専門チームとして各士業の方々と連携し、問題解決を図りたく思っております。
我々は購入希望者(投資家たち)の中から一番良い条件、すなわち一番高い価格を提示された買主様と破産管財人と契約締結に向けてサポートしていきます。
この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。