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共有名義不動産売却時の委任状とは|作成方法やルールを解説

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共有名義不動産売却時の委任状とは|作成方法やルールを解説

共有名義の不動産を売却する時に委任状を作成する場合がありますが、作成方法をご存じない方も多いでしょう。

この記事では、共有名義の不動産売却時の委任状を取り上げました。

作成方法やルールだけでなく、委任状で一定の権限を委任された代理人がどのような流れで不動産売却を行うかを解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

<この記事でわかること>

  • 委任状作成の流れ
  • 共有名義不動産売却時の委任状作成に必要な書類
  • 委任状に記載する内容

1.共有名義不動産の売却で委任状は必要?

共有名義の不動産を売却する際、共有者の誰かが代表となって手続きを行ったり、司法書士などに依頼して登記の手続きを行ったりしてもらう場合が多いでしょう。そのような場合、委任状を作成し、代理人を選任します。

ここでは、委任状とはなにか、共有名義の不動産売却で委任状を作成するケースや委任状は誰が作成するかについて解説します。

1-1 委任状とは

委任状は、代理権委任状ともいいます。代理人が本人に代わって申請や手続きをする際に、申請や手続きが本人の意思によるものであるのを証明する書類です。

代理人は、本人に成り代わって手続きを行う人を指します。代理人はあくまで代理で手続きを行うのみで、発生する効果は本人におよびます。

代理人の種類は、法定代理人と任意代理人の2種類です。法定代理人は未成年の親権者(民法第818条、第824条)や成年後見人(民法第843条、第859条)などが該当します。法定代理人ではない代理人は、すべて任意代理人です。

委任状を作成する本人を委任者、委任を受ける人を受任者といいます。受任者は委任状の作成者の代理人となる仕組みです。

委任者と受任者の関係は下図でも確認できます。

(図1_委任者と受任者(代理人)の関係)

1-2 共有名義不動産の売却で委任状が必要なケース

それでは共有名義の不動産を売却する際に、委任状が必要なケースを確認していきましょう。前提として、不動産の売却には権利所有者である売主の立ち合いが必要です。売主は相応額を得るのと引き換えに所有権(民法第206条)を失います。権利の失効は重大なため、本人の意思で行う必要があるのです。

共有名義の不動産についても同様です。不動産全体を売却する場合、その不動産に対して権利を持つすべての共有者が売主として手続きに参加しなくてはなりません。

しかし共有者が遠方に住んでいたり、病気などで移動が難しかったりする場合もあります。そのような場合は、売却への合意を前提として、立ち会いが可能な他の共有者に委任状を出せば手続きの委任が可能です。

また、共有者の中で代表を決め、代表者が他の共有者の委任を受け代理人として売却手続きを行う場合も委任状が必要になります。

それでは委任状は誰が作成するのか、また共有持分の売却に必要な2種類の委任状について確認していきましょう。

1-3 共有名義不動産売却時の委任状は誰が作成する?

委任状は、代理人に委任する意思を書面にまとめたものなので、通常は依頼する本人が作成し自署にて記名等を行う必要があります。しかし、病気やけが、身体的な障害などにより自分で作成するのが難しい場合は、第三者に依頼し代筆などでの作成も認められています。

代筆で作成する場合は、依頼人が自署できない理由や作成した文書を依頼人に読み聞かせを行った旨の記載が必要です。また、委任状に代筆者の住所・氏名の記入と押印、依頼人の押印も必要です。

共有名義の不動産を売却する際に必要な委任状は2種類あるのも、注意しておきたい点です。

一つは「他の共有者に契約・決済を代理でおこなってもらうための委任状」と、もう一つが「司法書士に不動産の登記を依頼するための委任状」です。

売却の手続きに立ち会いできない共有者は、他の共有者などへの委任状と司法書士への委任状をそれぞれ提出する必要があります。また登記の手続きを委任する司法書士には、基本的に一度は面会し事前の意思確認を受けなくてはなりません。

2種類の委任状の取扱いについては、下図でも確認できます。

※図の例では兄(共有者B)が弟(共有者A)に契約・決済を代理でおこなってもらい、同時に司法書士へ不動産の登記を依頼する場合とします。

(図2_共有名義の不動産売却を代理人に依頼する場合 )

2.共有名義不動産の売却で使う委任状のルール

それでは次に、共有名義の不動産売却で使う委任状のルールについて、以下を確認していきましょう。

  • 委任状作成の流れ
  • 共有名義不動産売却時の委任状作成に必要な書類
  • 委任状に記載する内容

それでは一つずつ解説します。

2-1 委任状作成の流れ

委任状の作成の流れは、以下の通りです。

1)委任状の作成に必要な書類を収集する

委任状の作成には多くの書類が必要です。書類の取得には時間がかかるものもあるため、早めに準備に着手しましょう。必要書類については2-2で解説します。

2)必要情報を記入する

委任状には、法的に定められたフォーマットは存在しません。しかし、委任状としての要件を満たすために記載すべき事項は決まっています。委任状の記載に不備や漏れがあると、売買契約に支障が生じたり、共有者間でのトラブルが起きたりする場合があります。必要情報はしっかり確認し、漏れなく記載しましょう。委任状に記載すべき内容は、2-3で詳しく解説します。

3)代理人を選定し、委任する

代理人は、代理人になるために必要な資格や選定の条件はありません。委任を受ければ誰でも代理人になれます。共有名義の不動産を売却する場合、他の共有者が代理人になるケースが多いでしょう。

誰に依頼してもかまわないものの、決定権を代理人に委ねるため、代理人の行為は自分の行為となります。代理人が自分の意思とは異なる決定をしてしまった場合、トラブルになる可能性もあるでしょう。そのため、代理人の選定は慎重に行う必要があります。詳しくは2-4 で解説します。

2-2 共有名義不動産売却時の委任状作成に必要な書類

共有名義の不動産を売却する際の委任状の作成には、以下の書類が必要です。

委任状作成に必要な書類等一覧

  • 委任者の実印が押された委任状
  • 委任者と代理人の印鑑登録証明書(取得から3ヶ月以内)と実印
  • 委任者の住民票の写し
  • 委任者と代理人の本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
  • 売却する不動産の登記事項証明書

印鑑登録証明書と住民票の写しは市区町村村役場で取得できます。マイナンバーカードがあればコンビニでも発行可能です。コンビニ交付の対象の市区町村は、下記サイトで確認してください。

参考:コンビニ交付

登記事項証明書は法務局の窓口の他、郵送での請求も可能ですが、オンライン請求が便利です。オンライン交付は法務局の窓口などに比べて手数料が割安で、書類や印鑑などを用意しなくても請求できます。

参考:登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です

2-3 委任状に記載する内容

それでは、委任状に記載する内容について解説します。委任状は定められた書式がないため、必要な情報がすべて記載されていればどのような書式でもかまいません。

しかし何もない状態からでは、どのように体裁を整えていけばよいか迷う場合もあるでしょう。共有名義の不動産の売買を取り扱っている不動産会社は、委任状のひな形を持っているケースもあります。

会社によっては、指定の書式でなければならない場合もあるため、契約する不動産会社が決まったら委任状の作成についても相談しておきましょう。

委任状に記載する内容は以下の通りです。

委任状に記載する内容一覧

  • 受任者(代理人)の住所・氏名
  • 「不動産売買契約の締結の権限を代理人に委任する」旨を文書内に記載
  • 売買物件の表示項目
  • (土地:所在、地番、地目、地積
  •  建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積)
  • 委任の範囲(不動産売買契約の締結など)
  • 委任状の有効期限
  • 委任状の日付
  • 委任者の住所・氏名(委任する本人の署名と押印 ※実印)
  • 受任者の住所・氏名(代理人の署名と押印 ※実印)

委任者・受任者の住所・氏名はそれぞれの自筆であることが求められますが、それ以外の項目はパソコンなどで作成してもかまいません。売買物件の表示項目は、事前に用意した登記事項証明書を見てその通りに書き写しましょう。

なお、委任者が複数いる場合は連名で作成すれば、委任状の作成を1通で済ませられます。共有者が多い場合などは連名のほうが代理人にとってもわかりやすいでしょう。

2-4 代理人の選定

代理人は誰でもなれますが、共有名義の不動産の売却手続きを任せられる信頼のおける相手に依頼するのが良いでしょう。

代理人の候補としては、他の共有者や親族など近しい者、もしくは弁護士や司法書士などの専門家があげられます。共有名義の不動産の売却は、共有者のうちの一人を代表者とし、その代表者を代理人に選べば売却にかかる手続きがスムーズに運びます。

一方で共有者との関係が良好でない場合、代理人に選定してしまうと新たなトラブルの火種となる可能性もあります。

弁護士や司法書士へ依頼する場合、報酬の支払いが必要です。しかしプロに任せれば、不動産の売却が有利に進められるなどのメリットもあります。なお、報酬を得て代理人を請け負えるのは弁護士か司法書士のみです。

3.代理人が共有名義不動産を売却する方法

共有者から委任を受けた代理人が、共有名義の不動産を売却する方法を以下の順で解説します。

  • 共有名義不動産の売却までの流れ
  • 売却前に準備しておくこと
  • 不動産会社で共有名義不動産の売却手続き
  • 売却後におこなうこと

それではまず、売却までの全体の流れから見ていきましょう。

3-1 共有名義不動産の売却までの流れ

それでは、共有名義の不動産売却までの流れを図3で確認しましょう。

(図3_共有名義不動産の売却までの流れ)

まず、共有不動産の名義人を把握します。不動産の名義人は登記事項証明書で確認できます。複数の相続人で不動産を共有している場合、すでに亡くなった方の名義になっているケースもあるため、公的な書類で確認しましょう。

次に不動産会社へ査定を依頼し、査定価格などを参考にしながら売出価格を決定します。売出価格は、共有者全員の希望価格を聞き取り、査定価格や相場をもとに話し合って決めましょう。

代理人を立てる場合は、代理人の選定と委任状の作成が必要です。代理人や代表者を立てると不動産会社や買主とのやり取りがスムーズに行える可能性があります。

売出希望価格が決まれば、不動産会社との媒介契約に進み、売却活動を進めます。買主が見つかれば売買契約を締結し、そののち決済と不動産の権利の引渡しを行います。

3-2 売却前に準備しておくこと

売却前の準備として大事なのは、共有者全員の認識を合わせておくことです。

共有名義の不動産を全体売却するには、共有者全員の同意が必要です。”すべて売却する”方針とするなら、まずは共有者全員の意思をしっかり確認しましょう。共有者が一人でも売却に同意しない場合、不動産の全体売却はできません。

共有者がもともと交流のあった親族だとしても、資産やお金が関わるとトラブルが生じがちです。まして、ほとんど交流がなかったり、遠方に居住していたりする複数の共有者との合意形成は困難なケースも多いでしょう。

どうしても全員の合意がとれない場合は、各自の持分を売却するといった選択肢もあります。

共有持分の売却における同意については以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

共有者間での意見がまとまらない場合は、中央プロパティーにぜひ一度ご相談ください。

一般的な不動産会社には取り扱いが難しい問題でも、共有名義不動産が専門の中央プロパティーであれば、豊富な実績とノウハウの蓄積から解決の糸口を見出せるでしょう。

全体売却が共通認識として合意が取れたら、不動産会社へ査定を依頼し、代理人の選定と委任状の作成へと進みます。

3-3 不動産仲介会社で共有名義不動産の売却手続き

それでは、不動産仲介会社を決定してからの手続きの流れを解説します。

1)不動産仲介会社と媒介契約を締結

媒介契約とは、不動産の売却などを成功させるための営業活動を不動産仲介会社に依頼する契約を指します。媒介契約の締結により、不動産の売却活動がはじまります。

2)買主と売買契約書を締結

買主が決まり、買主と売買契約の内容に合意したら、契約を締結します。契約条項に曖昧な点があるとのちのトラブルにつながってしまうため、契約書の内容を十分確認する必要があります。

確認に不安がある場合、弁護士が同席しリーガルチェックをしてくれる不動産仲介会社を選べば間違いがないでしょう。

リーガルチェックとは、専門家による契約書の確認です。契約内容に齟齬や曖昧な点があるのに気づかず、売主が必要以上の責任を負わされるような契約を締結してしまうと、大きな損害を被る場合もあります。

リーガルチェックがあれば、不利益やトラブルの回避につながります。不動産会社を選ぶ際は、リーガルチェックの有無を確認すると良いでしょう。

契約書の内容に問題がなければ、署名・押印し、手付金が支払われます。

3)決済および物件の引き渡し

売買契約成立後、買主と日程調整し、決済と不動産の引き渡しを行います。これらが無事完了したら、抵当権抹消登記の手続きを行います。(同時抹消/同時決済)

3-4 売却後におこなうこと

不動産を売却したら、確定申告と納税が必要です。不動産の売却によって譲渡所得(売却による利益)を得ていれば、その分を申告しなくてはなりません。確定申告は代表者だけでなく、譲渡所得を得たすべての共有者がそれぞれ申告する必要があります。

譲渡利益がない場合、確定申告は任意になりますが、特別控除などにより税金の優遇措置が受けられる可能性があるため、申告するほうが良いでしょう。

不動産売却後の確定申告については、下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。

まとめ

共有名義の不動産売却では、主に以下のケースで委任状の作成が必要です。

  • 売却手続きへの立ち合いが難しい場合など、他の共有者に手続きの代行を依頼
  • 司法書士等へ登記の手続きを依頼

委任状には定められた書式はなく、必要な情報が記載されていれば有効です。

また、共有名義の不動産売却には専門知識が必要なため、共有名義不動産の取り扱い実績が豊富な不動産会社を選びましょう。

中央プロパティーは共有名義不動産を専門に扱っており、複雑なケースでも柔軟に対応し解決へ導いてきました。共有者の間で意見がまとまらない場合も、適切なアドバイスが可能です。共有名義の不動産でお悩みの際はご相談ください。

この記事の監修者

永田 泰伸ナガタ ヤスノブ

司法書士

司法書士。福岡県出身。東京司法書士会所属。司法書士ALBA総合事務所代表。遺言書の作成から執行、相続放棄、遺産分割協議、特別代理人選任申立など相続に関する手続き・対策の専門家。親切・安全・丁寧がモットー。

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