共有持分の売却に同意は必要?|共有者の同意を得ずに売却する方法|共有持分を売却する方法
共有持分の売却に同意は必要?|共有者の同意を得ずに売却する方法
目次
「共有持分の不動産を手放したいけど、ほかの共有者の同意なしで売却して後々トラブルにならないだろうか?」
「他の共有者からの同意を得ずに売却する方法が知りたい……」
共有名義の不動産を売却しようと検討している方のなかには、このように悩むケースも多いでしょう。
共有持分の不動産を全体売却する際は、基本的に他の共有者の同意が必要になります。ただし自分の持分のみを売却する場合は、他の共有者の同意は不要です。
しかし、同意なしで手放した場合も、後々他の共有者とトラブルになることもあるため、リスクを理解したうえで、売却方法を検討する必要があります。
この記事では、共有持分の売却で悩んでいる方に向けて、売却方法や注意点、売却にかかる費用などを詳しく解説します。
1.共有持分は売却できる?
共有名義不動産でも、売却は可能です。
しかし、単独所有の不動産を売却するケースとは勝手が異なるため、ルールをしっかり確認しておく必要があります。
1-1.共有持分の民法上のルール
行為 | 内容 | 具体例 | 行為の制限 |
---|---|---|---|
保存行為 |
共有物の現状を維持する行為 |
①共有物の修理 |
各共有者が一人で対応可能 |
管理行為 |
共有物を利用する行為 |
共有物を貸すこと |
共有者の持分価格の過半数で決定 |
変更行為 |
形状または効用の著しい変更をともなわない行為 |
①外壁や屋根の修理 |
共有者の持分価格の過半数で決定 |
変更行為 |
共有者の形もしくは性質に変更を加える行為 |
①共有物の売却 |
共有者の全員の同意が必要 |
※2023年4月1日から適用開始
共有名義不動産全体を売却する場合は、変更行為に該当するため共有者全員の同意が必要になります。また、2023年4月1日に改正・適用開始した民法では共有物の管理ルールが変更されています。
共有者が所在不明な場合などに限り、共有者全員の同意が不要となりました。共有名義不動産を扱いやすくなり、円滑な土地活用や相続後のトラブル軽減が期待できます。
民法改正後の共有物の管理ルールに関して、より詳しい内容を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
1-2.共有者の同意が必要なケース
先述した通り、共有名義不動産を全体売却するには、共有者全員の同意が必要です。
そのため、図1のように一人でも売却に賛同しない者がいると、売却できないということです。

(図1_共有者全員の同意が必要なケース)
1-3.共有者の同意が不要なケース
共有持分では、自分の持分のみを売却する場合は共有者の同意が不要なケースに該当します。
図2のように自己所有分の売却であれば、他の共有者の同意や承諾なく行えます。

(図2_共有者の同意が不要なケース)
ただし、持分のみの売却は通常の不動産売却よりもハードルが高く、希望金額で売れないケースも少なくありません。
他の売却方法と合わせて、次項で詳細を解説するので確認してください。
2.共有持分の売却方法
共有持分の売却方法は、以下の4つです。
-
第三者へ持分を売却する
-
共有者へ持分を売却する
-
不動産全体を売却する
-
分筆して各自の単独所有にする
それぞれ詳しく解説します。
2-1.第三者へ持分を売却する
共有者の同意なしに売却する方法は、第三者への持分売却しかありません。
この方法であれば、他の共有者からの承認や同意なしで売却は可能です。しかし、共有持分の不動産は、買い手が見つかりにくかったり、売却価格が安くなったりするのが実情です(詳細は次章「共有持分を売却する際の注意点」でご紹介します)。
共有者の同意なしに手放せるといっても、買い手が見つからなければ意味がありません。また、第三者に売却できた場合でも、以下のような行動をして他の共有者とトラブルに発展するケースがあります。
-
他の共有者に、残りの持分を買い取れないか交渉する
-
他の共有者に、自らが購入した持分を買い取ってもらえないか交渉する
強引に交渉を行いトラブルに発展する可能性があるので、第三者に売却する場合は、購入後の用途を事前に確認しましょう。
2-2.共有者へ持分を売却する
他の共有者に対して、持分の買取を依頼する方法です。
共有者が対象の不動産に住んでおり、持分割合が増えることに対してメリットを感じられる場合は、スムーズに取引できる可能性があります。しかし、共有者同士が不仲の場合や、全員が遠方に住んでおり積極的に利用していない場合は、共有者同士の売買は難しいでしょう。
また、他の共有者が買い取ってくれる場合でも、売買価格の設定が難しく、相場よりも極端に低い価格での売買になる可能性もあります。
2-3.不動産全体を売却する
共有者全員の同意を得て、不動産全体を売却する方法です。
不動産全体であれば、通常の不動産と同等に買い手も見つかりやすく、持分のみの売却と比べて高額で売却できます。不動産を売却し現金化できれば、資産を平等に分配できます。
しかし、他の共有者全員へ交渉し同意を得るのが難しく、諦める方も少なくありません。また、売却を進めるには代表者が全員分の委任状を預かったり、売却に伴う諸費用や税金を持分割合に応じて共有者全員で負担するといったデメリットもあります。
2-4.分筆して各自の単独所有にする
共有名義不動産が、土地の場合は分筆が有効です。土地上に建物が存在しない場合、持分割合に応じて土地を分筆すると、単独名義になり共有持分の状態を解消できます。分筆とは、土地を複数に分けて登記することです。
ただし、分筆には以下のような注意点もあります
-
建物の場合は分筆できない
-
土地の測量や登記に時間と費用がかかる
-
完全に同じ形・大きさに分筆はできない
-
分筆した土地によっては価値が低くなる・再建築できなくなる
分筆する方法を選ぶ際は、土地活用の専門家に必ず相談しましょう。
本章で紹介した共有持分の売却方法と、それぞれのメリット・デメリットを以下の図3にまとめました。
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
第三者へ持分を売却する |
・ほかの共有者の同意なしで売却可能 |
・買い手が見つかりにくい |
共有者へ持分を売却する |
・買主を探す必要がない |
・共有者同士の関係性によっては取引が難しい |
不動産全体を売却する |
・買主が見つかりやすい |
・ほかの共有者への交渉が必要 |
分筆して各自の単独所有にする |
・買主を見つける必要がない |
・測量や登記に時間と費用がかかる |
(図3_共有持分の売却方法)
3.共有持分を売却する際の注意点
共有持分を売却する際の注意点は、以下の3つです。
-
売却価格が低くなりがち
-
共有者間でのトラブル
-
購入者とのトラブル
それぞれ詳しく解説します。
3-1.売却価格が低くなりがち
共有持分を売却する場合、持分の購入者は他の共有者と共有状態になります。先述した通り、共有名義不動産の活用には、他の共有者の同意が必要なことが多く、不動産の活用に制限があります。そのため、共有持分の売却価格は低くなりがちです。
また、共有持分の価値は持分割合に応じて変わります。当然ながら持分割合が多い方が、売却価格も高額になります。但し、共有持分の価値は、単純に共有名義不動産全体の価値を持分割合で按分した価格ではありません。
例えば、図4のように、共有名義の不動産全体の査定額が6,000万円の場合をみてみます。
共有者二人の持分は、それぞれ1/2です。しかし、単純計算で一人あたりの所有価値が3,000万円だからと言って1/2のみを売却しても3,000万円になるわけではありません。

(図4_共有持分の価値)
そこで、共有持分をなるべく高く売却するためのポイントとしては、以下の3つがあります。
-
ポイント① 共有持分を専門に取り扱う不動産会社を選ぶこと
-
ポイント② 買取業者ではなく仲介業者を選ぶこと
-
ポイント③ 不動産鑑定士が査定している業者を選ぶこと
共有持分を専門に取り扱う不動産会社であれば、なるべく高く売却するための知識と経験に基づくノウハウがあります。また、一般の市場では買い手を見つけにくい共有持分の購入希望者を見つけるための、独自のネットワークを持っているケースもあります。
また、共有持分を高額売却するには、買取業者よりも仲介業者がおすすめです。
買取業者は、買取後に利益を上乗せして買い手を見つけるため、売主から購入するときは、相場よりも低い価格を提示します。一方、仲介業者は買主を探してくれるので、仲介手数料がかかっても買取業者よりも高値で売れる可能性があります。
なるべく高く売るには、正確な査定額を把握するようにします。そこで、利用したいのが、不動産鑑定士が査定を行う不動産会社です。
不動産鑑定士は、不動産の客観的価値を算出できる国家資格を有する者です。国で定められた基準に則って、厳密に査定をおこなうため、市場価格に近い価格での売却が期待できます。さらに、査定額への信頼度が高いため、購入希望者へ明確な価格根拠を説明することができ、高額取引に繋がるメリットもあります。
3-2.共有者間のトラブル
共有持分を売却する場合は、共有者間でトラブルを抱えているケースも少なくありません。持分の売却後に多いのが、黙って持分を売却したことで、他の共有者とトラブルになるケースです。
安心してもらいたいのは、共有持分を単独の意思で売却することは法的に違反ではありません。しかし、万が一トラブルに発展してしまった場合でも、法的に対抗できるようにしておくことが大切です。
法的に対抗するためには、法律のプロである弁護士と提携している不動産会社を頼りましょう。売却して終わりではなく、売却後の共有者同士のトラブルについても、アフターフォローしてもらえるかどうかなどを確認しておくと良いでしょう。
3-3.購入者とのトラブル
共有不動産を第三者に売却した場合、その第三者と他の共有者とで共有状態になります。
以前からの共有者からしたら、いきなり新たな共有者が現れると混乱する可能性があり、信頼関係が重要な共有持分にとってマイナスに働くでしょう。
実際に、新たな持分の購入者が他の共有者に対して持分の買取を強引に迫るケースがあり、トラブルに発展しています。そのため、第三者に売却する場合は「誰に売るか」が非常に大事であり、売る人を間違えるとトラブルに発展する可能性があります。
共有持分の売却は、売却後のトラブルも想定されるため、共有持分の取扱い実績が多い不動産会社を選びましょう。
具体的には、他の共有者との交渉力や法律・不動産の専門知識が豊富な会社です。
4.共有持分の売却にかかる費用
共有持分の売却にかかる費用には、主に以下の4つがあります。
-
登記費用
-
譲渡所得税
-
印紙税
-
仲介手数料
事前に現金で用意しておく費用もあるので、しっかり確認してください。
4-1.登記費用
登記費用とは、不動産の所有者を変更する際にかかる費用のことで、およそ3万〜7万円が目安です。この所有権を移転するための登記費用は、買主が負担します。
また、抵当権を設定している場合は売却時に抵当権抹消登記費用として1,000円程度かかります。司法書士へ抹消登記を依頼する場合は、別途報酬料として15,000円程度かかります。
抵当権抹消にかかる登記費用は、売主が負担します。
登記を行うのに資格が必要なわけではありませんが、専門的な内容になるため司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士に依頼すると、登記費用とは別に報酬を支払う必要があります。司法書士によって設定金額は異なり、金額相場は以下の通りです。
登記の種類 | 報酬額の目安 |
---|---|
所有権移転登記 |
2万〜12万円 |
所有権保存登記 |
1万〜5万円 |
抵当権設定登記 |
2万〜7万円 |
登記費用と司法書士への報酬を合わせると、10万〜30万円ほどと考えておきましょう。
4-2.譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産売却で発生した利益に対して課せられる税金のことで売主が納める税金です。
税率は以下のように、不動産の所有期間によって異なります。
-
短期譲渡所得……不動産を売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年以下の場合
-
長期譲渡所得……不動産を売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超える場合
所得の種類 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 (令和19年まで) |
合計 |
---|---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 |
5年以下 |
30% |
9% |
0.63% |
39.63% |
長期譲渡所得 |
5年超え |
15% |
5% |
0.315% |
20.315% |
4-3.印紙税
印紙税とは、売買契約書のような課税文書に課される税金で、印紙税と同額の収入印紙を貼付けて消印すると納税したことになります。
印紙税は、売主と買主が折半するケースが多いです。
印紙税額は、以下のように契約書に記載される金額によって異なります。
契約書に記載される金額 | 印紙税額 | |
---|---|---|
通常税額 | 軽減税額 | |
1万円未満 |
非課税 |
非課税 |
1万円超え10万円以下 |
200円 |
200円 |
10万円超え50万円以下 |
400円 |
200円 |
50万円超え100万円以下 |
1,000円 |
500円 |
100万円超え500万円以下 |
2,000円 |
1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 |
10,000円 |
5,000円 |
1,000万円超え5,000万円以下 |
20,000円 |
10,000円 |
5,000万円超え1億円以下 |
60,000円 |
30,000円 |
1億円超え5億円以下 |
100,000円 |
60,000円 |
※令和6年3月31日までに作成された契約書に関しては、軽減税額が適用されます。
4-4.仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に支払う成功報酬のことで売主と買主の両者が支払うのが一般的です。成功報酬額は、不動産会社によって異なり、売主からは仲介手数料を受け取らない会社もあります。
宅地建物取引業法によって、以下のように上限額が設定されています。
売買価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 |
売買価格の5% |
200万円超え400万円以下 |
売買価格×4%+2万円 |
400万円超え |
売買価格×3%+6万円 |
売却後に、手元に多くのお金を残すためには、仲介手数料が無料の不動産会社を選びましょう。
本章で紹介した共有持分の売却にかかる費用と内容を以下の図6にまとめました。
費用 | 費用負担者 | 内容 | 費用目安 |
---|---|---|---|
登記費用 |
買主 |
不動産の所有者を変更する際にかかる費用 |
10万円~30万円 |
譲渡所得税 |
売主 |
不動産売却で発生した利益に対して課せられる税金 |
・短期譲渡所得:39.63% |
印紙税 |
売主・買主 |
売買契約書のような課税文書に課される税金で、印紙税と同額の収入印紙を用意する |
契約書に記載される金額によって異なる |
仲介手数料 |
売主・買主 |
不動産会社に支払う成功報酬 |
売買金額によって変わる |
(図6_不動産売却にかかる費用)
5.まとめ
本記事では、共有持分の不動産売却について解説しました。
共有持分を売却する方法には、以下の4つがあります。
-
第三者へ持分を売却する
-
共有者へ持分を売却する
-
不動産全体を売却する
-
分筆して各自の単独所有にする
このなかで、共有者への同意が必要なのは、不動産全体を売却する場合です。それ以外の方法では同意は不要ですが、注意点も多く存在します。
扱いの難しい共有持分の不動産は、個人で解決策を模索するよりも、共有持分の対応に慣れている不動産会社に依頼するのがおすすめです。
中央プロパティーは、共有持分と相続不動産を専門に取り扱う不動産仲介会社です。これまで、共有不動産の専門家として4,000件以上のトラブルを解決してきました。共有持分に強いスタッフや弁護士など、専門家で意見を出し合い、問題解決に誠心誠意取り組みます。
また、中央プロパティーは仲介会社ですが、仲介手数料をはじめ、売却にかかる費用はすべて無料です。「仲介会社は手数料が高いから避けたい」と考えている方も安心してください。
共有持分や相続に関する不動産の悩みを抱えている方は、お気軽にご相談ください。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。