【2023年民法改正】相続と不動産に関する新ルールを徹底解説

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【2023年民法改正】相続と不動産に関する新ルールを徹底解説

【2023年民法改正】相続と不動産に関する新ルールを徹底解説

2023年4月1日に施行された民法改正で、相続と不動産に関わる法律は大きく変わりました。 この記事では、2023年の民法改正のうち、相続・不動産の法律の改正概要をわかりやすく解説しています。

遺産分割のルール見直しなど、影響の大きい改正ポイントもありますので、ぜひ最後までご覧ください。

民法改正で相続や不動産の何がどう変わった?

2023年4月1日からの民法改正で、相続や不動産の法律は何が変わるのでしょうか。

民法改正の目的・背景

2023年の民法改正の主な目的は、年々深刻化する所有者不明の土地問題の解決や改善に向けた土地利活用の円滑化にあります。

不動産関連の制度の見直しは、以下に対応したルール変更や権限変更等が行われました。

  • 所有者不明の土地を利活用しやすくする
  • 不動産の管理不全予防と、不全状況の改善

相続関連の制度は、遺産分割に10年を一区切りとする仕組みが導入されました。これにより、遺産が長期間放置され、所有者不明となる事態を防ぐ狙いがあります。

施行日はいつ?

2023年の民法改正の公布日、施行日は以下のとおりです。

  • 公布日:2021年4月28日
  • 施行日:2023年4月1日

公布日とは、法律が世の中に対し周知される日です。そのため実際に法律の効力が生じるのは施行日である2023年4月1日以降となります。

民法改正のポイント

2023年の民法改正では、相続・不動産は以下の制度や規定の見直しを行っています。

  • 共有制度
  • 財産管理制度
  • 相隣関係規定
  • 遺産分割制度

それでは、これらの制度・規定ごとに、主な改正ポイントを確認していきましょう。

各制度・規定ごとの改正ポイント

ここでは、民法改正によって具体的に何が変わったのかを、制度ごとに詳しく見ていきます。

1. 共有制度の見直し

共有制度とは、複数の人が共同で不動産や動産の権利を所有し、その利益や管理を共同で行う制度のことです。

今回の改正では、共有物の管理・処分に関するルールがより明確になりました。 具体的には、共有物への軽微変更を管理行為と明示し、持分の過半数で決定できるようになりました。また、所在不明の共有者や賛否の判断をしない共有者がいた際の運用ルールを定義し、共有物の管理者制度の創設と、共有物の使用に関する規律を整備しています。

共有制度の見直しに関しては、以下の記事にて詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。

2. 財産管理制度の見直し

次に財産管理制度の見直しについて、以下を解説します。

  • 財産管理制度とは
  • 改正の背景
  • 改正の概要とポイント
  • 改正のメリットとデメリット

財産管理制度とは

これまでの財産管理制度とは、財産の所有者(もしくは相続人)の所在が不明な場合、財産管理人(不在者財産管理人や相続財産管理人)が代わりに財産の管理や処分を行う制度です(民法第25条、第952条など)。

所有者が行方不明の場合は「不在者財産管理人」が、相続人の存否がはっきりしない場合や、相続人全員が相続放棄した場合には、「相続財産管理人」が選任されます。

両管理人は、家庭裁判所の許可を得れば財産の売却なども可能です。

改正の背景

所有者不明の土地を減らすためには、所有者が不明にならない仕組みとともに、所有者不明土地が管理不全に陥らない対策が必要です。

前述どおり、従来の民法でも財産管理制度の規定は存在します。 しかし“人”が主軸の制度で、管理人は所在や存否のはっきりしない“人”の代行を役割としています。財産には不動産も含まれますが、不動産を軸とした制度ではなく、人の代理としての側面が強いのが実情でした。

また、所有者が誰かわからない土地は、“人”の財産としては宙に浮いた状態になっていました。そのため、今回の改正が行われました。

改正の概要とポイント

今回の民法改正では、不動産(土地・建物)に特化した財産管理制度を創設しています。

概要や選任する方法、権限などは下図で確認してください。

【図:所有者不明土地・建物管理制度と管理不全土地・建物管理制度の概要】

改正によるメリット・デメリット

これまでの財産管理制度は、“人”を軸にしたもので、特定の人の全財産を管理していました。しかし、創設された所有者不明土地等管理制度では、不動産のみ管理を行います。

財産すべてを管理するのではなく、不動産とそれ以外、と棲み分けをして管理できるようになり、管理人の負担が少なくなります。

また、共有不動産の場合、“人”を軸の管理だと、一つの不動産に対して管理者が複数名いる状態となりますが、“不動産”軸の管理の場合は、一人の所有者不明土地(もしくは建物)管理人のみで管理できます。

3. 相隣関係規定の見直し

ここでは相隣関係規定の見直しについて、以下を解説します。

  • 相隣関係のルールとは
  • 改正の背景
  • 改正の概要とポイント
  • 改正によるメリットとデメリット

相隣関係のルールとは

相隣関係とは、隣り合った土地の所有者同士で通行や排水、境界などの問題を調整しあう関係です。

つまり、所有地が隣り合うため起きるさまざまな事柄が、お互いの間で問題にならないよう、ルール化されているのです。

今回、隣地使用権も見直されていますが、これは家の修繕を行う際、足場などを組むと多くの場合で隣地を使用せざるを得ないため、その取扱いが規定されています。

相隣関係規定ではそのほかにも、境界から窓は1メートル離れているべきなど細かな規定で、それぞれの住環境を守っているのです。

改正の背景

相隣関係規定の見直しの背景にも、所有者が不明となっている土地問題の存在が影響しています。

民法では隣地に面した塀や付近の建物について、修繕などを行う際に隣地の一部を使用できる権利を認めています。

しかし、無断で立ち入っての使用はできませんでした。使用を請求できる権利はあっても、所有者不明の土地では調整をする相手がおらず、許可を得ることが難しくなります。

また、ライフラインの引き込みや越境してくる枝の切除についても、対応に苦慮するケースがみられました。

このような背景が、今回の民法改正に反映されています。

相隣関係規定の改正の概要とポイント

それでは、相隣関係規定の改正概要を解説します。

相隣関係規定の改正概要①:隣地使用権

隣地を使用できる範囲を定めました。 その範囲内であれば、隣家の承諾がなくとも隣地を使用できます。

具体的には以下の通りです。

  • 境界またはその付近における障壁又は建物・工作物の築造・収去・修繕
  • 境界標の調査・境界に関する測量
  • 竹木の切り取り (民法第209条1項1号~3号)

これらを行う際、隣地所有者の承諾は必要ありませんが、目的・日時・場所を事前に通知する必要があります。

【図:隣地使用規定イメージ(改正前・改正後R5.4.1~)】
相隣関係規定の改正概要②:越境した枝の切除

隣地所有者との問題で、よく取り上げられていた越境枝の問題についても改正されています。 今後は、隣地から伸びてきた枝は基本的に自分で切除できます。

自分で切除が可能なのは、以下の場合です。

  • 竹木所有者に枝の切除を請求したにも関わらず相当期間内に切除しないとき
  • 竹木所有者が不明であるとき(所在不明を含む)
  • 急迫の事情があるとき 民法第233条1項~4項

隣地が共有地の場合も、共有者が単独で切除できる旨が明示されました。

ライフラインの設備・設置部分の改正については、図で確認してください。

【図:ライフラインの設備の設置・使用権】

改正によるメリットデメリット

これまで、規定で明示がなかったために、枝の越境であればその都度、隣地の所有者に切除を求める必要がありました。共有地については共有者全員の同意が必要で、切除すら難しい状況でしたが、改正後は共有者単独で切除が可能です。

隣地使用権やライフラインの設備についても、隣地所有者との関係が悪化しないよう配慮された改正と言えます。

4. 遺産分割ルールの見直し

最後に、相続制度改正にともなう遺産分割ルールの見直しについて以下の順で解説していきます。

  • 遺産分割ルールとは
  • 改正の背景
  • 改正の概要とポイント
  • 改正によるメリット・デメリット

それでは、まず遺産分割のルールについて確認しましょう。

遺産分割ルールとは

遺産の分け方(分割方法)には、以下の3種類があります。

  • 法定相続分
  • 指定相続分
  • 具体的相続分
遺産の分割方法①:法定相続分

法定相続分は、遺産の総額に対して、民法で定められた法定相続人ごとの割合を指します。民法で定義しているのは割合のみで、誰がどの財産を受け取るかなどは、遺産分割協議で決定します(民法第900条)。

遺産の分割方法②:指定相続分

指定相続分は、被相続人(故人)の遺言書に記載された相続人ごとの相続分を指します。遺言書がある場合は、法定相続分ではなく指定相続分で遺産分割を行います。

指定相続分は被相続人が自由に決められますが、民法では遺留分として相続の権利を保障しているため、遺留分に配慮した割合で遺産分割を行う必要があるでしょう(民法第1042条)。

遺産の分割方法③:具体的相続分

法定・指定相続分を前提に、個別の具体的な要素を加え修正した相続分を指します。具体的相続分の要素となるのは、遺贈などの特別受益と、寄与分があります。

寄与分とは、被相続人の生前に特別な貢献(介護等)をした相続人に対し、貢献度に応じた任意の額を遺産総額から先に確保し、相続分に還元する仕組みです(民法第903条、904条の2)。

改正の背景

遺産分割が滞ると、やがて所有者不明土地を発生させます。

例えば、遺産分割協議がまとまらず、長期間経つうちに次の相続が発生すると、相続関係が複雑化し、遺産分割が難しくなり土地の放置に繋がります。

また、改正前は遺産分割協議に期限がなく、決定できずに長期間放置しても、具体的相続分の割合で遺産分割を望む相続人には、なんら不利益がありませんでした。

これも、早期の遺産分割に繋がらない理由の一つとされており、今回の改正に繋がりました。

遺産分割ルール改正の概要とポイント

相続制度改正のうち、遺産分割に関するルール改正の概要とポイントは以下の通りです。

  • 具体的相続分による遺産分割に期限の設定(10年ルール)
  • 不動産が遺産共有かつ通常共有の場合の手続きの簡略化
  • 不明相続人の持分取得・譲渡制度
遺産分割ルール改正の概要とポイント①:具体的相続分による遺産分割に期限の設定(10年ルール)

今回大きな改正として、相続開始から10年を一つの区切りとし、遺産分割を促進する仕組みの導入を行っています。

原則として、相続開始から10年経過で、法定相続分または指定相続分を分割の基準とし、具体的相続分を適用しない、と明示されました(新民法第904条の3)。

ただし、以下の場合には引き続き、具体的相続分によって遺産分割が行われます。

  • 10年経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をした場合
  • 10年の期間満了前6ヶ月以内に、遺産の分割を請求できない事由があった場合、その事由が消滅してから6ヶ月以内に相続人が家庭裁判所に遺産分割請求した場合 (新民法第904条の3第1項1号、2号) ポイントとなるのは、この改正法は施行日(2023年4月1日)より前に発生した相続の遺産分割にも適用されることです。

経過措置として、5年間の猶予期間が設けられています。

【図:令和5年4月1日以前に相続が開始している場合の遺産分割の取扱い】

【参考】法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」

次に、遺産共有持分がある共有物の管理の見直しについてです。

遺産分割ルール改正の概要とポイント②:不動産が遺産共有かつ通常共有の場合の手続きの簡略化

これまでは、遺産共有かつ通常共有の場合、遺産共有持分の解消は遺産分割で、通常持分と遺産共有持分の解消は共有物分割で行うなど、それぞれ実施する必要がありました。

しかし、今回の改正で、不動産が遺産共有かつ通常共有の場合、相続開始から10年経過すれば、遺産共有関係の解消も共有物分割訴訟で実施が可能となりました(新民法258条の2第2項)。

この場合の遺産共有持分の解消は、法定相続分もしくは指定相続分が基準になります(新民法第898条2項)。

例)土地共有者A・BのうちBが死亡し、Cが土地の全部を取得するための手続の場合

  • 土地共有者A
  • 土地共有者B(死亡)
  • Bの相続人C
  • Bの相続人D

この設例を図解すると以下の通りです。

【図:上記の設例で、Cが土地の全部を取得するための手続】

【参考】法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」

また、以下で紹介するように所在不明の相続人は、今回の改正で共有関係の解消が可能になりました。

遺産分割ルール改正の概要とポイント③:不明相続人の持分取得・譲渡制度

相続人の中に所在不明な者がいると、遺産分割協議が進まず相続登記も遅れてしまいます。

そのため、相続開始から10年経過した場合、持分所得・譲渡制度により、所在不明相続人との共有関係が解消できるようになりました(新民法第262条の2第2項)。

この制度により、他の共有者は裁判所の許可を得て、所在不明者の不動産持分を、その価格に応じた金銭を供託することで取得したり、所在不明者の持分も含めて共有不動産全体を第三者に売却したりすることが可能になります。これにより、売却できずに放置されていた不動産などの管理がしやすくなるでしょう。

まとめ

センチュリー21中央プロパティーは、共有持分専門の不動産仲介会社です。

共有名義不動産に詳しい弁護士が常駐しているため、共有者とトラブルを抱えている場合や売却後のトラブルが不安な方にも、ご安心いただける体制が整備されております。

弁護士相談費用や仲介手数料など、売却にかかる諸費用は0円です。

  • 共有者と不仲で関係を解消したい
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  • 共有者が多すぎる
  • 固定資産税を負担したくない

共有名義不動産でお悩みの方は、一度当社へご相談ください。

この記事の監修者

塩谷 昌則

弁護士

エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍する不動産トラブル解決のスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。

特に共有不動産における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。相続や離婚による共有名義不動産のトラブル解決に従事してきた。

著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。

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