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離婚前に自己持分のみ売却はできるのか?|共有持分の売却・買取

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離婚前に自己持分のみ売却はできるのか?

離婚時に家を分ける時の基礎知識

夫婦が半分ずつお金を出し合ってローンを組みマイホームを購入、共同名義で所有していた場合(持分割合2分の1)、離婚するとはいえ家を真っ二つにするということは残念ながらできません。

そもそも夫婦で共同購入した家を全部売却するには、夫婦両者の同意が必要になります。夫は家から出ていくので売却したい、妻は住み続けるので売却したくない、と意見が割れると家全体を処分することはできないため、自己の共有持分のみを売却する他なくなります。また離婚前に持分を処理するのか、離婚後に持分を処理するのかでも大きく変わってきます。

離婚前に持分を処理する場合

夫A妻Bは共同で家を購入しました。Aが7割出資、Bが3割出資で持分比率は「A:B=7:3」というケースがあったとします。

この場合、Aは自己の持分(7割)に関しては、売却しても原則論的には問題ないはずですが、離婚で裁判になっている場合、話は変わってきます。裁判所は、Aが7割の持分を持っているとは認めてくれません。婚姻「後」に家を購入したということは、財産分与の対象に含まれるということになります。そのため、妻には潜在的に2分の1の持分があることになるのです。

財産分与が確定し共有物分割の訴えが認められると、共有物を現実に分割するか、売却してその代金を分け合う形で分割しますが、いずれにせよ住み続けることは難しくなります。

離婚前に処理する場合であっても引っ越し先を決めてからにした方がよいでしょう。離婚係争中の共有物分割請求の訴えは、まず離婚訴訟で解決すべきとの判例もあります。

♦参考判例(1):東京地方裁判所平成20年11月18日中間判決

被告は,夫婦共同財産についての清算は,財産分与の審判の申立て又は人事訴訟手続によるものであって,夫婦が共有持分を有する共有財産がある場合にも共有物分割請求訴訟を提起することは許されないと主張するが,そのように解すべき法律上の根拠はなく,被告の主張は採用することができない。

♦参考判例(2)東京高裁平成26年8月21日判決

「民法258条に基づく共有者の他の共有者に対する共有物分割権の行使が権利の濫用に当たるか否かは、当該共有関係の目的、性質、当該共有者間の身分関係及び権利義務関係等を考察した上、共有物分割権の行使が実現されることによって行使者が受ける利益と行使される者が受ける不利益等の客観的事情のほか、共有物分割を求める者の意図とこれを拒む者の意図等の主観的事情をも考慮して判断するのが相当であり(最高裁判所平成7年3月28日第三小法廷判決・裁判集民事174号903頁参照)、これらの諸事情を総合考慮して、その共有物分割権の行使の実現が著しく不合理であり、行使される者にとって甚だ酷であると認められる場合には権利濫用として許されないと解するのが相当である」

離婚後に持分を処理する場合

既に離婚が成立している場合、財産分与も終了している=持分も確定しているため、自己の持分を売却することも、共有物分割を求めることも問題なく行うことができます。

しかし共同名義の不動産全部を売却したいのであれば相手方の同意も必要になります。またリフォームや改築をして資産運用しようと思っても、相手方の同意がなければできない場合もあります(持分比率による)。

また相続が発生してしまった場合、相手方の共有持分はその相続人に相続されるため関係者が増えます。いざ売却や運用をしたいと思っても全員に同意を得るのが難しくなる可能性が高くなるのです。

共有名義から単独名義に切り替える方法

夫婦が共同して購入した不動産に関して、通常はローンを組んでいると思いますが、離婚後その名義を共有名義から単独名義に変更したい場合、どのようにしたらよいのでしょうか。

住宅ローンの支払いがまだ残っている場合は、ローンを借りている先の金融機関からの承諾がなければ、変更することはできませんが、承諾があった場合は下記の方法で変更することができます。

1. 住宅ローンを単独名義に変更

住み続ける夫婦の一方のみがローンを支払う形で、単独名義にする方法です。こちらは、残債と支払い能力を見て判断します。2人で支払うよりも1人で支払う方が金融機関にとってのリスクは高くなるので、その審査は厳しくなります。

2. 住宅ローンを借り換え

※1、2が認められない場合、連帯保証人や連帯債務者を加えることで、単独名義にすることができる可能性もあります。

  • 連帯保証人:主債務者が支払わなければ、代わりにその主債務を支払う保証人のこと
  • 連帯債務者:債務者と連帯して債務を負う者

夫婦で自宅を購入する際は、資金調達のため夫婦で共同して購入するケースも多いことでしょう。しかし離婚になってしまった場合、共同所有特有のトラブルに見舞われてしまうことがあるかもしれません。

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

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