共有名義不動産の建て替えや取り壊しができる3つの条件とは?
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共有名義不動産の建て替えや取り壊しができる3つの条件とは?

共有名義不動産の建て替えや取り壊しができる3つの条件とは?

目次

共有名義の不動産は、建て替えや取り壊しを自由に進められるわけではありません。

たとえ自分が居住していても、他の共有者の同意がなければ勝手に工事を始めることはできず、損害賠償や法的トラブルに発展するリスクもあります。

この記事では、共有不動産の建て替え・取り壊しを進めるうえで最低限押さえておきたい「3つの基本条件」をわかりやすく解説します。

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共有名義不動産の建て替え・取り壊しができる3つの条件

共有名義の不動産を建て替えたり取り壊したりするには、法的なルールや実務上の条件を満たす必要があります。

共有者の一人が勝手に取り壊すと、損害賠償を請求されたり、刑事責任を問われたりする可能性もあるため、慎重な対応が求められます。

以下の3つの条件を満たしていれば、共有不動産の建て替え・取り壊しは可能です。

① 共有者全員の同意を得ている

建物の建て替え・取り壊しといった「現状を大きく変える行為」には、共有者全員の同意が必要です(民法第251条「変更」)。

たとえ自分が居住している不動産であっても、単独の意思で勝手に工事を進めることはできません。

また、口頭での同意はトラブルの元です。

「建て替え・取り壊しに関する合意書」を作成し、工事内容、費用負担の割合、新築後の名義など、すべての取り決めを明記した上で、共有者全員の署名・押印をもらいましょう。

共有者の中に認知症や所在不明の共有者がいる場合は、成年後見人の選任や不在者財産管理人の手続きなど、家庭裁判所を通じた対応が必要になります。

② 住宅ローンがある場合、金融機関の承諾を得ている

建物に住宅ローンや抵当権が設定されている場合は、たとえ共有者全員が同意していたとしても、勝手に取り壊すことはできません。

理由は、建物が担保になっているからです。

  • ローン完済前に取り壊すには、金融機関の承諾が必要
  • 建て替え後の建物に対する新たな担保設定(抵当権)が条件になるケースも多い

ローンを完済している場合は、抵当権が抹消されていれば、金融機関の承諾は不要です。

勝手に解体すると契約違反となり、一括返済を求められるリスクもあります。

まずはローンを組んでいる金融機関に事前相談し、必要な手続きを確認しましょう。

③ 建物の倒壊など緊急性を要する場合

原則は全員の同意が必要ですが、例外的に、建物の老朽化が進み、倒壊の危険性があるなど、緊急で建物を守る必要がある場合は、必ずしも全員の同意を待たずに取り壊しを進められる可能性があります。

これは、民法上の「保存行為」(共有物の現状を維持するために必要な行為)として解釈されるためです。保存行為は、他の共有者の同意がなくても単独で行うことが許されています(民法第252条)。

例えば、以下のようなケースです。

  • 台風や地震などで建物が傾いていて倒壊の危険がある
  • 建物が老朽化し、周囲の住人や通行人の安全を脅かす状態にある

ただし、緊急性を自己判断で決めて行動すると、後から損害賠償の対象になることもあります。

建築士や行政の専門家による調査報告をもとに、正当性を証明できる準備をしておきましょう。

共有名義不動産の建て替え・取り壊しの注意点

共有名義の不動産を建て替え・取り壊しする際には、単に同意を得ればよいというだけではなく、法務・税務・登記・費用負担といった複数の観点から注意が必要です。

以下の4つのポイントを押さえておくことで、想定外のトラブルや余計な出費を避けることができます。

  • ①建物が未登記の場合も、勝手に壊してはいけない
  • ②固定資産税の軽減措置を受けたいなら解体時期に注意
  • ③土地・建物の所有者が異なる場合に注意
  • ④費用負担は「持分割合」で按分が原則

① 建物が未登記の場合も、勝手に壊してはいけない

建物が未登記(登記簿に記録がない状態)であっても、建物が実際に存在し、共有名義で所有されている事実は変わりません。

同意の原則は不変: 登記の有無にかかわらず、取り壊しは「変更行為」にあたるため、共有者全員の同意が必要です。

未登記建物だからと言って同意なく取り壊しを強行した場合、他の共有者から不法行為として訴えられ、損害賠償請求を受ける可能性があります。

取り壊しを行う際は、先に所有権保存登記などを行い、共有者全員の名義を確定させた上で、建物滅失登記を行うのが正式な手続きです。

② 固定資産税の軽減措置を受けたいなら解体時期に注意

固定資産税は、毎年1月1日時点の土地や建物の状況に基づいて課税されます。

住宅が建っている土地(住宅用地)には、固定資産税が最大で1/6に軽減される特例措置が適用されています。

建物を取り壊して更地にした状態で1月1日を迎えると、その土地は住宅用地とは見なされず、特例措置が適用されなくなり、土地の固定資産税が約3~6倍に跳ね上がります。

例えば、1月1日に建物を解体し、その年の12月末までに建て替えを完了させることで、翌年の軽減措置を受けることができます。

③ 土地・建物の所有者が異なる場合に注意

共有名義不動産であっても、「土地はAさんとBさんの共有、建物はBさん単独所有」といったように、土地と建物の所有者が異なるケースがあります。

土地の所有者であっても、他人が所有する建物を勝手に取り壊す権限はありません。建物の所有権は建物所有者(単独または共有者全員)にあります。

建物の所有者が取り壊しや建て替えを拒み続け、土地の利用を妨げているというケースでは、土地所有者が法的手段をとることも可能です。

④ 費用負担は「持分割合」で按分が原則

建て替えや取り壊しにかかる費用(解体費用、新築費用、各種登記費用、税金など)は、共有者全員が負担するのが原則です。

費用は、それぞれの共有者が所有する持分割合に応じて按分して負担します。

例えば、持分割合が1/2ずつの場合、発生する費用負担も折半となります。

ただし、あくまで原則であり、共有者間の話し合いで「Aさんが費用全額を負担する代わりに、建て替え後の建物持分をAさんが多く持つ」といった異なる割合で合意することも可能です。

費用負担について合意した内容は、必ず書面(合意書)に明記し、いつまでに、いくらを、誰が支払うのかを明確にしておくことが重要です。

建て替えや取り壊しをトラブルなく進める手順

① 共有者全員から「同意」を得る

建て替え・取り壊しは、不動産の性質を大きく変える「変更行為」にあたるため、原則として全共有者の合意が必要です。(民法第251条)

もし共有者が認知症の場合は、家庭裁判所で「成年後見人」の選任手続きを行う必要があります。意思判断能力がない共有者の代わりに、法定代理人である後見人から有効な同意を得ましょう。

共有者の所在が不明の場合は、家庭裁判所で「不在者財産管理人」選任または「所在不明共有者持分取得」の申立てを行います。

裁判所の手続きを経て、所在不明者の持分を管理するか、適正価格で取得し、共有状態の解消を図りましょう。

② 必要に応じて住宅ローンや抵当権の確認・調整を行う

建物に住宅ローンや抵当権が設定されている場合は、金融機関の承諾を得る必要があります。

勝手に取り壊すと、契約違反でローンの一括返済を求められるリスクもあります。

また、建て替え後に再度融資を受ける場合、新たな抵当権の設定や与信審査が必要になるため、事前に銀行・信用金庫などの担当窓口へ相談しましょう。

③ 建物を取り壊して更地にする(解体工事)

共有者全員の合意と、必要な場合は金融機関の許可を得た上で、解体業者を選定し工事を行います。

解体工事にかかる費用は、事前に合意した通りに共有持分に応じて按分して負担するのが原則です。トラブル防止のため、費用の支払いについても記録を残しましょう。

④ 建物滅失登記の申請(解体から1カ月以内)

建物の取り壊しが完了したら、建物が物理的に存在しないことを法的に証明するため、法務局に建物滅失登記を申請します。

建物滅失登記は、建物が滅失した日から1カ月以内に行うことが義務付けられています。

この登記を怠ると、存在しない建物に固定資産税が課税され続けることになるため、忘れず申請が必要です。

申請手続きは、司法書士や土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

⑤ 建て替え工事を実施(共有名義の建物を建築)

更地になった土地に新しい建物を建築します。

共有名義で新しい建物を建てる場合は建築請負契約も、原則として共有者全員の名義で行うのが基本です。

建て替え費用も持分割合に応じて分担します。建て替え費用のためにローンを利用する場合は、新たな融資審査と抵当権設定が必要です。

⑥ 建物の登記(完成後1カ月以内)

新築建物が完成したら、建物の存在と所有権を公に示すために、以下の登記手続きを行います。

登記種類内容期限と目的
建物表題登記新築した建物の構造や床面積などを法務局に初めて申請する手続き。完成後1カ月以内に申請義務があります。この登記がないと売買や抵当権の設定ができません。
建物保存登記建物表題登記の後、建物の所有権が誰にあるかを登記簿に反映させる手続き。権利関係を明確にし、所有権を第三者に対して主張するために行います(司法書士が代理することが多い)。
抵当権設定登記建て替えのためにローンを組んだ場合、金融機関が担保を設定するための手続き。ローン実行と同時に行われます。

建て替え・取り壊し時に持分割合で按分すべき費用

共有名義不動産の建て替えや取り壊しを行う際、原則として共有者が持分割合に応じて按分して負担すべき主な費用は以下の通りです。

①解体・建築にかかる直接費用

解体費用(取り壊し費用)

既存の建物を更地にするための費用です。建物の構造(木造・鉄骨など)や面積によって金額が異なり、目安として200万円〜320万円程度を見積もります。

建て替え費用(新築工事費)

新しく建物を建築するために建築会社へ支払う工事費です。契約締結前に、共有者全員で費用負担の合意をし、支払者を明確にする必要があります。

地盤調査費・地盤改良費

新築前の地盤調査費用や、地盤が弱い場合に必要となる補強工事(地盤改良)の費用です。

②専門家への報酬と登記費用

建築関連の設計費・申請費

設計士や建築士への設計報酬、および行政へ提出する建築確認申請などの手続き費用です。

登記関連費用

建物の取り壊し時に必要な建物滅失登記、新築時に必要な建物表題登記や建物保存登記などの手続きにかかる費用です。

これらの手続きを専門家に依頼した場合の司法書士や土地家屋調査士への報酬も含まれます。

③行政手続き上の費用

建築確認申請や印紙代

建築確認申請料や、契約書等に必要な印紙代など、行政手続き上必要となる法定費用です。通常は建築業者が代行し、後から請求されます。

④仮住まい費用

建て替え期間中、既存の建物に居住していた共有者が一時的に転居する費用です。

原則は持分割合で按分すべきですが、実務上は「居住者一人が全額負担する」ケースも見られます。

公平性の観点から、事前に協議を行い、誰がどこまで負担するか明確に合意しておく必要があります。

建て替え・取り壊しに反対する共有者がいる場合の対処法

共有名義不動産の建て替えや取り壊しは、原則として全共有者の同意が必要です。

そのため、1人でも反対する共有者がいれば、勝手に工事を進めることはできません。

こうしたケースでは、話し合いでの合意が難しい場合に備えた法的手段や現実的な選択肢を検討する必要があります。

代表的な方法を2つご紹介します。

共有物分割請求で共有状態を解消する

共有者間の話し合い(協議)で共有状態の解消が難しい場合、最終手段として「共有物分割請求訴訟」を提起し、裁判所に解決を委ねることができます。

この訴訟の目的は、不動産の建て替えや取り壊しではなく、共有状態そのものを解消し、単独所有に戻すことにあります。

裁判所が以下のいずれかの方法で分割を命じます。

分割方法内容影響
現物分割不動産を物理的に切り分けて、各共有者の単独所有とする(土地の場合)。建物がある場合は困難。
代償分割特定の共有者(主に建て替えを望む側)が不動産全体を取得し、他の共有者(反対者)に対して持分の相当額を金銭で支払う。裁判所が適正価格を算定するため、買取価格で揉めにくい。
換価分割(競売)不動産全体を売却し、その売却代金を共有持分に応じて分配する。最も多く採用される手段。裁判所の管理下で売却されるため、市場価格より安くなることが多い。

裁判で共有状態が解消され、建て替えを望む側が単独所有権を得られれば、その後の取り壊しや建て替えは単独の意思で実行できるようになります。

ただし、訴訟には時間(数年)と費用がかかること、そして最終的に望まない価格で不動産全体が競売にかけられるリスクがあることを理解しておく必要があります。

持分の買取交渉を行う

裁判による強制的な解決を避けたい場合は、反対している共有者の持分を買い取る交渉を持ちかけることが現実的です。

ただし、買取価格で合意形成が難航するケースが多いのが現実です。

買取交渉を進める際は、不動産鑑定士などに依頼して適正な持分評価額を算定してもらい、その金額をベースに交渉を始めましょう。

有利に交渉を進めるためには、もし交渉が決裂した場合、最終的に共有物分割請求訴訟に進むことになり、裁判所による換価分割(競売)になると、市場価格よりも低い価格で売却されてしまうリスクがあることを冷静に伝え、「今のうちに買取に応じることのメリット」を理解してもらうことが重要です。

同意を得ずに工事を進めると損害賠償を請求される可能性も

建て替えや取り壊しは、不動産の性質を大きく変える「変更行為」(民法第251条)にあたり、共有者全員の同意が必要です。

この原則に反して、一部の共有者が独断で工事を強行した場合、それは他の共有者の所有権や共有権を侵害する行為と見なされます。

具体的には、民法第709条が定める「不法行為」に該当し、不利益を被った共有者は、工事を強行した共有者に対して以下の法的な措置を取ることができます。

①損害賠償請求

最も典型的なリスクが、他の共有者からの損害賠償請求です。

同意なく建物を壊された共有者は、建物が持っていた価値の喪失分(時価相当額)や、取り壊しによって生じた精神的損害(慰謝料)について、賠償を求めることができます。

同意なく新しい建物を建てられた場合、その新しい建物は不法に建築されたものと見なされます。

反対する共有者は、その建物を撤去し、土地を元の状態に戻すよう求める「建物収去土地明渡請求」を提起することが可能です。

②工事の差し止め請求

工事が始まってしまった場合でも、反対する共有者は裁判所に「共有物に対する妨害排除請求」として、工事の即時差し止めを求めることができます。

裁判所が差し止めを認めた場合、工事は中断せざるを得なくなり、工期の遅延による損害や、建設会社との契約解除・違約金といった新たな金銭的損害が発生します。

③法的な責任を負う可能性がある

同意を得ていない工事は、単なる共有者間のトラブルで終わらず、法廷闘争に発展します。

法的な証拠の重要性: 裁判では、口頭での「同意があった」という主張は通用しません。同意を得たことを証明できる書面(合意書、覚書)がない限り、工事を強行した側の敗訴となる可能性が極めて高いです。

建て替え・取り壊しは、必ず共有者全員の書面による明確な同意を得てから着手し、トラブルのリスクをゼロにすることが賢明です。

まとめ:共有持分の売却・トラブル相談はセンチュリー21中央プロパティー

共有名義の不動産を建て替えたり取り壊したりするには、共有者全員の同意が必要です。

一人でも反対者がいると、工事の進行は止まり、最悪の場合は裁判に発展することもあります。

同意なく無断で工事を進めれば、損害賠償や撤去請求、裁判所からの差し止め命令など、大きなトラブルや損失に繋がるリスクもあります。

そのため、計画の初期段階から法的な確認と共有者間の調整をしっかり行うことが重要です。

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この記事の監修者

塩谷 昌則

弁護士

エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍する不動産トラブル解決のスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。

特に共有不動産における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。相続や離婚による共有名義不動産のトラブル解決に従事してきた。

著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。

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