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囲繞地通行権とは?通行地役権との違いや注意点、トラブル事例

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囲繞地通行権とは?通行地役権との違いや注意点、トラブル事例

土地に関する権利の名前は耳馴染みがないものも多く、特に「囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)」は初めて聞いたという人も多いのではないでしょうか。この権利は特殊な土地の状況で発生し、場合によっては権利をめぐって予期せぬトラブルが起きることもあります。

この記事では、囲繞地通行権の基本を押さえつつ、どのような権利が認められているのか、どういったケースでトラブルが起き得るのかなどを解説します。

囲繞地(いにょうち)と袋地の関係とは

囲繞地通行権を正しく理解するには、袋地と囲繞地という少し特殊な土地のことを理解しておく必要があります。まずは袋地と囲繞地がどのようなものなのかを見ていきましょう。

袋地とは

袋地とは、他人の土地に囲まれているために直接公道に接していない土地のことです。袋地のような土地は、道路から直接アクセスできないことから「無道路地」と呼ばれることがあります。

また、袋地によっては河川や水路に遮られていたり、崖があり公道との間に大きな高低差があったりして公道に接していないケースもあります。このような土地は「準袋地」と呼ばれています。

袋地は建築基準法で定められた新たに家を建てるための基準を満たしていません。したがって袋地は「再建築不可物件」の一種です。

囲繞地とは

先述した袋地を取り囲んでいる土地のことを囲繞地といいます。囲繞地に使われている「繞」という漢字には、「かこむ」や「めぐる」といった意味があります。

袋地は周りを囲繞地に囲まれています。したがって、袋地から公道に出るには土地の位置関係上、囲繞地を通らないといけません。

囲繞地とは

囲繞地通行権とは

囲繞地通行権は法律で認められている通行権のため、囲繞地の所有者は、この囲繞地通行権を拒否することはできません。

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

引用元:民法第210条

そのため、囲繞地通行権を行使する場合、囲繞地所有者の許可や登記等は、必要ありません。

また、相続や売買で袋地の所有者が変更になった場合も、囲繞地通行権は新しい所有者に継承されます。

関連記事:共有持分の私道を含む不動産を購入するには?知っておきたい権利とトラブル事例を解説

囲繞地通行権と通行地役権の違い

囲繞地通行権とよく似た権利で、通行地役権というものがあります。しかし、囲繞地通行権と通行地役権は異なるものです。

2つの違いを簡単に表でまとめてみました。

囲繞地通行権通行地役権
土地所有者の合意の必要性不要必要
通行料の必要性原則必要任意で設定
期間の定めなし任意で設定
通行範囲必要最小限任意で設定
登記の必要性不要必要

ここでは、2つの権利がどのような点で異なっているのかを詳しく解説します。

土地所有者の合意の必要性

一方、通行地役権は、通行する土地の所有者の合意を得る必要があります。合意に加えて、両者の間で「地役権設定契約」を締結することも必要です。

通行料の必要性

囲繞地通行権と通行地役権の間には、通行料の発生条件や法的根拠において違いがあります。

囲繞地通行権では、袋地の所有者が囲繞地を通行する際、囲繞地の所有者に対して通行料を支払う必要があります。この通行料は民法により定められており、囲繞地の所有者への補償の意味合いで支払われます。

一方で、通行地役権の場合、通行料の有無は契約によって定められます。通行地役権を設定する際の契約条件に基づき、通行する土地の所有者が通行料の支払いを求める場合には通行料が発生しますが、無償で通行を許可する契約を結んだ場合には、通行料は発生しません。

つまり、通行地役権では通行料に関する取り決めを所有者間で自由に設定できるということになります。

期間の定め

囲繞地通行権には期間の定めがありません。
期間が決まっていないのは、囲繞地通行権が袋地に住む人にとって外部への通路を確保する基本的な権利であると定められているからです。

一方で、通行地役権は原則として期間が定められています。通行地役権は契約を基に成立する権利であり、その契約内容に従って使用期間が設定されます。したがって、通行地役権は、定められた契約期間内のみ権利を行使することが許可されるのです。

このように、通行地役権の期間は当事者間の合意に基づいて決まります。

通行範囲

囲繞地通行権は、通路の幅が「必要最小限の幅」に制限されています。
これは、通行権を行使する側が目的を達成するには最小限度の幅があれば十分と判断されているからです。そのため、袋地を所有する人の生活に支障をきたさない範囲の幅が通行範囲として認められます。
具体的には2メートル程度が設定されることが多いです。これは建築基準法が定義する接道義務に用いられる道路の幅が2メートル程度で、同じ基準を採用していると言われています。

一方、通行地役権で認められる通路の幅は契約内容によって決まります。つまり、合意した契約に基づいて、自由に幅を設定できるということです。

登記の必要性

囲繞地通行権は法律で定められている権利のため、特に登記を行う必要はありません。
囲繞地通行権は民法第210条で規定されており、袋地の所有者が囲繞地を通行する権利を持つことが法的に保障されています。

一方、通行地役権は契約によって成り立つ権利のため、契約が成立した後に登記をする必要があります。もし地役権設定登記を行わなかった場合、その権利は第三者に証明することができなくなります。登記を行わないと、土地の売却時に第三者に対して通行権を主張することができません。

囲繞地通行権の注意点

囲繞地通行権は、袋地の所有権者にとって、有難い権利ではありますが、以下の点で注意が必要です。

  • 通行範囲は最小限
  • 通行料の支払いが必要
  • 原則、通行は徒歩のみ(自動車はNG)

①通行範囲は最小限

極端に言えば、公道にさえ出られればOKという考えですので、必要以上に道路の幅を広げるように、囲繞地の所有者へ求めたりすることはできません。

囲繞地の所有者に損失が発生しないように、袋地の所有者は配慮することが義務付けられています。

②通行料の支払いが必要

袋地の所有権者は、囲繞地の所有者に対して通行料を支払うことが法律で定められています。

金額は決められていないため、袋地・囲繞地の所有者双方が話し合って決めることが一般的です。

ただし、以下のようなケースでは、通行料の支払いは不要です。

  • 前所有者のときから通行料無料だったケース
  • 分筆や譲渡により袋地になったケース
  • 共有物の分割によって袋地になったケース
  • 競売にかけられて袋地になったケース

③原則、通行は徒歩のみ(自動車はNG)

囲繞地の所有者は、必要以上に道路幅を広げる必要がない旨、先述しました。
もし、自動車の通行を認めてしまうと、道路幅の確保や交通事故のリスクなどの問題が発生します。

そのため、原則囲繞地通行が認められるのは、徒歩での通行のみとなります。
ただし、自動車での通行が認められた判例もあります。

判例によると、最低限、以下の条件を満たした場合などに特別に認められるようです。

  • 自動車通行の必要性が極めて高いこと
  • 囲繞地所有者が不利益を被らないこと

囲繞地通行権のトラブル事例

囲繞地通行権は、トラブルになりやすい側面を持っています。
具体的なトラブル事例を紹介します。

①建物を第三者に貸しているケース

Aさんは、普段から囲繞地通行権を行使していました。
しかし、建物を第三者に貸すことになり、それを囲繞地の所有者に伝えたところ、「第三者の囲繞地通行権は認めない」と主張し、トラブルに発展しました。

このトラブルの結論は、建物の賃借人にも囲繞地通行権は認められます。

②前所有者との契約が曖昧なケース

前所有者から、建物を購入する際「無償で囲繞地通行権を行使できる」と聞いていたにも関わらず、引っ越し後に囲繞地所有者に確認したところ、「そんな契約はしていない。通行料を払え。」と主張されたケースです。

このトラブルの結論は、前所有者のときから、通行料が無償であったことが証明できる場合は、新たな袋地所有者は、通行料を支払う必要がありません。

囲繞地通行権のことで悩んだときは

今回は囲繞地通行権について解説しました。囲繞地通行権は民法の第210条で定められているため、囲繞地の所有者が拒否することはできません。この囲繞地通行権が存在することから、囲繞地は売却先が見つかりづらいケースも多いです。

中央プロパティーは、こうした土地の売却相談も受け付けています。土地に関する各分野の専門家と連携できる体制が整っていますので、トラブル解決や売却に関する手続きをサポートいたします。

土地売却に関するお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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