\ 無料相談・査定をする /

価格賠償とは|用語集

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:1428

価格賠償とは

共有物を分割する方法のひとつで、一部価格賠償と全面的価格賠償に分類されます。

1. 一部価格賠償による分割

共有者の取得する現物の価格に過不足をきたすときは、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を払わせ、過不足の調整をすることになります。

例えば土地を分筆するとしても場所によって、土地の価格が異なる場合も考えられます(道路に面していない部分を分筆された等)。その場合は不足部分について価格での賠償をしてもらい、各共有者が公平に分割分を取得できるよう調整しましょう。

♦判例:最大判昭62年4月22日

「…民法二五八条による共有物分割の方法について…現物分割をするに当たつては、当該共有物の性質・形状・位置又は分割後の管理・利用の便等を考慮すべきであるから、持分の価格に応じた分割をするとしても、なお共有者の取得する現物の価格に過不足を来す事態の生じることは避け難いところであり、このような場合には、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることも現物分割の一態様として許されるものというべきであり…分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも、現物分割の方法として許されるものというべき…かかる場合においても…過不足の調整をすることが許されるものと解すべきである。」

できるだけ共有状態、共同名義の状態を各共有者に平等になるよう共有物の性質を考慮し調整し、解消させる方向に判例は働いています。

2. 全面的価格賠償

共有者の一人が単独所有権を取得し、他の者がその者から価格の支払いを受ける場合です。下記判例では、Aさんが土地全部につき単独の所有権を取得し、BCの持分価格を賠償することが認められています。

♦参考判例①最判平8年10月31日

「…裁判所としては、現物分割をするに当たって、持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることができる(一部価格賠償可)…のみならず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。」

価格賠償にあたって考慮すべき内容

全面的価格賠償での共有解消を行うには、

  1.  特定の共有者が取得する相当な理由があり
  2. 適正な買取価格の提示がなされ
  3. (1)の取得共有者に支払い能力がある

ことが要件として必要とされています。

♦参考判例:最判平8年10月31日判決

判旨:「①当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、その②価格が適正に評価され、③当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情」

1 、2の要件を満たしても支払い能力が無ければ全面的価格賠償による共有物の分割は認められません。認められるためには支払い能力があることを具体的に証明する必要があります。

ここでいう「証明」とは、「通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるもの」であることを必要とし、かつ、それで足りるとされています。

預金通帳を証拠として提出すれば客観的な証拠になることは間違いありません。他に証券証書等支払い能力があることを示せれば、そちらでも足りると考えられます。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら