建物の共有持分権の過半数で締結された。
賃貸借契約について|用語集

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建物の共有持分権の過半数で締結された。
賃貸借契約について

質問A(3分の1)、B(3分の2)は甲建物をしていました。BがCに対して同建物を単独で賃貸しました。
Aさんの同意が無くてもよいのでしょうか。

A(3分の1)、B(3分の2)は甲建物を。BがCに対して同建物を単独で賃貸した。 Aさんの同意が無くてもよいのか?の図

「原則」同意がいります。

解説

はじめに

民法251条:「各者は、他の者の同意を得なければ、物に変更を加えることができない。」

民法252条:「物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各者のの価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各者がすることができる。」

とあります。整理すると、

  • 物に変更⇒全員の同意
  • 物の管理⇒者の価格の過半数
  • 物の保存行為⇒各者が単独で可

今回の賃貸借契約が上記のどれに当たるかによって変わって来るので、検討してみましょう。

変更か管理か

  1. 借地借家法の適用有⇒変更行為
  2. 短期賃貸借の期間を上回る⇒変更行為
    ※短期賃貸借:家屋3年、土地5年
  3. 1、2以外が管理行為

となっています。つまり、短い賃貸借契約であれば、原則管理行為となり、の過半数で決することになりますが、長期の賃貸借契約になると、もはや処分行為と同等とされ、全員の同意がいるとされています。本問でも、賃貸借契約の期間が非常に重要なポイントとなります。
ただ、期間だけで変更行為か、管理行為かが決まるわけではありません。期間が長期に渡り原則変更行為に当たるような場合でも、

の過半数によって決することが不相当とは言えない事情がある場合においては賃貸借契約の締結は、管理行為に属すると解するというべきである。」(♦参考判例東京地判 平元年4月11日)

の過半数によって決することが不相当とは言えない事情がある場合」とは、具体的な賃貸借契約の目的やその用途によって個別に判断することになりますが、従前の行使態様の変化が少なければ、不相当とは言えない場合に当たると考えられます。

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その他と賃貸関連のまとめ

不動産の賃貸借契約を解除する場合

  • 契約解除の『意思決定』⇒管理行為⇒過半数の同意
  • 契約解除の『通知』⇒単独で可

となります。

民法544条:「当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除はその全員から又はその全員に対してのみ、することができる。」

とありますが、

民法252条「物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各者のの価格に従い、その過半数で決する。…」

とあります。民法544条では「全員で」、とあり、民法252条では「過半数で」とありますが、どのような関係になるのでしょうか。全員で解除をしなければならないのか、の過半数さえあれば解除ができるのか、ということです。

♦最高裁判例 昭和39年02月25日
判旨:「者が物を目的とする貸借契約を解除することは民法二五二条にいう「物ノ管理ニ関スル事項」に該当し、右貸借契約の解除については民法五四四条一項の規定の適用が排除されると解すべきことは所論のとおりであるから、…物を目的とする貸借契約の解除は民法二五二条但書にいう保存行為にあたらず、同条本文の適用を受ける管理行為と解するのが相当であり…」

としています。まとめると、

  • 者が物を賃貸しているのを解除する場合は、全員でする必要はない(民法544条1項は適用されない)
  • 者が物を賃貸しているのを解除する場合は、管理行為過半数で決する

ということになります。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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