遺留分減殺請求と遺留分の放棄|用語集

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遺留分減殺請求と遺留分の放棄

ご相談内容

遺留分減殺請求と遺留分の放棄って何ですか?

遺留分及び遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)とは

1. 遺留分とは

「一定の相続人のために、相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合・権利のことをいいます。」

相続人と遺留文割合を表した表

2. 遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)とは

「遺留分を侵害された者が贈与又は遺贈を受けた者に対し、相続財産に属する不動産や金銭などの返還を請求すること」

  • 以前は遺留分減殺請求という制度でしたが、2019年7月1日に遺留分侵害額請求に改正され新制度となりました。両者の違いですが、遺留分減殺請求の時代は現物を返還するよう求めるのが原則でしたが、遺留分侵害額請求については、原則として金銭(現金)の支払いを請求することができるようになっています。
  • 2019年6月30日以前に発生した相続⇒旧法の規定による遺留分制度(減殺請求)が適用されます。
  • 2019年7月1日以後に発生した相続⇒新法の規定による遺留分制度(侵害額請求)が適用されます。

遺留分の放棄・遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)について

1. 遺留分の放棄については民法にこのような条文が存在します。

(遺留分の放棄)

民法1043条1項:「相続の開始における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。」

同条2項:「共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。」

相続の開始「前」における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受ければ、放棄ができます。逆を言えば、相続開始「後」であれば、相続人の自らの意思で遺留分も放棄することができます。

通常相続人のうちが相続放棄をすると、他の相続人の相続分は増えますが、遺留分についてはそのようなことはありません。兄が遺留分を放棄したからと言って、弟がその兄の遺留分までを得られないことになります。それを明記しているのが民法1043条2項になります。

相続の開始「前」における遺留分の放棄について

相続開始前の遺留分の放棄については、家庭裁判所の許可がいるとありますが、申請すれば必ず認められるわけではありません。

以下の3つを満たさなければ家庭裁判所は遺留分の放棄の許可をしてくれません。

  1. 遺留分の放棄が本人の自由意志に基づく
  2. 遺留分放棄に合理的な理由と必要性の存在
  3. 遺留分放棄に対して、恩恵(見返り)があること

実際に審判の申したてた書類には、住所などの必要事項に加えて上記の趣旨を書く欄があります。
参考:家事審判申立書(裁判所)
また、遺留分の放棄が認められてしまうと、原則撤回はできませんので、放棄をする際はよく考えてからにしましょう。

  • なお、合理的な理由があれば撤回が認められる場合はあります。

2. 遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)

(遺贈又は贈与の減殺請求)
民法1031条:「遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。」

これは遺留分が侵害されている場合にその侵害されている「遺留分を金銭で返せ!」(誤植の修正)ということができる権利です。例えば、亡き父が愛人に不動産を遺言で相続させたとします。その土地の価値は1,000万円ですが、具体的に遺留分の侵害は500万円という場合に、その500万円を相続人は愛人に対して金銭で支払えと主張することができます。

  • 旧遺留分減殺請求では、金銭ではなく、現実にその不動産を返せという制度でした。
(減殺請求権の期間の制限)
民法1042条:「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」

何も権利を行使しないと権利は消滅してしまうので、注意が必要です。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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