遺産共有と共有物分割の新ルールを徹底解説!放置された不動産問題の解決策

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遺産共有と共有物分割の新ルールを徹底解説!放置された不動産問題の解決策

遺産共有と共有物分割の新ルールを徹底解説!放置された不動産問題の解決策

2023年4月1日に施行された改正民法により、相続に関するルールが大きく変更されました。

特に、相続した不動産が複数の相続人の「遺産共有」状態になることで生じていた問題に対し、新たな解決策が示されています。

本記事では、相続を控えている方や、すでに遺産分割でお悩みの方に向けて、民法改正による「共有物分割」の新制度をわかりやすく解説します。

新制度の概要や相続人へのメリット、注意点を正しく理解し、円満な相続を実現するための参考にしてください。

2023年民法改正で遺産分割ルールが変更!その背景と目的

今回の民法改正では、相続時の遺産分割に関するルールが見直されました。

これは、相続人にとってメリットがある一方で、知らなければ損をしてしまう可能性のある重要な変更です。

まずは、なぜ法改正が必要だったのか、その背景と目的から確認しましょう。

放置される不動産…これまでの「遺産共有」が抱える問題点

相続人が複数いる場合、被相続人の遺産(土地、建物、預貯金など)は、まず相続人全員の「遺産共有」の状態になります。
遺産共有とは、遺産を分割するまでの間、複数の相続人がそれぞれの持分に応じて共同で所有している状態を指します。

この遺産共有で長年問題とされてきたのが、各相続人の権利がお互いを制約し、遺産の管理や処分がスムーズに進まない点です。 

例えば、不動産を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、一人でも反対したり、連絡がつかなかったりすると、活用も売却もできず放置されてしまいます。

遺産共有関係の状態

さらに、遺産分割をしないまま年月が経つと、共有者が亡くなって新たな相続が発生し(二次相続、三次相続)、ネズミ算式に共有者が増えて権利関係が複雑化します。
こうなると、ますます遺産の管理や処分が困難になっていました。

法改正が目指すのは「所有者不明土地問題」の解消

遺産分割がされずに不動産が放置され、共有者の一部と連絡が取れなくなることは、全国で深刻化する「所有者不明土地問題」の大きな原因となっていました。
所有者がわからない土地は、公共事業や災害復旧の妨げになるなど、社会全体に悪影響を及ぼします。

このような背景から、遺産共有の状態が長期間続くことを防ぎ、円滑な遺産分割を促すことを目的として、民法改正によるルールの見直しが行われたのです。

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遺産分割の新ルール!改正で変わる3つの重要ポイント

2023年4月1日から、遺産分割に関するルールが新しくなりました。
主な変更点は以下の3つです。

  1. 遺産分割に「10年」の期限が設けられた(10年ルール)
  2. 不動産の共有物分割手続きが合理化された
  3. 所在不明の相続人がいる場合の対応が容易になった

ポイント①:遺産分割に「10年」の期限が設けられた(10年ルール)

新民法では、相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割は、原則として「法定相続分」または「指定相続分」で行うというルールが設けられました。
これは実質的に、遺産分割の話し合いに「10年」という時間的な区切りを設けたことになります。

これまでは遺産分割に期間の制限がなかったため、話し合いがまとまらずに長期間放置されるケースが多くありました。 

この「10年ルール」は、そうした遺産共有関係の長期化を防ぎ、早期の解消を促すことを目的としています。 

なお、このルールによって一部の相続人が受け取れる財産が減ってしまう可能性があります。
詳しくは後述します。

ポイント②:不動産の共有物分割手続きが合理化された

これまでは、遺産共有状態の不動産を解消するには、まず家庭裁判所で「遺産分割」の手続きを行い、それでも解決しない場合に地方裁判所で「共有物分割訴訟」を行う必要があり、手続きが二段階で複雑でした。

しかし新民法では、相続開始から10年が経過している場合に限り、地方裁判所の「共有物分割訴訟」で一括して共有関係の解消を求められるようになりました。
これにより、共有状態の不動産を単独所有に変更したり、売却して金銭で分けたりする手続きが、以前よりも迅速かつ合理的に進められるようになります。

遺産共有と通常共有が併存している場合

ただし、手続きが合理化されたとはいえ、共有物分割訴訟は法的な専門知識を要する複雑な手続きです。

特に他の共有者との関係がこじれている場合、ご自身だけで進めるのは精神的な負担も大きいでしょう。

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ポイント③:所在不明の相続人がいる場合の対応が容易になった

相続人の中に行方不明者がいると、遺産分割協議ができず、不動産の売却もできないという問題がありました。

新民法では、相続開始から10年が経過した場合、判所の許可を得ることで、所在不明の共有者の持分を他の共有者が取得したり、第三者に譲渡したりすることが可能になりました。
この際、所在不明者の持分価格に相当する金銭を供託する必要があります。

この改正により、共有者の一部が所在不明であるために活用できなかった不動産の管理や売却がしやすくなるでしょう。

新ルールは相続人にどう影響する?メリットと注意点

では、これらの新ルールは、実際に相続する私たちにどのような影響を与えるのでしょうか。
メリットと注意点を具体的に見ていきましょう。

【相続人にとってのメリット】塩漬け不動産問題が解決する

民法改正による最大のメリットは、法定相続分を基準とした円滑な遺産分割が進みやすくなることです。 

10年という期限が設けられたことで、遺産分割の話し合いを先延ばしにできなくなり、結果的に「塩漬け」になっていた共有不動産の放置が少なくなるでしょう。

また、共有物分割の手続きが合理化されたことで、共有関係の解消にかかる時間や労力が軽減され、問題を早期に解決できる可能性が高まります。

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【改正による注意点】相続開始から10年で「特別受益・寄与分」の主張が原則できなくなる

民法改正で最も注意すべき点は、相続開始から10年以内に遺産分割をしないと、一部の相続人が取得できる財産額が減ってしまう可能性があることです。

遺産分割では、特定の相続人が被相続人から受けた生前贈与(特別受益)や、被相続人の財産の維持・増加に貢献したこと(寄与分)を考慮して、各相続人の取得分を調整するのが一般的です。

しかし、「10年ルール」により、相続開始から10年を過ぎると、原則としてこの「特別受益」と「寄与分」の主張ができなくなります。
その結果、法定相続分どおりの分割となり、本来であればより多くの遺産を受け取れるはずだった相続人にとっては、大きなデメリットになる可能性があります。

これまで以上に、早い段階から遺産分割協議を始める必要があると言えるでしょう。

なお、このルールは2023年4月1日より前に開始した相続にも適用されますが、少なくとも2028年3月31日までは5年間の猶予期間が設けられています。

遺産分割の期限に関する経過措置

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よくある遺産分割トラブルと「新ルール」による解決策

新ルールの重要性を理解するために、実際の遺産分割でどのようなトラブルが起きやすいのか、そして新ルールがどう役立つのかを見ていきましょう。

なぜ揉める?遺産分割協議がトラブルになりやすい理由

遺産分割協議がトラブルになりやすい最大の理由は、相続財産を各相続人の希望通り、かつ公平に分割するのが困難だからです。

特に、預貯金のように簡単に分割できる財産だけでなく、不動産のように物理的に分けられない財産が含まれている場合に揉めやすくなります。
例えば、相続人が長男と次男の2人で、遺産が「実家の土地建物(評価額3,000万円)」と「預貯金500万円」だけだった場合、公平に分けるのは非常に難しく、トラブルの原因になりやすいのです。

また、相続人全員で協議を行う必要があるため、遠方に住んでいたり、関係が疎遠だったりする相続人がいると、話し合いを進めること自体が困難になります。

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よくあるトラブル事例(現物分割・換価分割・代償分割)

遺産分割には、主に以下の3つの方法があり、それぞれで特有のトラブルが発生しがちです。

  1. 現物分割(げんぶつぶんかつ) 
  2. 換価分割(かんかぶんかつ)
  3. 代償分割(だいしょうぶんかつ) 

トラブル事例①:現物分割(げんぶつぶんかつ)の場合

現物分割は、財産をそのままの形で分ける方法です(例:土地は長男、預金は次男)。 

しかし、不動産のように物理的に分けられない財産があると、誰が何を取得するかで不公平感が生まれ、争いになりやすいという問題があります。

トラブル事例②:換価分割(かんかぶんかつ)の場合

換価分割は、不動産などを売却して現金化し、その現金を相続分に応じて分ける方法です。 

この場合、相続人の一人が「思い出のある家だから売りたくない」と反対したり、希望する売却価格で合意できなかったりすると、手続きが進まなくなるトラブルが起こりがちです。

トラブル事例③:代償分割(だいしょうぶんかつ)の場合

代償分割は、相続人の一人が不動産などを取得する代わりに、他の相続人に対して相続分に相当する現金(代償金)を支払う方法です。 

この方法では、不動産を取得する相続人に、他の相続人へ支払うための十分な資力(現金)がない場合にトラブルとなります。

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新ルールはこじれた共有関係の解消に繋がる

これまで見てきたようなトラブルによって遺産分割協議がまとまらず、不動産が共有状態のまま放置されてしまうケースは少なくありませんでした。

今回の法改正は、まさにこのような「こじれてしまった共有関係」を解消するための後押しとなります。
「10年」という期限が設定されたことで、協議を進める動機付けになりますし、手続きの合理化によって、訴訟を通じた最終的な解決も図りやすくなりました。

もし、長年解決できなかった共有不動産の問題でお悩みであれば、今回の法改正は状況を打開する良い機会となるかもしれません。

まとめ

2023年4月から施行されている「遺産共有」と「共有物分割」の新ルールについて、押さえておくべきポイントは以下の通りです。

  • ポイント①:法改正の目的は「所有者不明土地問題」の解決
  • ポイント②:遺産分割に「10年の期限」が設けられた
  • ポイント③:共有物分割の手続きがシンプルになった
  • ポイント④:所在不明の相続人がいても手続きを進めやすくなった
  • ポイント⑤:10年経過で「特別受益・寄与分」の主張が困難になる

この新ルールを正しく理解し、早めに遺産分割に着手することが、ご自身の権利を守り、相続人同士の無用なトラブルを避ける鍵となります。

しかし、法改正のポイントは専門的で、「自分の場合はどうなるのか?」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
そのようなときは、一人で抱え込まずに専門家へ相談することが解決への一番の近道です。

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この記事の監修者

塩谷 昌則

弁護士

エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍する不動産トラブル解決のスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。

特に共有不動産における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。相続や離婚による共有名義不動産のトラブル解決に従事してきた。

著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。

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