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10. 共有名義の収益不動産
賃料を独り占めされた場合の対応|共有持分の基礎知識

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10. 共有名義の収益不動産
賃料を独り占めされた場合の対応

賃料を独り占めされた場合の対応のイメージ

前回は、不動産の共有名義を解消する「7つの方法」の概要を取り上げました。今回は、共有名義の収益不動産で、賃料を独り占めされた場合の対処法を見ていきます。

共有名義の収益は、持分割合で分配されるのが原則

前回の続きです。

本書『あぶない!!共有名義不動産』の第二章でみたように、共有名義不動産をめぐるトラブルには様々なタイプのものがあります。なかでも、(1)収益不動産(2)底地・借地権(3)夫婦が共同で購入した不動産に関しては、トラブルが起こった際に特別な配慮や注意が求められることが多々あります。

以下では、(1)から(3)に関するトラブルについて、その解決等を図るうえで知っておきたいポイントについて詳しくみていきましょう。

まず、(1)収益不動産に関しては、第2回目の連載で取り上げた【事例8】兄が貸しているアパートの家賃を分配してくれない例のように、共有名義となった収益不動産を管理している共有者が、賃料を自分だけのものにしてしまった結果、トラブルとなる例が少なくありません。

共有名義不動産から得られる収益は、経費の負担と同様に、持分割合に従って各共有者に分配されるのが原則です。にもかかわらず、共有者の1人だけが賃料収入をすべて独り占めにしている場合には、不法行為または不当利得に関する民法の規定に基づいて、自己に分配されるべき賃料相当額の損害金の請求を行うことが可能となります。

すなわち、民法709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と、不法行為の要件について定めています。

収益不動産の管理者となっている共有者が持分割合に従って他の共有者に賃料収入を分配しないのは、「賃料収入の分配を受ける権利(=他人の権利)」を「故意又は過失によって」「侵害」しているといえるので、「自己に分配されるべき賃料相当額(=これによって生じた損害)」を賠償する義務を負うことになるわけです。

「分配されるべき賃料」がもらえない場合は返還請求を

また、民法703条は「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」と、不当利得の要件について規定しています。

本来、他の共有者に分配されるべき賃料収入までをも自分のものとしている者は、「法律上の原因なく他人の財産」「によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者」といえるので、「自己に分配されるべき賃料相当額(=その利益)」を不当利得として返還しなければならないわけです。

たとえば、共有しているマンションを賃貸し、月々10万円の賃料収入が得られている場合に、そのマンションについて2分の1の持分を持っている共有者が、不法行為または不当利得の規定に基づいて自己に分配されるべき賃料相当額を請求する場合には、(仮に管理費等を考慮しなければ)5万円を支払うよう求めることができるのです。

また、第2回目の連載で紹介した【事例10】建て替えても持分を贈与しても負担の大きい古アパートの例などでみたように、収益不動産は古くなればなるほど価値が下がり、維持費もかさんでいくことになります。したがって、築年数の経った収益不動産の共有トラブルに悩まされているような場合には、できるだけ早いうちに持分の処分を決断した方がよいかもしれません。

本記事は、2017年5月26日刊行の書籍『あぶない!!共有名義不動産』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

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