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AB共有と思っていたら、
Aの単独所有だったことが判明|弁護士Q&A

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AB共有と思っていたら、
Aの単独所有だったことが判明

不動産トラブルのイメージ

共有だと思っていた不動産が単独所有だった

質問Bは甲土地がAの単独所有の事実を知りながら15年間土地を利用していました。
※AはBと2分の1ずつの共有と思っています。
すると最近になってAは共有ではなく単独所有と気が付き、Bに土地の返却を求めようとしています。
一方、Bは時効取得の完成を主張しようとしています。
このような主張は認められますか?
また、Bは上記事実を利用し、この際、どうせなら甲土地の共有持分を売却してしまおうと考え、自己の共有持分を第三者Cに売却し登記を移転しました。
AはCに対し土地を返せと主張することができますか?

AB共有と思っていたら、Aの単独所有だったことが判明したイメージ

取得時効について

他人の物または財産権を一定期間継続して占有または準占有する者に、その権利(所有権等)を与える制度です。
民法には1. 占有開始時に善意の場合、2. 占有開始時に悪意の場合の2種類の取得時効が定められています。

(取得時効)

民法162条1項:「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

同条2項:「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。」

民法162条1項は悪意で占有開始をした場合、同条2項は善意で占有開始をした場合の取得時効です。本件では、BはAの単独所有であることを知っている(悪意)ため悪意占有の成立を検討していきます。

成立要件

民法162条1項:「1. 二十年間、2. 所有の意思をもって、3. 平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。」

1. 二十年間→本件では15年ということもあり、取得時効の完成の余地はありません。

  • なお、2.の所有の意思とは税金等の支払いをしている、3. は奪い取った場合ではだめという程度だと思って下さい。

Bに甲土地の時効取得は完成していないので、自己の所有と主張することができません。
しかし、Bは自己の共有持分を第三者Cに売却し登記まで移転してしまいましたが、この点はどのようになるのか、考えていきましょう。

取得時効と第三者について

民法にはこんな規定があります。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

民法177条:「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

条文を素直に読むと、登記が無ければ、第三者に対して自己の所有権を主張することができず、本件AもCに対して自己の所有物だ!と主張できないように思えます。

♦参考判例:最判昭41年11月22日判決

判旨:「時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては、その第三者に対しては、登記を経由しなくても時効取得をもつてこれに対抗することができるものと解すべき」

としています。すなわち、時効完成「前」に第三者に譲渡した場合、その第三者は177条にいう「第三者」には当たらず(「本人」であるため)、登記が無くても対抗することができるということです。

よって、本件では、Aは登記はありませんがCに対して所有権の主張(「土地を返せ」との主張)することが可能です。

補足:取得時効完成「後」の第三者との関係

それでは取得時効完成「後」に第三者に登記を移転した場合はどうでしょうか。

♦参考判例:大判大14年7月8日判決

要約:「時効取得完成後の第三者については、時効取得による物権変動と第三者への物権変動とを対抗関係とみて、177条の適用により処理

とし、上記民法177条論で優劣を決するとしています。すなわち、時効完成「後」の場合は先に登記を備えた方が優先するということです。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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