共有名義の農地売却は難しい?その理由と解決策をわかりやすく解説!
共有名義の農地売却は難しい?その理由と解決策をわかりやすく解説!

「農地を相続したけど、使い道がない」「農業を辞めるので農地を売却したい」そう思っても、農地の売却は一筋縄ではいかないケースが多いです。
なぜなら、農地の売却は農地法によって厳しく規制されているからです。
この記事では、農地の売却が難しい理由、売却方法、そしてスムーズに売却するためのポイントをわかりやすく解説します。
なぜ農地の売却は難しいのか?
農地は、食料の安定供給を支える重要な資源です。そのため、農地法は農地の減少を防ぎ、農業の維持・発展を目的として、売買や転用を制限しています。
具体的には、以下の点が農地売却を難しくしています。
- 農業委員会の許可が必要
- 地目変更の難しさ
- 買い手の少なさ
農業委員会の許可が必要
農地を売却するには、農業委員会の許可を得る必要があります。許可の条件は厳しく、農業を継続する意志や能力があるかどうかなどが審査されます。
地目変更の難しさ
農地を農地以外の用途(宅地など)に転用する場合、都道府県知事の許可が必要となります。この許可も取得が難しく、特に市街化調整区域内の農地は転用が制限される傾向があります。
買い手の少なさ
農地は、農業を営む人しか購入できません。そのため、買い手の数が限られてしまい、売却までに時間がかかることがあります。
共有名義の農地は売却できる?
共有名義の農地は、所有者全員の意見が一致しないと、売却や活用が難しいという特徴があります。
共有名義の農地とは
共有名義の農地とは、複数の所有者で権利を共有している農地のことです。
共有持分は、それぞれの所有者が農地に対して持つ権利の割合を示します。例えば、兄弟2人で農地を共有している場合、それぞれの持分は2分の1となります。
共有名義の農地でよくあるトラブル
共有名義の農地では、以下のようなトラブルが起こりやすいです。
- 意見の不一致: 売却や活用、相続など、農地に関する決定をする際に、共有者全員の意見が一致しない場合があります。
- 管理の負担: 共有者全員で農地の管理責任を負うため、管理の負担が大きくなり、放置されてしまうケースもあります。
- 相続時のトラブル: 相続が発生するたびに共有者が増え、持分が細分化されていくことで、管理や処分がさらに難しくなる可能性があります。
共有名義の農地を売却するには?
共有名義の農地を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。一人でも反対する共有者がいる場合は、売却が難しくなります。
しかし、共有者全員の同意を得るのが難しい場合は、以下の方法を検討することができます。
- 共有持分の売却: 自分の持分だけを他の共有者または第三者に売却する方法です。
- 裁判による共有物分割: 裁判所に共有物分割請求を行い、農地を分割または売却する方法です。
- 農地法第3条許可: 農業委員会の許可を得て、農地を農地のまま売却する方法です。ただし、買い手が農業を営む人でなければなりません。
共有名義の農地を有効活用するには?
共有名義の農地を有効活用するためには、共有者間で話し合い、活用方法を決定することが重要です。
活用方法としては、以下のようなものがあります。
- 農業を続ける: 引き続き農地として利用する方法です。共有者で協力して農業を行うか、一人が代表して農業を行うかなどを決める必要があります。
- 賃貸する: 農地を他の農業者に賃貸する方法です。賃貸料収入を得ることができます。
- 太陽光発電所を設置する: 農地に太陽光発電所を設置し、売電収入を得る方法です。
- 農地転用: 農地を農地以外の用途(宅地など)に転用する方法です。ただし、転用には都道府県知事の許可が必要です。
農地を売却するには?2つの方法を解説
農地を売却するには、大きく分けて以下の2つの方法があります。
- 農地のまま売却する
- 地目を変更して売却する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 農地のまま売却する
農地のまま売却する場合は、買い手が農業を営む人でなければなりません。また、農業委員会の許可を得る必要があり、以下の条件を満たす必要があります。
- 譲受人が農地を効率的に利用できること
- 譲受人またはその世帯員が農作業に常時従事すること
- 農地の周辺地域の農業に支障をきたさないこと
2. 地目を変更して売却する
農地を農地以外の用途に転用(地目変更)してから売却する方法です。地目変更が認められれば、買い手の制限がなくなり、売却しやすくなります。
しかし、地目変更には都道府県知事の許可が必要で、許可基準は厳格です。特に、市街化調整区域内の農地は転用が難しい傾向があります。
農地区分 | 農地の利用状況等 | 転用の許可 |
---|---|---|
農用地区域内農地 | 市町村が定める農用地区域に指定された区域内の農地 | 原則不可 |
甲種農地 | 市街化調整区域内で8年以内に土地改良事業等の対象となった農地や生産性の優れた農地 | 原則不可 |
第1種農地 | 10ha 以上の広がりがある農地 農業公共投資対象農地 | 原則不可 |
第2種農地 | 農地から 500m以内に鉄道があるなど市街地近郊で市街化が見込まれる農地 | 状況により可 |
第3種農地 | 市街地内の農地、農地から300m以内に鉄道があるなど市街化の可能性が非常に高い農地 | 転用可 |
また、土地の現状が農地以外の目的になってからすでに長年経っているような場合は、農業委員会から非農地証明を発行してもらって、地目を変更できる場合もあるため、ご確認いただくことをおすすめします。
例えば、登記の地目は「田」又は「畑」になっているのに現地の状態はコンクリートの駐車場になっていたり、土地の上に建物が建っていたりする状態です。こちらは比較的簡単な手続きで済みます。
参考までに以下は、地目変更にかかる時間です。
地目種別 | 地目変更にかかる時間 |
---|---|
農地ではない土地 | 約1週間〜2週間前後 |
農地 | 全体で約1ヶ月前後 |
農地売却の流れ
農地売却の大まかな流れは以下の通りです。
農地のまま売却する場合
- 売却相手を探す(農業員会へ申請)
- 売買解約
- 所有権移転請求権の仮登記
- 本登記(農地委員会の許可が出次第)
農地を売却するには農業委員会の許可が必要なので、売却相手を探すと同時に農業員会への許可を進めておくと手続きがスムーズになります。
地目変更して売却する場合
- 売却相手を探す
- 農業委員会に相談
- 都道府県知事(または農業委員会)に許可申請を出す
- 所有権移転請求権の仮登記
- 本登記(許可が出次第)
農地のまま売却する場合と異なるのは、地目変更の手続きがあるか否かという点です。いずれにしても、専門的な手続きが絡んでくるため、詳しい専門家や、業者を利用するとよいでしょう。
農地売却に関するよくある質問
Q: 農地を売却するには、どのような手続きが必要ですか?
A: 農地を売却するには、まず農業委員会に許可申請をする必要があります。許可が下りたら、売買契約を締結し、所有権移転登記を行います。 必要書類や手続きの流れは、農地の所在地や状況によって異なりますので、事前に農業委員会や専門家(不動産会社、司法書士など)に相談することをおすすめします。
Q: 農地を売却する際にかかる費用は?
A: 農地売却にかかる費用は、主に以下のものがあります。
- 許可申請手数料(農業委員会)
- 登録免許税(所有権移転登記)
- 印紙税(売買契約書)
- 仲介手数料(不動産会社に依頼する場合)
- 測量費用(境界が不明確な場合)
費用の詳細は、農地の所在地や状況によって異なりますので、事前に見積もりを取得することをおすすめします。
Q: 農地を相続しましたが、農業をする予定はありません。売却できますか?
A: はい、売却できます。農地を相続した場合でも、農業をする義務はありません。ただし、農地のまま売却するには、買い手が農業を営む人でなければなりません。農業を営む人が見つからない場合は、地目を変更して売却する方法もあります。
Q: 農地を高く売るにはどうすれば良いですか?
A: 農地を高く売るためには、以下の点に注意することが重要です。
- 農地の状態を良くする: 耕作放棄地ではなく、きちんと耕作されている状態の方が高く売れます。
- 買い手を見つけやすい時期に売却する: 農業の繁忙期を避けて売却すると、買い手を見つけやすくなります。
- 複数の不動産会社に査定を依頼する: 複数の不動産会社に査定を依頼することで、適正な価格で売却することができます。
Q: 農地を売却したら税金はかかりますか?
A: はい、農地を売却して利益が出た場合は、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税は、売却益から取得費や譲渡費用などを差し引いて計算されます。
Q: 農地を地目変更するにはどうすれば良いですか?
A: 農地を地目変更するには、都道府県知事の許可が必要です。許可申請には、地目変更後の利用目的や周辺環境への影響などを記載した書類を提出します。許可基準は厳格で、特に市街化調整区域内の農地は転用が難しい傾向があります。
Q: 隣接する農地と合わせて売却することはできますか?
A: はい、可能です。隣接する農地を合わせて売却することで、より広大な土地として売却できるため、買い手が見つかりやすくなる可能性があります。ただし、所有者が異なる場合は、それぞれの所有者から同意を得る必要があります。
Q: 共有の農地を売却することはできますか?
A: 共有の農地を売却するには、原則として全共有者の同意が必要です。共有者の中に売却に反対する人がいる場合は、売却が難しくなります。ただし、共有持分を売却することは可能です。
Q: 耕作放棄地を売却することはできますか?
A: はい、耕作放棄地でも売却することはできます。ただし、耕作放棄地は、農地としての価値が低いため、売却価格が安くなる傾向があります。また、地域によっては、耕作放棄地を放置しておくことに対して罰則が科せられる場合があります。
Q: 農地売却の相談はどこにすれば良いですか?
A: 農地売却の相談は、以下の機関・専門家にすることができます。
- 農業委員会: 農地法に関する手続きや規制について相談できます。
- 不動産会社: 農地売却の仲介や査定を依頼できます。
- 司法書士: 所有権移転登記などの手続きを依頼できます。
- 行政書士: 許可申請などの手続きを依頼できます。
農地売却は、一般的な不動産売却とは異なる点が多く、複雑な手続きが必要となる場合があります。そのため、事前に専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

この記事の監修者
社内弁護士
当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。