共有持分の売却前・売却後に関わる民法上のルールを解説!2023年の法改正のポイントまとめ

目次
共有持分を売却したくても、共有者の同意を得られないというケースは少なくありません。共有者の同意を得ずに売却することは、民法上可能なのでしょうか。
本記事では、共有者の同意なく共有持分を売却する方法や、2023年4月1日から施行された民法改正による共有物に関する重要なルール変更点などをわかりやすく解説します。
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抑えておきたい!【基礎編】共有持分の民法上のルール
共有持分の売却を検討する上で、知っておきたい基本的な民法ルールを解説します。
基礎①:共有不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要
共有不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要です。
民法第251条に、次のように定められています。
「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。」
共有不動産においての「変更を加える」とは、増改築や売却を指します。
そのため、共有不動産全体を売却する場合、必ず共有者全員の同意が必要です。
基礎②:自己の共有持分の売却は共有者の同意は不要
共有不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要だと解説しましたが、自己の共有持分の売却なら共有者の同意は不要です。
つまり、自己持分のみであれば、単独の意思で売却できます。
民法206条に、次のように定められています。
「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」
基礎③:各共有者は、共有物の全体を利用する権利がある
例えば、持分割合を3分の1ずつ有するA・B・Cは、その不動産をそれぞれ3分の1の部分しか使えないのではなく、3人共が不動産全体を使用できるということです。
これは、持分の大小に関わらず適用される重要な原則です。
民法第249条には次のように定められています。
「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」
基礎④:固定資産税や維持管理費は持分割合に応じて負担
共有不動産にかかる維持管理費や固定資産税は、各共有者が持分割合に応じて負担しなければいけません。
民法第253条に、次のように定められています。
「各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。」
ただし税金の納付書は代表者に届くため、一般的には代表者が一旦立て替え、立て替えた分は後で共有者に請求します。
請求に応じず共有者が支払いを拒否した場合は、強制的な持分買取りも可能です。
「共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。」
共有者への請求から1年経過すると強制的に持分を買取ることができ、立て替えた費用は買取価格から差し引いて精算します。
基礎⑤:共有状態を解消する共有物分割請求訴訟
共有物分割請求訴訟とは、共有者間での意見の食い違いが続く場合、裁判を通じて共有状態を解消する手続きのことです。
民法第256条に基づき、各共有者は、いつでも共有物の分割を請求する権利を持っています。
民法第258条に、次のように定められています。
「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」
共有者の中の一人が、「共有状態を解消したい」と主張した場合、共有状態の解消(共有物の分割)に向けて共有者間の協議で解決を目指します。当事者同士で解決が見込めない場合は、調停や訴訟によって共有状態を解消します。
共有物分割請求訴訟では裁判所の判決によって、次の3つの中から分割方法が決定されます。
- 現物分割:
共有不動産を持分割合に応じて物理的に分割する方法。更地の場合に選択される可能性が高く、切り分け後は各自100%の所有権になる。 - 賠償分割:
共有持分と賠償金(お金)を交換する方法。他の持分を適正価格で購入したい共有者がいる場合におこなわれる分割方法。 - 換価分割:
競売によって共有不動産全体を売却し、その売却代金を持分割合によって均等に分配する分割方法。
裁判所の裁量によって最善の方法が選択されるため、各共有者は分割方法を自由に選択することはできません。
共有物分割請求訴訟を起こした本人にとっても同じことが言えるため、望んだ方法での分割になるとは限らない点に留意が必要です。
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【事例で解説】共有持分の「売却後」に関する民法ルール

共有持分だけを他の同意を得ずに売却することはできますが、その後どうなるのかも気になるところです。
3人で共有している場合の事例を挙げて解説していきます。
A・B・Cで共有(3分の1ずつの持分)する家屋があり、ここにはAとBが居住しています。
Cはこの不動産を活用していないため、自己の持分を第三者Dに売却しました。この後、A・Bはどうなるのか見ていきましょう。
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①他の共有者は退去する必要がある?
結論を先に述べると、A・Bは退去する必要がありません。
先述した民法第249条のとおり、持分の割合に関わらず共有者は共有物の全部を使用することができるからです。
これは第三者と共有状態になっても同じで、共有者である居住者(A・B)が出ていかなければならない理由はありません。
ただし、次項で解説する費用の請求に関しては注意が必要です。
②家賃相当の賃料を請求される?
このケースではA・Bが共有不動産を専有しているため、Dが持分の権利を侵害されている状況です。この場合、DはA・Bに対し家賃相当額を請求できます。
これは「不当利得返還請求」または「共有物使用の対価」として請求されるものです。
DがA・Bに対し請求できる家賃は、「家賃相場×Dの持分割合」で算出します。
例えば今回の家屋を一般に貸し出した場合の家賃相場が月9万円としましょう。
Dの持分割合が3分の1ですから、「9万円×1/3」となり、DはA・Bに月3万円の家賃相当額を請求できます。
この請求は、Dが共有者になった時点から発生し、過去の使用料についてもさかのぼって請求される可能性があります。
③持分の買取を請求される?
新たな共有者となったDはA・Bに対し「持分を売ってほしい」「自分の持分を買い取ってほしい」と交渉してくる可能性があります。
これは、新たな共有者が買取業者である場合によくあるケースです。
買取業者は、持分を購入した後、完全所有権化して転売することで利益を得ることを目的としているためです。
④共有物分割訴訟を起こされる?
共有状態になったA・B・Dの間で、共有不動産の活用を巡って意見が割れた場合、A・BはDから共有物分割請求訴訟を起こされる可能性があります。(民法第258条)
A・Bは共有物の分割(共有状態の解消)を拒むことはできません。
共有物分割請求訴訟は以下の流れで行われます。
- 当事者間での協議
- 共有物分割請求訴訟を提訴
- 呼出状の送付
- 裁判所にて協議(口頭弁論・弁論準備手続など)
- 判決(分割方法の決定)
A・B・Dによって協議をし、それでも調わなければDが共有物分割請求訴訟を提訴します。
裁判所からA・Bに呼出状が送付され、A・Bは答弁書を提出しなければいけません。
異議があれば裁判所に出廷しますが、異議がなければ答弁書に記載された内容で審議が進められ、分割方法が決定されます。弁護士などの専門家を立てて、適切に対応することが重要です。
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2023年4月の民法改正のポイント(民法第251条関連)
民法第251条について、2023年4月の施行前は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」となっていました。
しかし法改正によりカッコ書きの部分「(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)」が追加され、軽微な変更は管理行為に該当する旨が明記されました。
軽微な変更とは、例えば外壁や屋根の修繕をしたり、砂利道をアスファルト塗装したりといった、構造や用途などに著しい変化を伴わないものを指します。
法改正前は軽微な変更にも共有者全員の同意が必要だったため、共有者全員と連絡が取れないために屋根の修繕ができないなどのケースもありましたが、法改正により共有持分の過半数の同意で実施できるようになりました。
これにより、共有不動産の維持管理がより円滑に行えるようになっています。
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2023年4月の民法改正のポイント(民法第249条関連)
2023年の法改正では、以下の2項と3項が追加されました。
「共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。」
—民法第249条2項
「共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。」
—民法第249条3項
共有持分を有しているとそれぞれが全体を使用できると先述しましたが、特定の共有者が不動産を専有(居住)している場合、他の共有者は持分割合に応じた使用ができません。
しかし以前の民法では、自己持分を超えて使う人に対する明確な定めはありませんでした。
そこで、法改正により「自己持分を超えて使用するなら対価を払う義務がある」と明確に定められたのです。これにより、不公平な占有状態が是正されることになりました。
3項は共有物を使用する際の注意事項を守らなければいけないというものです。
この定めによって、共有者が故意や過失により共有物を損傷などさせた場合、他の共有者は損害賠償請求を行えるようになりました。
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2023年4月の民法改正のポイント(民法第258条関連)
共有状態の解消には共有物分割請求訴訟が有効ですが、以前は「共有者間に協議が調わないとき」とされていました。
すなわち、「共有物分割協議をしたけれど話し合いがまとまらないなら、その分割を裁判所に請求することができる」というものでした。
しかし2023年4月からは「協議をすることができないとき」が追加され、協議に応じない共有者がいる場合も要件を満たすとされています。
これにより、共有者の一方が協議に応じないために共有状態の解消が滞るという事態を避けやすくなりました。
また、共有物分割の方法としてこれまでは現物分割または競売分割の二種類しか定められておらず、判例法理によって賠償分割が展開されていました。
しかし2023年4月からは共有物分割の方法として、「現物分割か賠償分割の方法で行う」(第258条2項)と明記され、「これらの方法による分割ができない場合や分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、競売による分割を命ずることができる」(第258条3項)と明記されました。
これは、以下の優先順位で分割方法が検討されることを意味します。
- まずは、現物分割か賠償分割を検討する
- いずれもできない場合、次に競売による分割を検討する
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共有持分の売却は、共有者の同意なく行えると民法で定められています(民法206条)。
つまり、他の共有者に黙って売却できるのです。
しかし売却がきっかけで他の共有者とトラブルになったり、売却後にトラブルが起こったりすることもあります。
その為、共有持分を扱った経験が豊富な不動産会社を選ばなければいけません。
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この記事の監修者
弁護士
エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍する不動産トラブル解決のスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。
特に共有不動産における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。相続や離婚による共有名義不動産のトラブル解決に従事してきた。
著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。