共有状態の解消方法について3|トラブル事例|その他

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共有状態の解消方法について3

質問母親A名義の土地についての相談です。
甲土地は母親Aと子のBC兄弟3人の共有名義になっています。
父親が亡くなった際、遺産分割協議がまとまらず、相続分に応じた持分割合で共同所有をしています(A:B:C=2分の1:4分の1:4分の1。
もう母親は高齢で認知症のため、母親の持分だけ売却したいと考えておりますが可能でしょうか。
土地は下記になります。
<土地詳細> 甲土地:地目、宅地(100平米) 乙土地:地目、畑(50平米) 道路には面していますが、かなり道は狭く、普通車がやっと通行できるかどうかの状況です。
このような状況でも、売却は可能なのでしょうか。 よろしくお願いいたします。

高齢で認知症の母のイメージ

詳細解説

母親の土地を勝手には売れない

共有持分の売却は他の共有者の同意は不要

まず、共有持分の売却に際しては、他の共有者の同意なくして売却することが可能です。そのため、母親の持分である2分の1については、自己の判断だけで売却することができます。

成年被後見人制度

いくら、肉親出るからと言って、他人の財産を勝手に売却することはできません。代わりに売却するには代理権を授与してもらう(代理契約)等が考えられますが、本件では認知症ということもあり、それ自体が難しいと言えます。

そこで、後見制度を利用することが考えられます。成年後見制度、保佐人制度、補助人制度があります。

  • 事理弁識能力の程度によって異なります(被成年後見>被保佐人>被補助の順)。

例えば一番事理弁識能力の低い成年被後見人のケースを見てみます。

(後見開始の審判)
民法7条:「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。」

とあり、成年後見人がつきます。そのうえで、成年後見人は、

(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
民法858条:「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」
(財産の管理及び代表)
民法859条:「後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。」

とあるように、成年後見人は成年被後見人に代わって財産に関する法律行為(売買や譲渡等)をすることができます。

認知症だから、勝手に文書を作って代わりに契約。そんなことをしてしまうと取り返しのつかないことに。最近では、同様のご相談が多いのは事実です。処分するには適切に処理を進める必要がありますので、ご注意ください。

認知症の度合いによる貢献制度のイメージ

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地目によっては売却が難しい場合も

本件での共有持分の対象は、甲土地:地目、宅地(100平米)、乙土地:地目、畑(50平米)とのことです。
甲土地に関しては、宅地であるということで、買い手さえつけば、問題なく売却ができます。

一方の乙土地は、畑ということですが、地目的には農地になるかと思います。農地の売却は勝手にはできず、農業委員会の許可がいります。勝手に売却してしまうと法律違反になってしまうので注意が必要です。

では、「農地の地目を変更して売ればいいじゃやないか!」と思うかもしれませんが、地目の変更自体にも手続きがいります。

(農地の転用の制限)

農地法4条:「農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事…の許可を受けなければならない。」

同法5条:「農地を農地以外のものにするため…これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない…」

申請しても許可を必ずもらえるというわけではありません。農地は国民の食の基礎で、農地がどんどんなくなるということは、国内での食物の生産がどんどんできなくなってしまうため、農地は勝手に減らせないようになっているのです。

また、道路に面しているものの、幅が狭いことを不安に思っているとのことですが、様々な事情を抱えた相談も多いです。実際に、他の業者では売れるわけがないと言われてしまった不動産も、当社の強いネットワークにより、売却することができたケースは多くあります。

もちろんそもそも売却できるか、希望通りの条件で売却できるかは状況にもよります。ただ、仲介業者だからできる強みが当社にはあります。まずは気軽に一度ご相談ください。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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