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共有者が認知症の場合、持分売却はできる?|弁護士Q&A

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共有者が認知症の場合、持分売却はできる?

高齢で認知症の母のイメージ

ご相談内容

甲土地は母親Aと子のBC兄弟3人の共有名義になっています。

父親が亡くなった際、遺産分割協議がまとまらず、相続分に応じた持分割合で共同所有をしています(A:B:C=2分の1:4分の1:4分の1。

もう母親は高齢で認知症のため、母親の持分だけ売却したいと考えておりますが可能でしょうか。

土地は下記になります。

<土地詳細>
甲土地:地目、宅地(100平米)
乙土地:地目、畑(50平米)

道路には面していますが、かなり道は狭く、普通車がやっと通行できるかどうかの状況です。

このような状況でも、売却は可能なのでしょうか。 よろしくお願いいたします。

ご相談のポイント

  • 共有者が認知症の場合の持分売却
  • 売買対象の地目が農地の場合

①共有者が認知症の場合の持分売却

不動産が共有の場合、各共有者が、自身の共有持分を第三者に売却することは、他の共有者の同意なく単独で行なうことができます(民法206条)。

しかし、売主となる共有者が認知症である場合は、売主本人の意思判断能力が不十分な状態であることを意味します。

民法上、意思能力が欠けた状態で行った法律行為は無効とされています(民法3条の2)。

意思能力の有無は、本来は、個別の法律行為ごとに判定されるべきものですが、契約のたびに意思能力を事前に判定しなければならないとなると、本人の保護の面でも、取引の相手方の保護の面でも問題があります。

そこで、民法では、家庭裁判所が画一的な基準で本人の事理弁識能力(物事を判断する能力)の低下を認定し、定型的に法律行為に制限を加える、法定後見の制度を設けています。

制限を受ける本人(制限行為能力者)の事理弁識能力の程度に応じて、成年後見、保佐、補助の3種類の制度がありますが、もし、お母様が、認知症が原因で常に意思判断能力を欠く状態である場合は、家庭裁判所の審判で、成年後見人を選任する必要が生じます(なお、認知症になる前に本人が成年後見人となる者を選ぶ任意後見制度もありますが、ご相談内容からして、今回は任意後見人はいない前提で説明致します)。

お母様の共有持分を第三者に売却する場合は、成年後見人が、お母様の法定代理人として、売買契約の締結を行なうことになります。

②売買対象の地目が農地の場合

本件において、お母様の持分売却にあたって、もう1つ法律的に支障となる要因が、乙土地の地目が畑=農地であることです。

土地の地目が農地である場合、農地の売却には、農業委員会の許可が必要となります(農地法3条1項)。

農業委員会の許可が必要となるのは、売買の対象が農地の共有持分のみであっても同様です。

しかし、あくまで農地としての売却なので、少なくとも、売却先が農業従事者であることが、農業委員会から許可を出してもらう前提となります。

例えば、乙土地も宅地として売却したい場合、これを実現するには、乙土地について、非農地に変更する(転用する)ことが必要になります。

農地を農地以外のものに転用して売却するには、都道府県知事の許可を受けなければなりません(農地法5条1項)。

但し、非農地への転用を許可すればその分農地が減り、国全体の農業生産力の低下につながるため、許可のハードルは低くありません。

また、区域によっては、そもそも農地の非農地への転用が認められていないこともあります。

さらに、共有の農地を非農地に転用することは、共有物の変更(民法251条1項)に当たるため、共有者全員の同意が必要になります。

なお、仮に、乙土地が、地目は畑であるものの、現況としては長らく非農地として利用されている場合は、農業委員会から非農地の認定を受けて非農地証明書を発行して貰えれば、前述の転用の許可を受けなくとも、現況地目への変更登記を行なうことができます。

まとめ

共有持分の売主が認知症のために常に意思判断能力を欠く状態にある場合、売買契約を有効に締結するためには、売主のために成年後見人を選任する必要があります。

共有持分の売却対象である土地の地目が農地である場合、農地のまま売却するためには、農業委員会の許可が必要であり、農地以外に転用した上で売却するためには、都道府県知事の許可及び他の共有者全員の同意が必要となります。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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