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共有物分割を禁止したい|弁護士Q&A

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共有物分割を禁止したい

ご相談内容

父の所有していた名古屋市西区の商業ビルを家族(母、長男、妹、私)で相続しました。生前の父は、相続財産であるビルを家族みんなが仲良く持ち続けるよう、母や長女の私に言っておりました。家族の持分を誰かが勝手に売ることがないように望んでいたはずです。

1ヶ月前に遺産分割協議書を整え相続登記を完了しました。

ビルの賃料収入は約210万円/月あり、各持分比率で分配することは家族全員で合意していていたにもかかわらず、会社の経営が厳しいとの理由で兄(長男)が自分の持分だけでも売却して現金化したいと言ってきました。何かいい解決策はないでしょうか?

ご相談のポイント

  • 共有者間の協議が纏まらないときの選択肢
  • 共有物分割請求と分割禁止の契約
  • 共有持分の売却先と売却価格

①共有者間の協議が纏まらないときの選択肢

共有名義の不動産の利用・処分について共有者間での協議が纏まらない場合に、各共有者が取れる選択肢は、大きく分けると、(1)共有物分割請求をする、(2)共有持分を売却する、の2つが考えられます。

②共有物分割請求と分割禁止の契約

民法の原則として、各共有者は、他の共有者に対して、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項本文)。

他方で、民法は、共有者間で、共有物の分割禁止の契約を行なうことを認めています。(あくまで共有物の分割を禁止するにとどまるので、共有持分の売却を禁止することはできません)

分割禁止とする期間は最長で5年以内とされ(民法256条1項但書)、契約の更新も可能ですが、更新後の分割禁止の期間も最長5年以内であることが必要です(民法256条2項但書)。

但し、この分割禁止の契約は、登記をしなければ、共有持分の特定承継人に対して対抗することはできません(不動産登記法59条6号)。

また、当然ながら、共有物の分割禁止の契約は(契約の更新も含めて)全共有者の同意が必要になるので、お兄様が反対した場合には、分割禁止の契約自体ができません。

③共有持分の売却先と売却価格

共有物の各共有者は、自己の共有持分を、他の共有者の同意なしに第三者へ売却することが可能です(民法206条)。

前述のとおり、仮に分割禁止の契約があったとしても、共有持分の売却を禁止することはできませんし、登記されていなければ、共有持分の買主に対して分割禁止の契約の効力を対抗することはできません。

もっとも、共有持分の売却は、(ア)共有者への売却と、(イ)共有者以外の第三者への売却に分けられます。

本件におけるお兄様の希望は、自分の持分を可能な限り高く売却することにあると思われますが、(ア)と(イ)を比較したとき、より高額で共有持分を売却できるのは(ア)の共有者への売却の場合です

話を単純化して、不動産がAとBの2人の共有で、Aが自分の持分を売却を検討しているという例で考えてみた場合、共有者Bには、Aの持分を購入すれば不動産の100%所有者になれるメリットがあります。

けれども、第三者CがAの持分を購入しても、共有者Bがいるため、不動産を自由に利用できません。

この例からもわかるように、共有持分の購入に関して、共有者以外の第三者には、共有者を超える経済的なメリットが無いので、第三者が応じられる購入価格は、おのずから共有者より低くなるのが通常です。

ご相談者様を含む共有者の中に、お兄様の共有持分を購入する意欲・資力がある方がいれば、お兄様との間で持分買取りの交渉をすることも1つの選択肢になります。その際は、お兄様の立場からのメリットについても、きちんとご理解頂くように説明する必要があります

お兄様の共有持分を買い取ることが出来れば、親族以外の第三者との共有関係になる事態を回避することができます。

まとめ

共有者間で協議が纏まらない場合は、共有物分割請求と共有持分の売却が選択肢となります。

共有物の分割禁止の契約は、登記をしなければ、共有持分の買主に対抗できません。

本件の場合、共有者間で共有持分の売買ができれば、親族以外の第三者との共有関係になる事態を回避でき、また、売主となるお兄様にとっても、共有者以外の第三者に売却する場合に比べて高額な売却が実現できるというメリットがあります。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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