共有持分を売却したらどうなる?売却後に共有者とのトラブルを防ぐ対策とは
共有持分を売却したらどうなる?売却後に共有者とのトラブルを防ぐ対策とは

目次
共有持分を売却したいけれど、売却後にどんな影響があるのか不安…」そんな悩みを抱えていませんか?共有持分の売却は、不動産の共有状態を解消する有効な手段ですが、売却後に思わぬトラブルが発生することもあります。
本記事では、共有持分を売却した際に起こり得る変化やリスク、さらに売却後のトラブルを防ぐための具体的な方法を分かりやすく解説します。後悔しない選択をするための必読ガイドです。

自己持分の売却は他の共有者の同意なしでできる
不動産などの共有物におけるご自身の「持分」は、他の共有者の同意を得ることなく、単独で売却することが可能です。(民法第206条)

共有持分は、個人の独立した財産権として認められています。そのため、ご自身の財産を自由に処分できるように、持分も自由に売却したり、担保に入れたりすることができます。
民法では、共有物全体を売却したり、大きな変更を加えたりする場合には、共有者全員の同意が必要と定められています(民法第251条)。しかし、これはあくまで共有物全体の話であり、ご自身の持分のみを処分する行為には適用されません。
ただし、注意点もあります。持分を売却すると、買主が新たな共有者として共有関係に入ってきます。他の共有者にとっては見知らぬ第三者と不動産を共有することになるため、トラブルを避けるためにも、事前に他の共有者へ通知しておくことが望ましいでしょう。
共有持分を売却したらどうなる?
共有持分の売却は、他の共有者の同意なしで可能です。
つまり、共有名義不動産を所有していると、共有者が勝手に持分を売却し、いつの間にか知らない会社や人と共有状態になっている可能性もあるのです。
共有持分の売却後に、共有者にどのような影響があるか、解説します。
1. 新たな共有者から訴訟を起こされる可能性がある
持分が売却されると、その買主(特に専門の買取業者など)が新たな共有者として共有関係に参入します。
新共有者が最も強力な権利として行使しうるのが「共有物分割請求権」(民法第256条)です。
「共有物分割請求権」は、共有関係の解消を一方的に請求できる権利であり、他の共有者は請求を拒否できず、分割協議に応じる法的義務を負います。協議が不調に終われば、新共有者は裁判所に対して共有物分割請求訴訟を提起できます。
裁判所は、まず物理的に不動産を分ける現物分割を検討しますが、土地・建物では困難なケースが多いため、不動産全体を競売に付してその売却代金を分配する「換価分割」や、特定の共有者が不動産全体を取得し、他の共有者へ持分相当額の金銭を支払う「代償分割」を命じる可能性が高くなります。
結果として、他の共有者は居住継続の意向に反して不動産を手放さざるを得なくなるリスクがあり、これが共有者間トラブルの最大の要因となります。
2. 賃料や収益分配を請求される可能性がある
他の共有者が対価を支払わずに不動産を単独で占有・利用している場合、新共有者は自己の持分割合に応じた賃料相当額を不当利得(民法第703条)として返還請求できます。
賃料相当額の請求(不当利得返還請求)は法的に正当な権利であり、これまで無償での利用が黙認されてきた共有者にとっては、予期せぬ金銭的負担となります。
また、不動産の管理に関する事項(軽微な変更や賃貸借契約など)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数をもって決定します(民法第252条)。
買取業者が複数の持分を取得して過半数を握った場合、他の共有者の意向に関わらず、不動産を第三者に賃貸するなどの収益化方針を主導することが可能になり、管理をめぐる対立が強くなる可能性があります。
3. 売却した人には経済的なメリットがある
持分を売却する当事者にとって、最大のメリットは売却益を得られることと、固定資産税や修繕費といった将来にわたる経済的負担からの解放されることです。
しかし、円滑な権利行使のためには、以下のリスク管理が不可欠です。
まず、他の共有者との関係悪化を避けるため、法的な義務はなくとも、最初に他の共有者へ買取を打診するのが賢明な策と言えます。
また、第三者へ売却する際は、買主が過去に強引な権利行使を行っていないかなど、その実績や評判を精査することが重要です。これにより、売却後の紛争をある程度予見し、回避することが可能になります。
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【実例】共有持分の売却後に起きたトラブル
先述の通り、一つの家や土地を兄弟などで共同所有している場合、自分の「持分(もちぶん)」、つまり不動産に対する所有の割合だけを売ること自体は、法律で認められています。
しかし、これを実行すると、残された他の所有者(兄弟など)との間で、深刻なトラブルが起きがちです。具体的にどんなことが起こるのか、わかりやすく解説します。
トラブル①:ある日突然、知らない業者から連絡が来る
共有持分を買うのは、多くの場合、専門の買取業者です。彼らはビジネスとして共有持分を買っているので、次のような行動を起こします。
「あなたの持分を、売ってくれませんか?」と交渉される
買取業者の目的は、他の共有者の持分を買い取り、一つの完璧な不動産にすることです。その方が高く売れるからです。
そのため、共有者のもとへ行き、「あなたの持分も売ってください」と交渉を始めます。中には、かなりしつこく、強引な業者もいるため、注意が必要です。
最終手段は「裁判」で、家を強制的に売却させられる
もし共有者が「売りたくない」と断っても、業者は一筋縄ではあきらめません。
裁判所に「共有物分割請求」を提訴し、強制的に不動産を取得しようと動きます。
訴訟の結果、「共有不動産を競売にかけて、その売却益を全員で分けなさい」という命令が出てしまうことがあります。 こうなると、たとえ住み続けたくても、家を強制的に手放さなくてはならなくなるのです
トラブル②:共有者との人間関係が壊れてしまう
他の兄弟(共有者)からすれば、「大切な実家を、相談もなしに得体の知れない業者に売った」ということになります。「なぜ一言相談してくれなかったんだ」という怒りが、不信感に変わる可能性があります。
また、新しい共有者は、当然ながら共有不動産に出入りする権利を有しています。見ず知らずの人が、共有不動産に出入りすることで、さらに共有者の怒りや精神的なストレスに繋がることは、想定できます。
さらに、先述したような買取業者からの交渉や、裁判にまで巻き込まれたストレスから、共有者の怒りの矛先が、共有持分を売却した当事者に向かうケースも少なくありません。
「お前のせいで、とんでもないことになった!」と、執拗な電話や悪口などの嫌がらせが始まることもあり得ます。
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共有持分の売却後のトラブルを防ぐ対策
共有持分を売却した後、他の共有者や新しい所有者との間でトラブルが発生するケースは少なくありません。売却後のトラブルを未然に防ぐためには、事前の準備や適切な対策が欠かせません。
ここでは、共有持分売却時に気を付けるべきポイントや、トラブルを回避するための具体的な方法について解説します。
売却前に他の共有者に相談しておく
共有持分を売却する際には、他の共有者に事前に相談し、売却の意向を伝えることがトラブル防止の第一歩です。
法律上、共有持分は単独で自由に売却可能ですが、事前相談がないと、共有者が「勝手に売却された」と感じ、不信感やトラブルの原因になることがあります。
売却意向を共有することで、他の共有者が買い取る意向を示す場合もあり、円満に解決するケースもあります。話し合いの場を設け、売却の理由や条件を説明し、理解を得ることが重要ですし、売却後も関係性を保ちやすくなります。
また、共有持分売却後に新たな共有者が入ることで共有状態が複雑化するリスクも説明することで、共有者間の協力を得やすくなります。
この際、新しく共有者となる買主が、その不動産をどのように利用したいと考えているのかを、可能な範囲で伝えることも有効です。
専門家のサポートを受ける
先述した共有者同士の話し合いが難しい場合は、専門家に仲介してもらうのも一つの手です。具体的には、共有持分に詳しい不動産会社や弁護士への相談が良いでしょう。
また、共有持分の売却には、法的・税務的なリスクが伴うため、不動産会社、弁護士、税理士などの専門家に相談することが不可欠です。
不動産会社は、売却先の選定や価格の妥当性についてアドバイスしてくれます。また、弁護士は、共有持分売却後のトラブル(共有物分割請求など)を予測し、それに備える法的助言を提供します。
税理士は、譲渡所得税やその他の税務処理に関するアドバイスを行い、売却後の税金トラブルを防ぎます。
特に共有物分割請求や、売却後に新たな所有者が共有不動産全体を競売にかける可能性がある場合、専門家の事前助言が極めて重要です。
共有持分の買取業者と仲介業者の目的の違いを知っておく
共有持分の売却先を選ぶ際には、信頼できる業者を見極めることがトラブル防止のポイントです。主な選択肢は「買取業者」と「仲介業者」の2つです。
買取業者は、通常、買い取った共有持分を他の共有者から残りの持分も買い取ることで単独所有とし、物件全体を再販して利益を得ることを目的としています。
そのため、早期にリスクを回避したい、現金化したいという売主のニーズには合致しますが、買取価格は市場価格よりも低めに設定されることが一般的です。
一方、仲介業者を経由した場合の買主は投資家になります。投資家は、長期の利益を求めるため、無理に持分の売買を持ちかけるケースが少なく、あくまで他の共有者と一緒に利益を最大化していく姿勢を見せてくることが多いです。
また、買取業者と比べて仲介業者の方が、持分の売却価格も高くなる傾向があります。
信頼できる業者を選ぶ際には、共有持分の取り扱い実績が豊富であるか、提示される査定価格の根拠が明確であるか、など複数社を比較して慎重に検討しましょう。

買主(購入者)情報を確認する
共有持分は、複数人で所有する形態であるため、処分や活用方針の違いにより共有者間でのトラブルが発生しやすい不動産です。
また、権利関係が複雑になる性質上、売却相場が低くなるといったデメリットも持っています。
これらの理由から共有持分を早く売却したいと考える人も少なくありません。しかし、早く共有状態を解消したいからといって「安易に売却先を選ぶ・売却価格を妥協する」などの行為は推奨できません。
共有持分を売却する際は、売る相手をしっかりと見極め、持分の取得後はどのように不動産を活用したい意向なのか、確認しておくことが大切です。
特に、個人の買主の場合、共有不動産の利用目的や共有者間のルールに対する理解度を確認することが不可欠です。法人の買主であれば、その会社のこれまでの実績や評判を調査しましょう。
不動産会社に売却後のトラブル対応を確認しておく
不動産会社に売却する場合、その会社が売却後のトラブルに対応してくれるかを確認しましょう。
中には、売却した後に連絡が一切取れなくなったり、売却後の共有者間のトラブルは、対応できないと言ってくる業者もあります。
売却後にトラブルが起きた場合もの具体的な対応フローや費用についても事前に確認しておくことで、いざという時にスムーズな解決が期待できます。
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売買契約書の取り交わしと内容確認
共有持分の売却において、売買契約書はトラブルを未然に防ぐための最も重要な書類の一つです。
契約書には、売買価格、引き渡し時期、費用負担、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)、そして特約事項など、売買に関する詳細な条件が明記されます。
特に、共有持分特有の事項として、他の共有者の存在や、共有不動産の利用状況、将来的な共有物分割請求の可能性などについて、売主が知り得る範囲で情報を開示し、それが契約書に適切に反映されているかを確認することが重要です。
不明な点や疑問点がある場合は、署名・押印をする前に必ず不動産会社や弁護士に相談し、完全に理解した上で契約を進めましょう。
口頭での合意だけでなく、すべての条件を書面で明確にすることで、後々の認識の齟齬やトラブルを防ぐことができます。
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よくあるご質問
共有持分は誰が買うのですか?
共有持分を購入するのは、買取業者または投資家です。
一般的には、不動産買取業者による自社買取または仲介業者を通じて、投資家に売却する場合がほとんどです。
共有持分の購入希望者を個人が自力で探すことは、現実的ではないため、共有持分を専門に取り扱う買取業者または仲介業者へ売却の相談をするようにしましょう。
共有持分を購入する人の目的は何ですか?
共有持分の不動産を自己が住居する目的で購入しようと考える人はほとんどいません。購入者の最終的な目的は、他の共有者の持分を買い取り、不動産全体の所有権を有し、収益物件として活用することです。
共有持分購入者の主な目的は、以下の通りです。
購入者 | 目的 |
買取業者 | 不動産を単独名義にして転売することが目的。 一部の業者では、他の共有者へ持分の売買交渉を強引に行う場合がある。 |
投資家 | 収益物件として活用することが目的。 持分割合に応じた家賃分配などの交渉をおこなう。一定期間、共有状態を維持する前提で購入するため、共有者とのトラブルが少ない。 |

共有持分をトラブルなく売却するなら中央プロパティーへ
共有持分の売却は、他の共有者へトラブルが降りかかる・他の共有者から嫌がらせを受けるなどのリスクがあります。
売却する際には、相手が他の共有者に理不尽な要求をしてこないか、他の共有者から嫌がらせを受けた際のアフターフォローが整っているかを確認しておきましょう。
センチュリー21中央プロパティーは、これまで多くの共有持分に関するトラブルを解決してきた実績があります。共有持分の交渉ノウハウを多く有しており、スムーズな共有持分の売却が可能です。契約時には弁護士による契約書のチェックも行っているため、安心して売却できます。
売却後にトラブルが発生した際には、売主を徹底的に守る体制も整えています。その際の弁護士費用は完全無料です。
「共有持分を売却したいけれど売却後のトラブルが不安…」という人は、ぜひ当社へご相談ください。

この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。