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共有の一部分割|弁護士Q&A

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コンテンツ番号:2306

共有の一部分割

(参考:最高裁判所昭和62年4月22日)

質問兄弟ABCで父の土地を相続し、遺産分割協議で、3分の1ずつ共有の登記をしました。
そのうち、Cだけが急にお金が必要になり、「土地を分筆してくれ」と言い出しました。
どうやら、Cは分筆後、第三者に売る予定だそうです。
このようにABは共有のままでCの持ち分3分の1だけ分筆するということは可能でしょうか。

共有の一部分割で共有名義の土地をCのみ文筆した図

解説

民法256条:「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」

とあるように、各共有者は他の共有者に対して「いつでも」共有物の分割を請求することができます。また、

民法258条:「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
同条2項:「前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。」

とあるように、協議が整わない時は裁判所の手を借りて分割をすることができます。しかし、その分割の方法までは法律に規定がありません。
本件のように一部分割をすることが許されるのでしょうか。参考になる判例を紹介します。

♦参考判例①:最高裁判所昭和62年4月22日
判旨:「…現物分割をするに当たつては、当該共有物の性質・形状・位置又は分割後の管理・利用の便等を考慮すべきであるから、持分の価格に応じた分割をするとしても、なお共有者の取得する現物の価格に過不足を来す事態の生じることは避け難いところであり、このような場合には、持ち分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ、過不足の調整をすることも現物分割の一態様として許されるものというべきであり、また、分割の対象となる共有物が多数の不動産である場合には、これらの不動産が外形上一団とみられるときはもとより、数か所に分かれて存在するときでも、右不動産を一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも、現物分割の方法として許されるものというべきところ…」
♦参考判例②:最高裁平成4年1月24日判決
判旨:「多数の共有不動産について、民法二五八条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とすることも許されること、また、共有者が多数である場合には、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残す方法によることも許されることは、当審の判例の判示するところであり、その趣旨に徴すれば、分割請求をする原告が多数である場合においては、被告の持分の限度で現物を分割し、その余は原告らの共有として残す方法によることも許されると解するのが相当である。」

としています。判例では、現物分割の場合、綺麗に分けられない場合もあり、そのような場合は金銭の支払いによって調整することができるとしている点も重要です。
本件の場合上手く3分の1ずつ分筆できない場合も考えられ、そのような場合は過不足を金銭の賠償によって調整するようにしています。また、一部の共有者が現物分割により離脱し、その余は原告らの共有として残す方法によることも許されるとしています。

本件だと、C側から共有物分割請求として、土地の3分の2をABの共有とし、Cを残余地の単独の所有者とする方法(一部分割)も可能になります。また、持ち分の価格以上の現物を取得する共有者には、超過部分の対価を支払わせる方法を裁判所が命じることもできます。

たとえば、土地の形状の関係で、Cが、3分の1の価格以上の現物を取得する場合は、Cは、ABに超過分の支払いをすることになります。また、AとBの側からも、上記一部分割の方法により、Cの共有関係からの排除を裁判所に請求することもできます。

■詳しくは、下記ページもご覧ください。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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