不法行為や不当利得の制度を使って
共有トラブルを解決|トラブル事例|その他

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:1927

不法行為や不当利得の制度を使って
共有トラブルを解決

ご相談内容

質問Aは親が持っていた都内のアパートを兄や妹ら計4人で相続しました(持ち分割合は4分の1ずつ)。 管理自体は兄がしており、家賃の分配を一切してくれません。 どうにかして自己4分の1の分配を取りたいのですが、何かいい方法はありませんでしょうか。

4人で相続したアパートの家賃収入はすべて兄が得ていることをずるいと怒る相談者のイメージ

1. 不法行為に基づく損害賠償請求
2. 不当利得に基づく損害賠償請求
上記2つの方法により、金銭を回収することが考えられます。

総論

共有名義から得られる収益は、経費の負担と同様に持ち分割合に従って各共有者に分配されるのが原則です。それにもかかわらず、共有者の一人だけが賃料収入などを得て、一人で独占しているような場合には、不法行為や不当利得によって賃料相当額の金銭を請求することが可能になります。
以下、個別に見ていきましょう。

不当利得

(不当利得の返還義務)
民法703条:「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

兄は本来得ることができない家賃の総額の4分の3の不当に利得を得ています。そのため、不当利得に基づく損害賠償請求をすることができると考えらます。

不法行為

(不法行為による損害賠償)

民法709条:「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

兄が他の兄弟の分の家賃を得る行為は、他人(他の兄弟)の権利(家賃を得るという権利)を侵害しています。よって、兄には不法行為責任が発生しているといえます。他の兄弟らは、兄に対し不法行為に基づく損害賠償を請求することもできます。

不法行為と不当利得

不当利得と不法行為どちらでも損害賠償を請求できることには変わりはありませんが、実はその賠償請求できる範囲などに違いがあります。以下、見てみましょう。

不法行為と不当利得の違い

1. 精神的損害に対する賠償

不当利得返還では、慰謝料(精神的損害)までの損害賠償は認められないのに対し、不法行為では、慰謝料まで認められる可能性があります。

2. 弁護士費用

不当利得では認められませんが、不法行為では認められる可能性があります。
1、2が認められれば当然、請求できる金額も増えることになりますので、不法行為の方が賠償金額が多くなる可能性はあります。

3. 時効

1、2をみると不法行為に基づく損害賠償請求の方がいいように思えますが、消滅時効の期間を見てみると、

(債権等の消滅時効)

民法167条:「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)

民法724条:「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。…」

不当利得の場合、最後の賃料独占から10年が経つと請求ができなくなります。これに対し、不法行為構成だと損害及び加害者を知ったときから3年です。請求権の消滅時効の期間が異なり、場合によっては不法行為を根拠に損害賠償請求したくても、損害賠償請求権が消滅してしまっていることがあります。

どちらの構成で行くのか、また併用して請求するのか、状況に応じて臨機応変に対応することが重要になります。

共有名義不動産トラブル解決実績が2,500件以上 安心・納得の解決理由 詳しくはこちら

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら