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不法行為や不当利得の制度を使って共有トラブルを解決|弁護士Q&A

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不法行為や不当利得の制度を使って共有トラブルを解決

不法行為や不当利得の制度を使って共有トラブルを解決のイメージ

ご相談内容

Aは親が持っていた都内のアパートを兄や妹ら計4人で相続しました(持ち分割合は4分の1ずつ)。 管理自体は兄がしており、家賃の分配を一切してくれません。 どうにかして自己4分の1の分配を取りたいのですが、何かいい方法はありませんでしょうか。

ご相談のポイント

  • 賃料収益を独占する共有者がいるとき
  • 賃料請求権の法律構成
  • 自分で請求することに支障があるとき

①賃料収益を独占する共有者がいるとき

民法上、各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができるものであり(民法249条1項)、共有物から生じた賃料収益についても、持分の割合に応じて取得する権利があります(民法89条2項類推)。

そのため、賃料収益を独占している共有者がいる場合は、他の共有者は、持分の割合に応じて、賃料の分配を請求することができます。

本件の場合、ご相談者様はお兄様に対して、賃料収益の4分の1を分配して支払うように請求する法律上の権利があります。

②賃料支払請求権の法律構成

前述の賃料支払請求権の法的構成としては、(1)不当利得返還請求権(民法703条・704条)と、(2)不法行為に基づく損賠賠償請求権(民法709条)が考えられます。法律上の要件を満たす限り、いずれの法律構成を選択するかは自由です。

ただし、両者の法律上の扱いは、完全にイコールというわけではありません。

最も大きな違いは、消滅時効に関するルールです。

まず、(1)の不当利得返還請求権は、「権利を行使できることを知った時から5年」若しくは「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い時期で時効で消滅します(民法166条1項)。

これに対し、(2)の損賠賠償請求権の消滅時効は、「損害及び加害者を知った時から3年」若しくは「不法行為の時から20年」のいずれか早い時期をもって完成します(民法724条)。

したがって、事案によっては、どちらの法的構成を取るかによって、消滅時効の成否の結論が分かれることになります。

もし、(1)の「権利を行使できることを知った時」と(2)の「損害及び加害者を知った時」が一致するケースであれば、消滅時効の面では(1)を選択する方が有利(消滅時効の完成が遅くなる)ということになります。

他方、相手方に支払請求できる金銭の範囲という点から比較すると、(2)の構成の方が有利な面があるとも言えます。

すなわち、(1)の不当利得返還請求は、相手が現実に得ている財産的な利益の返還を請求するものなので、本件で請求できる範囲は、賃料の分配に限られます。

これに対し、(2)の損害賠償請求の場合は、財産上の損害(賃料の分配)にとどまらない精神的な損害(慰謝料)や、裁判に要した弁護士費用なども、不法行為と相当因果関係のある範囲では、損害として請求することが可能です。

もっとも、賃料に関する不当利得返還請求とそれ以外の損害の損害賠償請求とを同時に行なうという選択肢も可能です。

いずれにせよ、法律上の効果の異同を踏まえて、事情に応じて自身にとってベストな請求の方針を立てることが肝要です。

③自分で請求をすることに支障があるとき

前述のとおり、ご相談者はお兄様に対して、賃料収益の4分の1の支払いを請求することが法律上可能です。

しかし、権利を行使するということは、その権利を実現するための負担を、権利者が背負うことを意味します。

ご相談者様がお兄様に対して賃料の分配を請求しても、お兄様が任意の支払いに決して応じようとしない場合は、ご相談者様は、お兄様を相手に裁判を提起する必要が生じます。

けれども、裁判を行なう場合は、時間・費用の面での負担が大きくなりますし、また、原告・被告の立場に立って正面から争うことで、お兄様との個人的な関係性が決定的に悪化してしまうリスクもあります。

ご自身で請求をする場合には、こうした負担・リスクを背負うことを、事前に認識しておく必要があります。

けれども、中には、当然お金は回収したいと思っているが、かといって、そこまでの負担・リスクを自分で背負いたくない、という場合もあるかと思われます。

そのような場合には、賃料請求権を第三者に債権譲渡するという方法が考えられます。

この場合、受け取れるお金(譲渡代金)は、請求権の額面から割り引かれてしまうものの、前述のような負担・リスクからは解放されます。

なお、仮に、共有持分を第三者に売却されるような場合は、併せて賃料請求権を共有持分の買主に債権譲渡するという選択肢も考えられます。

まとめ

賃料収益を独占する共有者がいるとき、他の共有者は、持分の割合に応じた賃料の分配を請求することができます。

この賃料請求権の法律構成としては、不当利得返還請求権と損害賠償請求権が考えられるところ、消滅時効のルールなど、法律上の効果に違いもあります。

裁判の負担などを考慮して、自分で請求を行なうことに支障がある場合は、共有者に対する賃料請求権を第三者に債権譲渡する方法も考えられます。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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