離婚したい夫による共有物分割請求|トラブル事例|離婚

更新日:
作成日:
コンテンツ番号:1922

離婚したい夫による共有物分割請求

質問現在妻と50%ずつ土地と建物の所有権を持っておりますが、離婚協議の際に売却に関する妻の了承を得られず、共有物の分割請求訴訟を提起してでも、分割をしたいと思っていますが可能でしょうか。

共有物の分割請求書が権利濫用として認められない可能性が高いです。

離婚届のイメージ

詳細解説

(裁判による共有物の分割)
民法258条1項:「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」
同条2項:「前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。」

確かに、共有物の分割について協議が整わない時は、裁判所の手を借りて分割請求を請求することは認められていますが、場合によってはそれが、権利の濫用と判断され認められないケースがあります。参考判例を見てみましょう。

♦参考判例:東京高判平成26年8月21日

判旨:「民法258条に基づく共有者の他の共有者に対する共有物分割権の行使が権利の濫用に当たるか否かは,当該共有関係の目的,性質,当該共有者間の身分関係及び権利義務関係等を考察した上,共有物分割権の行使が実現されることによって行使者が受ける利益と行使される者が受ける不利益等の客観的事情のほか,共有物分割を求める者の意図とこれを拒む者の意図等の主観的事情をも考慮して判断するのが相当であり(最高裁判所平成7年3月28日第三小法廷判決・裁判集民事174号903頁参照),これらの諸事情を総合考慮して,その共有物分割権の行使の実現が著しく不合理であり,行使される者にとって甚だ酷であると認められる場合には権利濫用として許されないと解するのが相当である。」

とあります。例えば、別居中の夫婦が自宅の土地建物を共有しており、妻と子どもはその家に住んでおり、夫が妻に対して共有物分割請求をした場合、ここで、もし競売(民法258条2項)が認められたら、妻と子どもは住む家を失うことになります。

競売になったら妻子が住む場所を失うことなど理由として、夫の共有物の分割請求は権利濫用と認定される可能性が非常に高いです。個別の状況によって結論がどうなるかは、一概には言えませんが、判例の基準にあるように、権利の濫用に当たるか否かは、当該共有関係の目的、性質、当該共有者間の身分関係及び権利義務関係などを考察した上で下記1、2の両者を考慮し判断されます。

  1. 客観的事情:共有物分割権の行使が実現されることによって行使者が受ける利益と行使される者が受ける不利益など
  2. 主観的事情:共有物分割を求める者の意図とこれを拒む者の意図など

つまり、客観的には分割請求が認められてもおかしくないケースであっても、恨みや攻撃の主観的事情があれば、権利の濫用として認められない可能性があるということです。

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら