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共有者の1人の持分割合を超える部分の
不当利得返還(最判平24.12.21)|弁護士Q&A

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作成日:

共有者の1人の持分割合を超える部分の
不当利得返還(最判平24.12.21)

ご相談内容

質問ABCでそれぞれ3分の1ずつ土地を共有しています。 ところが10年前から今日に至るまで、Aがすべての土地を占拠し自己の家を建てて住み続けています。 そこで、家賃相当の不動利得返還請求を提起しようと考えていますが、10年先程度まではこの現状が続くと考え、1. 過去10年分と、2. この先10年分の賃料相当の不当利得返還請求をしようと考えていますが、認められますか。

共有者の1人の持分割合を超える部分の不当利得返還のイメージ

過去から今日までの不当利得返還請求権については認められる可能性が高いです。

詳細解説

不当利得返還請求権

(不当利得の返還義務)
民法703条:「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

本件Aは土地の利用につき、独占して使用してしまっています。そのため、Aは全部を利用する法律上の原因はなく、BCの財産によって利益を得て、BCに対して土地を利用できないという損害を与えてしまっています。

よって、AはBCに対して地代相当の金銭を支払う義務が生じます。BCらがAに払って下さいと言って素直に応じてくれればよいのですが、そう簡単にはいかないでしょう。
そこで、話し合いで解決できない場合、民事訴訟を提起し、裁判所の手を借りて金銭を得ることになります。

給付の訴え

訴えには、確認の訴えや取消の訴えなどがありますが、ここでは、不当利得に基づいて、金銭の給付を求める訴訟なので、給付の訴えを提起することになります。

  • 給付の訴えとは原告が被告に対して有する実体法上の給付請求権を主張し、裁判所に対して被告に給付を命じる判決を求める訴え。

給付の訴えには以下の2種類があります。

  1. 現在給付の訴え

    既に履行期の到来した給付請求権について被告に給付を命ずる判決を求める訴え

  2. 将来給付の訴え

    口頭弁論終結後に履行期の到来する給付請求権について被告に給付を命ずる判決を求める訴え

1の現在級の訴えは、すでに履行期(弁済期)が到来しているので、当然に訴えの利益は認められます。それでは、2の将来給付の訴えはどうでしょうか。

将来給付の訴え

(将来の給付の訴え)

民事訴訟法135条:「将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。」

将来給付の訴えは、口頭弁論終結後に履行期を迎える請求権をあらかじめ請求する場合を言います。
しかし、将来に関することは確定的なことは誰にも分りません。それは裁判所でも一緒です。いくらこのままの状態が続きそうであっても、将来のことは裁判できないのが原則です。

何があるか分からないことを事前に裁判することは、当事者にとっても負担になりますし、裁判所にとっても当然負担になります。
一方、ほぼ間違いなくこの状況が続きそうだという場合には、将来給付の訴えを認めた方が当事者や裁判所にとっても利益になる場合があります。
その要件として、「あらかじめその請求をする必要がある場合に限り」と限定的には認めています。

「あらかじめその請求をする必要がある場合に限り」とは

♦最大判昭和56年12月16日判決(大阪国際空港事件判決)
要約:「1.請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が現に存在し、その継続が予測されること
2.右請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られること
3.これについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても格別不当とはいえないこと」

が挙げられています。この判例は将来給付の訴えの際、必ず出てくると言っても過言ではありません。
共有持分との関係では以下の判決が出ています。

♦参考判例:最判平24年12月21日
判旨:「共有者の1人が共有物を第三者に賃貸して得る収益につき,その持分割合を超える部分の不当利得返還を求める他の共有者の請求のうち,事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は,その性質上,将来の給付の訴えを提起することのできる請求としての適格を有しないものである」

判例は、共有者の一人が共有不動産を第三者に賃貸している事例で、訴えの利益を欠き将来給付の訴えを認めませんでしたが、本件事例のような、土地上に共有の一人が家を建てて独占している場合、賃貸とは異なり、将来給付が認められる可能性は十分にあります。

すぐに建物を排除することは考えられにくいためです。もちろん、この点についてはBC側で立証する必要はあります。

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

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