共有持分の取得で発生する「不動産取得税」とは?
共有持分の取得で発生する「不動産取得税」とは?

目次
不動産取得税は、土地や家屋などの不動産を取得した際に、その不動産がある都道府県に納める税金です。
不動産の取得時に一度だけ課税されますが、たとえ短期間の所有であっても取得したからには税金を納めなければいけません。
不動産の取得経緯はさまざまで、共有名義で所有するケースも少なくありません。
では、共有持分を取得した場合、不動産取得税の扱いはどうなるのでしょうか?
この記事では、共有名義不動産における不動産取得税の基本から、具体的な減免方法や納付方法まで併せて解説します。

不動産取得税とは
不動産の取得時に都道府県に納める税金を不動産取得税と言います。
しかし、不動産を取得するきっかけはさまざまです。
ご自身のケースが課税対象に当てはまるのかが気になるところではないでしょうか。
ここでは、課税対象となる「取得」の定義と、固定資産税との違いを解説します。
課税対象となる「取得」の定義
不動産取得税における「取得」とは、売買や建築(新築・増築・改築)だけでなく贈与・交換なども含まれ、原因を問わず不動産の所有権を得ること全般を指します。
不動産取得税では、取得の原因が売買のような有償の譲渡でも、贈与のような無償の譲渡でも、取得すれば関係なく課税され、新たな所有者に納税義務が発生します。
取得時に一度だけ課税される税金なので、長期間所有しても毎年課税されることはありません。
しかし、逆に言えば短期間でも所有すれば不動産取得税が課税されます。
また、不動産を取得すると所有権の登記をしますが、不動産取得税において登記の有無は関係ありません。
登記をしていなくても、取得の事実があれば課税対象となります。
このように有償・無償に関わらず不動産を取得すれば課税される不動産取得税ですが、!相続によって不動産を取得した場合は非課税!です。
ただし、遺言によって法定相続人以外の人に財産を遺す特定遺贈や、生前贈与、死因贈与の場合は不動産取得税がかかるので注意しましょう。
固定資産税とのちがい
不動産に関係する税金には固定資産税もあり、不動産取得税と混同されがちです。
しかし、不動産取得税と固定資産税はまったく別のものです。
課税主体や課税のタイミングが異なり、それぞれの特徴は次のようになります。
課税主体 | 課税のタイミング | 課税の継続性 | |
不動産取得税 | 都道府県 | 不動産を取得したとき | なし (取得時のみ) |
固定資産税 | 市町村 | 毎年1月1日時点 | あり (所有している限り毎年) |
不動産を取得するとまず不動産取得税が一度だけ課税され、翌年以降は1月1日時点で所有していると固定資産税が毎年課税される仕組みです。
固定資産税において、課税のタイミングが1月1日である点には注意しなければいけません。
なぜなら、不動産の取得はいつでも可能ですが、固定資産税は1月1日の所有者に課税されるからです。
例えば、Aさんが長年所有していた土地をBさんに7月1日に売却したとします。
その年、Aさんは6ヶ月しか所有していませんが、その年の固定資産税はAさんに課税され、Bさんには課税されません。
このように年の途中で不動産の所有者が変わっても、固定資産税が課税されるのは1月1日時点の所有者です。
ただし、実務上はこれでは不公平なため、不動産の売買では売主と買主の間で所有期間に応じて固定資産税を精算するのが一般的です。

共有名義不動産の不動産取得税は誰が払う?
地方税法では、共有名義の不動産に関する税金の支払いについて、以下のように定められています。
共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。
つまり、共有名義不動産の不動産取得税は、共有者全員で連帯して納付しなければいけません。
これは、それぞれの持分割合に応じた税額だけを払えば良いというものではありません。
共有者それぞれが、不動産取得税の全額に対して納付義務を負うのです。
例えば、A・Bの共有名義不動産(持分割合は各1/2)で、不動産取得税が20万円だったとします。
この場合、それぞれが10万円を払えば済むのではなく、AとBの両者が20万円全額を納める連帯義務を負います。
万が一Aが自身の負担分を払わなければ、BがAの分まで含めて20万円を納めなければいけません。 (もちろん、その逆も然りです)
不動産取得税の納税通知書は共有者全員に送付されますが、実際に税金を納めるための納付書は代表者1人のみに送られるのが一般的です。
そのため、代表者が全額を立て替えて納付した後に他の共有者に請求するのか、あるいは共有者からそれぞれの負担額を集めてから納付するのかなど、共有者間で事前に協議しておかなければ、トラブルの原因になります。
このような納税に関するトラブルは、共有者間の人間関係を悪化させる一因となり得ます。
もし、他の共有者との話し合いが難しい、または将来的なトラブルを避けたいとお考えでしたら、共有持分トラブルの専門家へ相談することをおすすめします。

共有名義で不動産取得税が課税される2つのケース
共有名義の不動産において不動産取得税が課税されるケースとしては、以下の2つが代表的です。
- 共有持分を新たに取得した場合
- 共有物を分割した場合
ケース①:共有持分を新たに取得した場合
売買や贈与、交換などによって、第三者や他の共有者から共有持分を新たに取得した場合は、不動産取得税の課税対象となります。
これは、単独名義の不動産を取得した場合と同様に、所有権の「取得」とみなされるためです。
例えば、親が持つ不動産の共有持分の一部を生前贈与されたり、兄弟が持つ共有持分を買い取ったりした場合などがこれに該当します。
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ケース②:共有物を分割した場合
不動産を共有名義のままにしていると活用しにくいため、共有状態を解消するために「共有物分割」を行うことがあります。
この共有物分割によって不動産を取得した場合、不動産取得税が課税されるかどうかは分割の方法によって異なります。
原則非課税となる「持分割合に応じた分割」
まず、共有している不動産を、それぞれの持分割合に応じて現物で分割(現物分割)した場合は、原則として不動産取得税は課税されません。
国税庁も、持分に応じた現物分割については「譲渡はなかったものとして取り扱う」としています。
個人が他の者と土地を共有している場合において、その共有に係る一の土地についてその持分に応ずる現物分割があったときには、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱う。
引用元:国税庁 共有地の分割33-1の7
これは、共有している土地を現物分割しても、それぞれの持分に応じた分割であれば単純に「分けただけ」であり、お互いに新たな資産を得たわけではないので「取得」にはあたらない、ということです。
例えば、A・Bが1/2ずつの持分割合で100㎡の土地を共有していた状況で、持分に応じて土地を2つ(50㎡ずつ)に現物分割(分筆)したとします。
これにより、A・Bそれぞれの単独所有の形に変わりますが、新たに不動産を取得したわけではないため土地の譲渡はなかったと扱われ、不動産取得税は非課税となります。
ただし、これは持分割合に応じた現物分割で、分けた土地の面積も価値もA・Bともに同一だったという点がポイントです。
課税対象となる「『時価比率』が持分に応じていない分割」
先述の例では、A・Bで土地を現物分割した際に面積も土地の価値も同一に分けています。
そのため、不動産取得税は課税されません。
しかし、土地の面積は1/2ずつに分けたものの、!Bの土地の時価の方が高いというケースでは、Bに贈与税や不動産取得税がかかる可能性があります!。
土地は道路に面しているか否かなどでその価値は大きく変わるため、このようなことが起こり得るのです。
仮にAが得た土地の価値が1,000万円、Bが得た土地の価値が3,000万円だったとしましょう。
面積での分割比率は1:1だったとしても、土地の価値(時価)では1:3になっています。
これではBの方が持分以上に資産を得ていることになるため、その超えた部分に対して不動産取得税がかかってしまうのです。
このように、共有不動産をご自身たちだけで分割してしまうと、思わぬ税金が課されてしまうことにもなりかねません。
また、持分の割合を上回った部分については贈与税の課税対象にもなるので注意しましょう。
ご自身の持分の適正な価値を把握するためにも、まずは専門家による査定をおすすめします。
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共有持分取得時に使える不動産取得税の減免方法
不動産取得税の税額は、原則として以下のように計算されます。
不動産取得税額=固定資産税評価額×税率(原則4%) |
ただし、通常は上記のように計算しますが、2027年3月31日までは特例措置が適用され、土地や家屋(住宅)は税率が3%に軽減されます。
また、新築住宅や一定の条件を満たす中古住宅については、課税標準となる固定資産税評価額から一定額(例:新築の場合は1,200万円)を控除のうえ税額が計算されます。
さらに、宅地として評価される土地であれば、特例により固定資産税評価額を1/2に減額して計算します。
これらの特例措置には適用要件があるため、ご自身のケースで利用できるかどうかが分からない場合は、共有持分の取り扱い経験が豊富な不動産会社に相談しましょう。
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共有名義の場合の不動産取得税の計算方法
先述したとおり、不動産取得税は下記のように計算されます。
不動産取得税額=固定資産税評価額×税率 |
税額を計算するに当たり、不動産の売買価格や建築工事費など取得にかかった価格は直接関係ありません。
固定資産税評価額をもとに計算されます。
固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書や、市区町村の役所で取得できる固定資産評価証明書で確認しましょう。
2027年3月31日までは特例措置が適用されるため、税率は次のようになります。
不動産の種類 | 税率 |
土地 | 3% |
家屋 (住宅) | 3% |
家屋 (住宅以外) | 4% |
さらに、先述したとおり不動産取得税には軽減措置があります。
一定の条件を満たすと固定資産税評価額を減ずる課税標準の特例、そして宅地評価土地に対する減額措置です。
これらを踏まえると、不動産取得税の税額は最終的に次のように計算されます。
不動産取得税額=(課税標準額※×税率)-減額措置による軽減額 |
※課税標準額とは、課税標準の特例適用後の価格のこと。
不動産の評価額は、不動産取得税だけでなく、あらゆる税金の計算の基礎となります。
まずはご自身の持分がいくらになるのか、正確な価値を把握しておくことが重要です。
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不動産取得税の納付方法(3ステップで解説)
不動産取得税の納付は、申告書の提出から始まり、以下のようなステップが必要です。
- 申告書を提出する
- 軽減の申告をする
- 納税通知書を受け取り納税する
Step1. 申告書を提出する
まずは、不動産を取得してから一定期間内に、都道府県税事務所へ申告しなければいけません。
申告期間は、30日もしくは60日と定めているところが多く、都道府県によって異なります。
不動産取得税の申告書は自動的に送られてくるのではなく、自分で入手しなければいけません。
各都道府県のウェブサイトや税事務所のウェブサイトからダウンロードでき、記載例もあるので確認しておきましょう。
また、申告書の記入には地番や地積、床面積などの情報が必要になるため、登記書類などを用意して記入する必要があります。
提出方法は、県税事務所の窓口への持参、もしくは郵送で受け付けているところが多くあります。
Step2. 軽減の申告をする
不動産取得税の軽減措置を受けるには、原則として同時に軽減の申告もしなければいけません。
申告先は不動産取得税の申告先と同じ、都道府県の税事務所です。
軽減措置の申告書も、不動産取得税の申告書と併せてダウンロードできるようになっています。
申告期限は条例で定められており、原則として期限内に手続きしなければ軽減が受けられないので注意しましょう。
Step3. 納税通知書を受け取り納税する
不動産取得後、早ければ2~3ヶ月、遅くても1年程度を目安に納税通知書が送られてきます。
納税通知書が届いたら、記載の納期限までに金融機関やコンビニ、クレジットカードなどの決済方法で納めます。
解説してきたように、不動産取得税は申告を必要としますが、実際は未申告のケースも少なくありません。
未申告であっても、登記をすることによって法務局から税事務所に通知され、納税通知書が送られてくるケースが多くあります。
このように、申告しなくても登記をすることで納税通知書が送られてきますが、取得や軽減の申告がされていない場合、納税通知書に書かれている税額は軽減が適用されていない可能性があるので注意しなければいけません。
登記された情報だけでは、軽減措置の適用要件を満たしているか判断できない場合があるからです。
確実に軽減措置を受けるには、やはり申告が必要です。
しかし、軽減されていないことに気づかなかった場合や、軽減措置そのものを知らずに納付してしまった場合は、後から軽減を申告し、不動産取得税の還付を受けられる可能性はあります。
地方税法において、払い過ぎた税金の還付を請求する権利は5年間有効と定められており、これを理由に還付を請求できます。

まとめ
共有名義不動産の不動産取得税について解説しました。
共有名義不動産の不動産取得税は、共有者全員で連帯して納付しなければいけません。
また、共有物の分割により不動産を取得した場合は、課税される場合と課税されない場合があります。
持分割合に応じた分割であれば、新たに不動産を取得したとはみなされず、不動産取得税は課税されません。
しかし、時価比率が持分に応じていない分割の場合は、不動産取得税や贈与税が課税される恐れがあります。
当社センチュリー21中央プロパティーは、共有持分を専門に取り扱う不動産仲介会社です。
社内弁護士や各種士業と連携し、これまでに4万件以上の共有持分トラブルを解決してきた豊富な実績がございます。
共有者間での話し合いが難しい場合や、最適な分割方法、ご自身の持分の売却などでお悩みの際は、ぜひ一度お気軽にセンチュリー21中央プロパティーへご相談ください。

この記事の監修者
税理士
ワールド法律会計事務所 代表
東京税理士会 日本橋支部所属登録番号 117651
ワールド法律会計事務所の代表を務める、相続税のスペシャリスト。特に共有持分の相続案件で多く相談される相続税が得意分野。
生前贈与や親族間の不動産売買など、多岐にわたる相続対策にも豊富な経験と実績を持つ。税務の専門知識と実践的なアドバイスで、複雑な税金問題をサポート。