共有名義不動産のメリットとデメリット|共有持分とは|その他

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共有名義不動産のメリットとデメリット

夫婦でマイホームを購入した場合

メリット

税制上の優遇を受けられる

それぞれの収入に対して「住宅ローン控除」が適用されます。

「住宅ローン控除」とは?

住宅ローンの年末残高の1%が10年間減税される制度。(減税されるのは所得税と住民税)夫婦が共働きの場合に共有名義にすると、夫と妻それぞれの所得税、住民税に対して住宅ローン控除が使えるため、単独名義の時に比べると、より減税額が多くなります。

それぞれに「居住用財産の買換え特例」→「3,000万特別控除」が適用されます。

「3,000万特別控除」とは?

居住用不動産を売却した時、譲渡益に対して3,000万円分を控除できるというもので、高額不動産取引の場合、税金のメリットがあります。これが通称「3,000万円控除」と呼ばれているものです。
譲渡益(譲渡所得)とは売却価格から購入価格を差し引いて利益が出ている部分のことです。

売却時の特別控除がそれぞれ共有者ごとに適用されますので、自宅を売って6,000万円の利益が出ても、夫婦共有名義だと最大(合計3,000万+3,000万=6,000万円)まで税金がかからないことになります。さすがにマイホームの売買で6,000万円の利益が得ることは少し現実的ではないかもしれませんね。このように共有名義のメリットは税制上の恩恵しかありません。

  • ただし、「3,000万円特別控除」と「住宅ローン控除」は、原則どちらか一方しか使えないことに注意。(併用不可)
不動産イメージ

デメリット

共有名義で住宅ローン控除を適用する際の注意点

住宅ローン控除を夫婦それぞれが適用するためには、夫と妻が別々に独自の住宅ローンを組むか、夫婦のうちどちらか一方が「連帯債務者」となって住宅ローンを組む必要があります。
実態として多くの夫婦はお互いが、お互いの住宅ローンの連帯保証人になる「ペアローン」を組みます。

  • 離婚問題を処理するときに一番厄介(解決困難)なのが、このペアローン。
    離婚をしてもお互いの連帯保証の地位は解消されないからです。つまり離婚後も相手がローンを完済するまで連帯保証人としての義務は付きまとうことになるのです。

デメリットのまとめ

  1. 共有者の承諾を得ずに売却することができない
  2. 共有者が亡くなった場合、権利関係が複雑に
  3. 離婚手続きを進める場合、大きな弊害となる。
  4. 諸費用が倍かかる
  5. 贈与税がかかる可能性

それぞれのデメリットについて解説していきます。

(1)共有者の承諾を得ずに売却することができない

持分の割合(9:1など)が均一でなくても不動産全体を売却するときには、共有名義(共同)になっている全員分の署名・捺印が必要になる。

(2)共有者が亡くなった場合、権利関係が複雑に

共有名義(共同名義)の一人がなくなった場合、その権利は法定相続人に枝分かれします。相続が発生すると、共有者がどんどん増えてしまい、共有の権利関係がより複雑になってしまい、“負の連鎖”が始まっていきます。

例えば、A・B・Cが不動産が共有していましたが、Aが死亡しその相続人甲乙が法定相続分で相続した場合、甲乙らとBCが共有関係になってしまいます。更にBが死亡しその相続人が相続した場合には、Bの相続人らと更に共有になります。

このように相続を繰り返すことで共有関係が複雑になってしまいます。共有者に相続が起きた場合は、共有関係の整理をするいいタイミングと言えるでしょう。

(3)離婚手続きを進める場合、大きな弊害となる。

夫婦でマイホームを購入する時に、離婚を前提にシュミレーションする夫婦はまずいないでしょう。いざ離婚する場合、不動産を2つに割って住むことはできないので、結果として売却しなければいけなくなりますが、通常 財産分与の問題が大きく関わってきますので一筋縄ではいきません。

(4)諸費用が倍かかる

共有名義(共同名義)ということは、登記する際には当然その人数分かかってしまい、そして住宅ローンを利用する際にも、その諸費用は人数分に応じてかかってしまいます。

(5)贈与税がかかる可能性

家を共有名義(共同名義)に、しいている場合に他の共有者の収入が無くなるようなことがあると、一共有者が他の共有者の分も住宅ローンを払う必要性が出てくる場合もあります。これは他の共有者への贈与とみなされ贈与税の対象となることがある。

このように共有者同士の意思がズレが生じると、あっという間にトラブルに発展してしまう共有名義不動産。一度、話がこじれると共有者全員の協議が纏まることは非常に困難です。親族間の微妙な関係性や、過去の出来事による遺恨などが一気に噴き出したり、金銭問題が絡むと、負のスパイラルに陥り、離婚協議の中で親権を巡る問題も泥沼化してしまいます。

相続手続きで“とりあえず共有名義”にすることは避け、税制上の優遇を目的とした「ペアローン」を組む場合も、慎重に取り組みましょう。

この記事の監修者

福島 健太フクシマ ケンタ

税理士

税理士。東京税理士会品川支部所属。日本税務会計学会訴訟部門所属。福島健太税理士事務所代表。不動産デベロッパーから税理士に転身した経歴をもつ不動産と税のスペシャリスト。共有持分で不動産を相続される方が相続税を相談する税理士として多くの顧客を得る。趣味は釣り。

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