共有名義 解消|共有持分とは|その他
共有名義 解消
目次
共有持分を解消する方法
状況に応じて最適な方法は異なってきますが、共有持分を解消する代表的な方法は以下の通りです。
- 全部売却
- 一部売却
- 持分移転
- 持分買い取り
- 持分放棄
- 土地の分筆
- 共有物分割訴訟
- 交換
基本的には、売却するか放棄するか、現実的に分割するかという形で共有状態を解消することになります。自分の持分であれば、自己の判断のみで売却や譲渡することができますが、他の共有者の持分については、他の共有者の同意がなければ売却や譲渡をすることができません。
(共有物の変更)
民法第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
それではそれぞれの方法について詳しく解説していきます。
- 原則不動産を想定して解説しているため、車などの動産の場合は異なる場合もあります点はあらかじめご了承ください。
1. 全部売却
一つ目の方法は、共有不動産の全部を第三者に売却する方法です。一番高額で売却できる可能性が高く、各共有者が手にできる金銭も多くなりますが、共有者全員の同意がなければこの方法を採ることができません。
共有者の1人、それも持分割合がわずかであっても、その人が同意してくれなければ全部を売却することはできませんので、注意が必要です。もし全員の合意が得られた場合は、不動産会社を通じて買い手を探すことになります。

2. 一部売却
共有者全員の同意を得られない場合、説得を試みたり、共有物分割請求訴訟を裁判所に提訴したりすることもできますが、時間と労力を要しますし、何より訴訟の場合は当事者が希望していない分割方法の判決が下されてしまう可能性もあります。全部売却が難しい場合は、自己の共有持分のみを第三者に売却する方が、素早く共有関係から離脱できます。
当事者の関係性や、不動産の状況によって最適な方法は変わってくるため絶対にこの方法がよいという訳ではありませんが、手っ取り早く共有状態を解消したいという場合には一部売却がおすすめです。その際は、買取業者に安値で買い取られないよう、共有持分に詳しい専門業者を利用することを推奨いたします。
3. 持分移転
自分以外の共有者に持分を移転するという方法もあります。例えば、ABが2分の1ずつ共同名義で不動産を所有していて、Aが共有状態を解消したい場合、Aの2分の1の持分をBに移転する(買い取ってもらう)のです。Aの持分をBに移転することで、Aは共有状態から解放され、同時にBも共有状態から解消されます。条件面などの折り合いがポイントになります。
4. 持分買い取り
持分移転とは逆に、自らが他の共有者の共有持分を買い取る方法です。上記例では、AがBの共有持分を買い取ることで、Aは単独で不動産を所有することになり、Bは共有関係から離脱します。持分移転同様、条件面が重要になってくるでしょう。
5. 持分放棄
自分の持分を放棄することで共有状態を解消する方法もあります。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
共有者の一人が共有持分を放棄した場合、その持分は他の共有者へ同じ割合で帰属します。特定の誰かに持分を取得させることはできません。放棄自体は他の共有者の同意なくすることができますが、登記をする場合は放棄者と持分を移転される者が共同で行う必要があります。
- 登記は第三者対抗要件で、登記がないと自己の所有権を第三者に主張することができません。そのため、実質的には、他の共有者の同意がなければ放棄もできないという形になっています。
また持分移転・持分買取とは異なり、持分放棄は無償で行われるため、贈与税がかかってくる可能性があります。
6. 土地の分筆
土地の分筆は現物分割の方法の一つで、土地を共有持分の割合に応じで、実際に分けてしまう方法です。例えば、100平米の土地をABが2分の1ずつの持分割合で共同所有していたとしましょう。これを持分に応じて分けることで、ABはそれぞれ50平米の土地を単独の土地として所有することができます。
分筆登記がなされると、分筆された土地には新たな地番がつけられ、独立した土地として登記されます。公図(地図)上も分筆した線が引かれ、新たな地番が記載されることになります。
7. 共有物分割訴訟
訴訟により共有物を分割する方法です。例えば、Aは現物分割を希望し、Bは全部売却を希望し、折り合いがつかない場合に、裁判所にその分割方法の判断をゆだねる方法です。
共有物分割訴訟の場合には、裁判所の裁量権の幅が多く、当事者が主張していない分割方法の判決が下ってしまうこともあります。訴訟をするということは、それだけ時間や費用も掛かってしまうため、共有物分割訴訟を提起するメリットはあまり多いとは言えません。
8. 交換という方法も
例えば、兄弟で複数の不動産を共有しており、先祖代々の土地で売却したくないが整理はしないといけない…という場合、共有持分を交換して、それぞれ独立した不動産として所有する形態にすることも可能です。

上記のようにすることで、完全な所有権としてABCが甲乙丙土地を所有することができます。ただ実際にはそう簡単にいかず、共有の解消方法として採用されるケースはあまり多くありません。土地の場所や、面積、何より価値が違う等、条件提示の仕方、交渉の仕方が非常に重要になってきます。
共有者との交渉や話し合いが難しい場合はどうする?
1. 共有者が認知症での場合
成年後見制度を利用する
現在、民法では成年後見制度という制度があります。補助人や保佐人、後見人を選定し、その者を代理としてたてることで売買等の話を進めていくことができます。本人に意思決定能力や判断力がある場合は「任意後見制度」を、本人の意思決定能力や判断力が低下している場合は「法定後見制度」を利用します。それぞれ後見業務の開始手続きは異なるため、成年後見制度を利用する場合には専門家への相談をおすすめします。
(後見開始の審判)
民法第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
2. 共有者がどこにいるかわからない場合
家庭裁判所の許可をもらう
利害関係人の請求により、家庭裁判所に必要な処分を命じてもらうことができます。
(不在者の財産の管理)
民法第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
3. 共有者が死亡した場合
共有物はその共有者の相続人が相続します。
相続人がいない場合には、他の共有者に帰属するのが通常です。ただし相続人がいない場合でも、共有者に特別縁故者がいた場合はそちらが優先されます。特別縁故者とは生前被相続人の世話をしていたなど、被相続人との関係が親密であった人のことです。民法は残された財産を相続する人物がいない場合、その財産の一部もしくはすべてを特別縁故者が取得できる制度を用意しています。
(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
共有を解消する方法はいくつかありますが、その状況によって最適な方法は異なってきます。
共有者同士で同意していても、他にもっと利益になる方法もあるかもしれません。一度専門家に相談してみるのもよいのではないでしょうか。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。