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登記引取請求とは

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登記引取請求とは

不動産登記権利情報のイメージ

質問私(A)は相続により共有山林を相続しました。しかし、固定資産税の納税代表者となっているらしく税金がうちに来ています。
登記名義人は私ですが、本来の権利者は別の者(B)なので、支払いたくありません。
Bに登記を移したいのですが、なかなか応じてくれません。何か良い対処方法はないでしょうか。

詳細解説

共有持分を売却する

(共有物に関する負担)
民法253条:「各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。」

上記にあるように、不動産を共有している場合、「その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う」必要があり、これは税金についても同様になります。確かに納税通知は代表者に届きますが、税金の負担義務は共有者全員あります。(基本的に納付書は代表者一人にしか送付してくれません)

そのため、他の共有者へは代表者からその金銭の請求を改めてする必要が出てきてしまいます。Aは「支払いたくない」とありますが、基本的にはそれは難しいとお考え下さい。

共有状態の不動産は、税金関係だけではなく、煩雑なことが多いです。他の参考事例でも解説していますが、基本的には早く整理することを推奨いたします。他の共有者や第三者に買い取ってもらったり、持ち分を放棄したりなど、その整理の仕方はいろいろあります。

※共有持分のみ売却する事が可能です!詳しい解説はこちらから

共有持分イメージ

登記引取請求の行使

本件事例では、登記名義人はAですが本来の権利者はBということになっています。ただ、BはAからの移転登記請求について応じてくれないとのことです。この点、登記を移転する場合には、共同申請の必要があります。参考となる不動産登記法の条文を見目見ましょう。

※不動産登記法60条

(共同申請)

不動産登記法60条:「権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。」

このように、原則としてはAとBが一緒に登記の変更手続きをしなければならないのです。そうなってしまうと、共同申請者の一人が協力してくれない場合、移転登記ができないこととなってしまいます。そのような場合にどうすればよいか、実は判例によって「登記引取請求権」が認められており、これを利用することで解決できる可能性があります。

詳細解説

実態にそぐわない登記状態の事例について下記判例が参考になります。

♦最高裁判所昭和36年11月24日

判旨:「真実の権利関係に合致しない登記があるときは、その登記の当事者の一方は他の当事者に対し、いずれも登記をして真実に合致せしめることを内容とする登記請求権を有するとともに、他の当事者は右登記請求に応じて登記を真実に合致せしめることに協力する義務を負うものというべきである。…」

このように、他の当事者は「真実に合致せしめることに協力する義務を負ものというべきである。…」とあるように、真実と合致するような登記にする義務を負っています。

不動産登記権利情報イメージ

放棄する場合

持ち分を放棄した場合はどうでしょうか。

(持分の放棄及び共有者の死亡)
民法255条:「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」

とあり、放棄した場合には他の共有者に帰属する形になります。その際、持分放棄に必要な手続きは、

  • 他の共有者へ持分を放棄した旨の通知
  • 持分放棄を登記原因とする持分移転登記

になります。

ただ、他の共有者が登記手続きに同意してくれない場合、放棄された持分を引き受ける他の共有者は、持分移転登記を拒んで妨害することができてしまいます。そのため、他の共有者の同意は明文上要件とされていませんが、事実上持分放棄でも他の共有者の同意が必要になります。

固定資産税を支払いたくないから共有持分の放棄をと考える方もおられるでしょうが、共有持分の放棄をしただけでは足りず、登記を移す必要があります。登記を移さないと固定資産税の課税からは残念ながら解放されません。

そのような場合には、上述した登記引取請求訴訟を提起することで解決が図れます。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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