\ 売却のご相談はこちら /

持分割合の決め方は?共同購入時と相続時の2パターンで解説

更新日:
作成日:

持分割合の決め方は?相続時と共同購入時の2パターンで解説

共有持分の割合の決め方や計算方法を購入時と相続時でそれぞれ解説

マイホームを夫婦や親子で共同購入したいけれど、共有名義にする際の持分割合ってどう決めるのが正解? 相続で不動産を共有することになったけど、このまま放置しておくと将来的にトラブルになる可能性も?

不動産を複数人で共有する場合、その持分割合は後の権利関係や税金、そして売却時に大きく影響します。安易に決めてしまうと、思わぬ損をしてしまうことも…。

この記事では、共同購入時と相続時の2つのパターンに分け、後悔しないための共有持分割合の決め方を解説します。

持分割合とは?

この持分割合は、登記簿に記載されています。

パターン①相続時の持分割合の決め方

不動産の相続時における持分割合の決定は、その後の不動産の管理・活用、そして相続人間の関係性に大きく影響します。

不動産を相続したときの持分割合は、主に下記のいずれかの方法で決めます。

  1. 法定相続分に従う
  2. 遺言書に従う
  3. 遺産分割協議で決める

1. 法定相続分に従う場合:法律で定められた相続の割合

法定相続分とは、民法によって定められた、相続人が複数いる場合にそれぞれの相続人が受け継ぐ遺産の割合のことです。

法定相続分の計算例:

例えば、夫が亡くなり、相続人が妻と子ども2人の場合:

  • 配偶者(妻):常に2分の1
  • 子ども:残りの2分の1を子どもの人数で均等に分割(この例では1人あたり4分の1)

もし、被相続人の配偶者と子どもが不動産の共有名義人であった場合、被相続人の持分のみが相続の対象となります。

例:夫が1/2、妻が1/2の持分を持つ家で夫が死亡した場合

  • 妻:自身の1/2の持分 + 夫の持分の1/2 × 法定相続分(1/2) = 1/2 + 1/4 = 3/4
  • 子ども1:夫の持分の1/2 × 法定相続分(1/4) = 1/8
  • 子ども2:夫の持分の1/2 × 法定相続分(1/4) = 1/8

このように、法定相続分は相続人の関係性によって細かく定められています。

2. 遺言書に従う場合:被相続人の最終意思を尊重

例えば、遺言書に「自宅の不動産は全て妻に相続させる」と記載されていれば、たとえ他に相続人である子どもがいたとしても、妻が単独で不動産の所有権を取得し、他の相続人は持分を持ちません。

遺言書がある場合でも、相続人間でトラブルが生じる可能性があることを覚えておきましょう。

遺言書がある場合の注意点:

  • 遺言書の内容は原則として尊重されますが、遺留分の問題には注意が必要です。
  • 遺言書に明確な記載がない財産については、法定相続分に基づいて相続されます。
  • 相続後のトラブルを避けるためには、遺言書を作成する際に専門家(弁護士など)に相談することをおすすめします。

3. 遺産分割協議で決める場合:相続人全員の合意による分割

例えば、「不動産は長男が単独で相続する代わりに、長男は他の相続人に金銭を支払う」「共有名義とするものの、長男の持分を多めにする」など、相続人それぞれの意向や事情に合わせて柔軟な分割方法を選択できます。

遺産分割協議の流れ:

  1. 相続人全員の確定:
    まず、誰が相続人となるのかを戸籍謄本などで正確に調査します。
  2. 遺産の調査と評価:
    不動産を含む全ての遺産の範囲と価値を確定します。
  3. 遺産分割協議の実施:
    相続人全員が集まり、遺産の分割方法について話し合います。
  4. 合意内容の書面化:
    遺産分割協議で合意した内容は、後々のトラブルを防ぐために遺産分割協議書として書面に残します。相続人全員の署名と実印での押印が必要です。

遺産分割協議のメリット・注意点:

  • メリット: 相続人全員が納得した上で遺産分割を行えるため、感情的な対立を防ぎやすいです。不動産の利用状況や納税能力などを考慮した柔軟な分割が可能です。
  • 注意点: 相続人の中に一人でも反対する人がいると、遺産分割協議は成立しません。その場合は、家庭裁判所の調停や審判といった手続きに進むことになります。

パターン②共同購入時の持分割合の決め方

例えば、夫婦で不動産を共同購入する場合、持分割合は共有者である夫婦間で自由に設定できます。しかし、安易な決定は、将来的な税金負担や権利関係に影響を与えるため、注意が必要です。

また、親からの資金援助がある場合は、その方法によって持分割合の考え方が異なるため、注意が必要です。

持分割合の決め方・計算方法

出資額と持分割合を一致させる場合の計算方法は非常にシンプルです。

持分割合 = 出資額 ÷ 不動産の価格

【具体例】
8,000万円の不動産を夫婦で購入。

  • 夫の出資額:6,000万円
  • 妻の出資額:2,000万円

この場合、それぞれの持分割合は以下のようになります。

  • 夫の持分割合:6,000万円 ÷ 8,000万円 = 0.75 → 75%
  • 妻の持分割合:2,000万円 ÷ 8,000万円 = 0.25 → 25%

持分割合が割り切れない場合の決め方

不動産の価格と夫婦それぞれの出資額によっては、計算上持分割合が割り切れないケースも出てきます。このような場合は、端数を調整して分かりやすい数字に整えることが一般的です。

【調整例】
8,000万円の不動産を購入する際に、

  • 夫の出資額:4,300万円
  • 妻の出資額:3,700万円

で計算すると、

  • 夫の持分割合:4,300万円 ÷ 8,000万円 = 0.5375 → 53.75%
  • 妻の持分割合:3,700万円 ÷ 8,000万円 = 0.4625 → 46.25%

この場合、調整して夫:54%、妻:46%とするなどが考えられます。

ただし、注意点があります。 税務上、単なる端数調整ではなく、妻の持分割合の一部を夫に贈与したとみなされる可能性があり、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかる場合があります。持分割合を調整する際は、贈与税の課税対象とならない範囲で行うように注意しましょう。

親からの資金援助があった場合の決め方

不動産購入の際、親から資金援助を受けるケースも少なくありません。資金援助の方法は主に以下の3つです。

  1. 借入:
    親からお金を借りて購入資金に充てる。
  2. 贈与:
    親から資金をもらい、夫婦の資産とする。
  3. 共同出資:
    親も購入時に資金を出し、共有名義で不動産を購入する。

借入・贈与の場合

親からの資金は一旦夫婦の資産となり、そこから不動産を購入するため、持分割合は通常通り、夫婦それぞれの実質的な出資額に応じて計算します。借入金や贈与された資金は、資金を出してくれた親の子(例えば、夫の親からの援助であれば夫の出資額に合算)の出資額に含めて考えると良いでしょう。
ただし、借入の場合は親への返済義務贈与の場合は贈与税が発生することに注意が必要です。

共同出資の場合

親も夫婦と共に共有名義で不動産を購入することになります。
この場合、親も共有者の1人となり、持分割合は夫婦と親それぞれの出資額に応じて計算します。例えば、夫の父が1,000万円を出資し、残りの7,000万円を夫婦で(夫6,000万円、妻1,000万円)負担して8,000万円の不動産を購入した場合、夫、妻、夫の父の3人で持分割合を計算します。

住宅ローンの組み方に注意!持分割合の3つの決め方

住宅ローンの組み方によって、最適な持分割合の決め方は大きく変わってきます。

  1. 連帯保証型:
    原則単独名義。持分を発生させる場合は出資割合が重要。
  2. 連帯債務型:
    返済額の割合に応じて持分割合を決定。
  3. ペアローン:
    頭金を含む総支払額の割合で持分割合を決定。

ここでは、連帯保証型、連帯債務型、ペアローンといった代表的な3つの住宅ローンの組み方別に、後悔しないための持分割合の決め方を分かりやすく解説します。

1. 債務者と連帯保証人で組む【連帯保証型】の持分割合

一方が主たる債務者となり、もう一方が連帯保証人となる連帯保証型の住宅ローンでは、原則として不動産は単独名義となります。連帯保証人は、債務者が返済できなくなった場合に代わりに返済義務を負う立場であり、通常、不動産の持分を持つことはありません。

ただし、連帯保証人が頭金の一部を負担した場合など、例外的に持分割合が発生することがあります。

連帯保証型で持分割合を発生させる場合の計算方法

それぞれの出資額(頭金)を不動産全体の価格で割って持分割合を算出します。

例:4,000万円の住宅購入

  • 夫(債務者):頭金600万円
  • 妻(連帯保証人):頭金400万円

この場合、夫婦の合計出資額は1,000万円です。残りの3,000万円は夫が債務者としてローンを組みます。不動産に支払った金額で考えると、夫は自身の頭金600万円とローン全額3,000万円の合計3,600万円、妻は頭金400万円となります。

したがって、持分割合は以下のようになります。

  • 夫の持分割合:3,600万円 ÷ 4,000万円 = 90%
  • 妻の持分割合:400万円 ÷ 4,000万円 = 10%

連帯保証型で持分割合を発生させる場合は、資金の拠出割合を明確にすることが重要です。

2. 夫婦それぞれが債務者となる【連帯債務型】の持分割合

連帯債務型の住宅ローンは、夫婦それぞれが債務者となり、一つのローンに対して別々の返済額を負担する仕組みです。
この場合、持分割合はそれぞれの返済額の割合に応じて決定します。

連帯債務型での持分割合の計算方法

それぞれの返済額をローンの総額で割って持分割合を算出します。

例:5,000万円の住宅ローン

  • 夫の返済額:3,000万円
  • 妻の返済額:2,000万円

この場合、持分割合は以下のようになります。

  • 夫の持分割合:3,000万円 ÷ 5,000万円 = 60%
  • 妻の持分割合:2,000万円 ÷ 5,000万円 = 40%

連帯債務型のメリット・注意点

  • メリット:
    夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるため、節税効果が期待できます(最大控除額は夫婦で80万円)。
  • 注意点:
    団体信用生命保険(団信)に加入できるのは原則として主たる債務者のみです。例えば、夫が債務者、妻が連帯債務者の場合、夫に万が一のことがあればローンは免除されますが、妻に何かあっても夫のローン返済義務は残ります。

3. 夫婦や親子が別々のローンを組む【ペアローン】の持分割合

ペアローンは、夫婦や親子それぞれが個別に住宅ローンを契約する方式です。
この場合、夫のローンでは妻が連帯保証人に、妻のローンでは夫が連帯保証人になるという特徴があります。持分割合は、それぞれの頭金を含む総支払額の割合によって決まります。

ペアローンでの持分割合の計算方法

それぞれのローンの借入額と頭金を合計し、その割合を不動産全体の価格で算出します。

例:4,000万円の住宅購入(頭金なし、全額ローン)

  • 夫の借入額:2,500万円
  • 妻の借入額:1,500万円

この場合、持分割合は以下のようになります。

  • 夫の持分割合:2,500万円 ÷ 4,000万円 = 62.5%
  • 妻の持分割合:1,500万円 ÷ 4,000万円 = 37.5%

もしそれぞれが頭金を出している場合は、その金額を借入額に加えて計算します。

ペアローンのメリット・注意点

  • メリット: 連帯債務型と同様に、夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用できます。また、夫婦それぞれが団体信用生命保険に加入できるため、どちらに万が一のことがあっても、それぞれのローン残高に対して保険が適用されます。
  • 注意点: 団体信用生命保険が適用されるのは、あくまで亡くなった方のローンのみです。夫婦のどちらか一方が亡くなっても、もう一方のローン残高は残るため、注意が必要です。

持分割合の確認方法

共有名義不動産の持分割合を確認する確実な方法は、登記簿謄本(または登記事項証明書)を取得することです。
登記簿の「権利部(甲区)」または「権利部(乙区)」に、共有者それぞれの氏名と、不動産全体に対する持分割合が明記されています。法務局の窓口またはオンラインで請求可能です。

また、毎年送付される固定資産税納税通知書にも共有者の氏名が記載されている場合がありますが、個別の持分割合までは記載されていないことが多いです。

未登記の場合は、戸籍謄本関連契約書から推定する必要があります。最終的に、どうしても持分割合がわからない場合は、各共有者の持分割合は相等しいものになります。(民法第250条

持分割合が不明でも共有持分の売却は可能!

共有持分は、共有物全体に対する権利の割合であり、共有者単独で譲渡・売却することが可能です(民法第206条)。これは、自身の財産権の処分は原則として自由であるという考えに基づいています。
そのため、たとえご自身の持分割合が正確に分からなくても、その権利自体を売却することは法的に認められています。

センチュリー21中央プロパティーでは、持分のみのご売却をサポートしています。
「持分割合がわからない」「持分割合が少ない」という場合でも、当社にて持分割合をお調べし、査定額をお伝え可能です。

この記事の監修者

松原 昌洙マツバラ マサアキ

代表取締役 /
宅地建物取引士

CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら