\ 無料相談・査定をする /

【弁護士Q&A】時効取得について相談です基礎知識

更新日:
作成日:

【弁護士Q&A】時効取得について相談です

30年前、父親が亡くなり私と兄の2人で実家を相続しました。
相続後は、兄が家のローンも固定資産税も全部払っています。

私は最初の1年だけ一緒に住みましたが、その後家を出てからは、その家には一切関与していません。
この場合、共有持分の時効取得でその家&土地は兄のものになりますか?

民法162条1項は、『二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有したものは、その所有権を取得する。』と定め、同条2項は、『十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。』と定めています。


民法162条2項は、占有の開始時に自己の物であることについて善意無過失の場合は、10年の占有期間で時効取得が成立するとするものであり、それ以外=悪意又は有過失の場合は、同条1項により、20年の占有期間で時効取得が成立するものです。共有持分もまた所有権ですから、時効取得の成否は、同条の規律により判断されることになります。
例えば、ある人が、親から相続した不動産を親の単独所有だと信じて長期間占有していたところ、実は親と第三者の共有だったことが発覚したという場合、この相続人が第三者の共有持分を時効取得出来るか、という形で問題になります。


それでは、今回のように、親から兄弟が共有の形で不動産を相続した後、一方だけが不動産を占有していた、という場合はどうでしょうか。
上記のとおり、取得時効の成立には、『所有の意思』が必要です。これは、10年の時効取得でも20年の時効取得でも共有の要件です。


ここでいう所有の意思とは、自分が真実の所有者であるという認識のことであり、他人の不動産であると認識している場合は、所有の意思は認められません。また、所有の意思は、内心で思っているだけでは足りず、外形的・客観的に判断されます。


今回の場合、お兄様は、共有の不動産であること・共有者が他にいることを認識した上で不動産を占有しています。逆に言えば、自分がこの不動産の単独所有者だと信じて占有しているわけではありません。おそらく不動産の登記も、相続の時点から、兄弟ご両名の共有名義での登記にされているかと推察致します。
このような状況からは、お兄様の占有には、所有の意思が認められないものと解されます。

まとめ

  • 共有持分も所有権なので、法律上の要件を満たせば、時効取得の対象となります。
  • 共有不動産の時効取得に当たっては、『所有の意思』の要件を満たすか否かが問題となります。共有であることをわかってて占有している場合、『所有の意思』は認められません。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

この記事のタグ

おすすめの記事はこちら