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4. 共有不動産の「持分」を
売却できない典型的なケースとは?

共有不動産の「持分」を売却できない典型的なケースのイメージ

前回は、共有名義不動産の一部売却における、買い手の選び方を解説しました。今回は、共有不動産の「持分」を売却できない典型的なケースについて見ていきます。

農地の持分は農業を営んでいる人にしか売却できない

前回の続きです。

投資家は、普通に取引されている住宅地にある家や土地の持分であれば、「投資対象になる」と考えて購入を検討します。その不動産がどの都道府県にあるのかは、さほど気にしません。仮に今住んでいる場所が東京だったとしても、沖縄、広島、京都、北海道など全国各地の不動産の持分を当たり前のように購入します。投資家本人は投資した物件に住むつもりはないので、どの場所にあってもまったく構わないのです。

ただ、「市街化調整区域でまわりには牧場しかない」あるいは「周囲を見渡すと浜辺しか見えない」ようなところにある不動産の持分はあまり積極的には買いたがりません。やはり、投資目的である以上は、十分に収益を確保できそうな場所にある不動産を購入候補に選ぶのが一般的です。

さらに、農地法の規定により、農地については原則として農業を営んでいる人しか購入することができません。つまり、共有している不動産が田畑などの農地の場合には、その持分を投資家に売却することはできないので注意が必要です(宅地への地目変更を行えば、農家以外の人への売却が可能になります)。

持分を格安で売却すると「贈与」とみなされる場合も

【共有名義を解消する方法(3)持分移転】自己の持分を第三者ではなく他の共有者に売却する

(3)持分移転は、自己の持分を第三者ではなく他の共有者に売却する方法です。
たとえば、甲不動産をX、Y、Zの3人で持分3分の1ずつの割合で共有していた場合に、Xが共有状態から離脱する手段としてYかZ、あるいは双方に対して自己の持分を売り渡すわけです。

他の共有者が「共有している土地や建物を売るのは嫌だ。しかし、持分を買い取るのは別に構わない」という意向を持っているときにはこの手段が有効な選択肢となるでしょう。

第二章で紹介した【事例1】共同で相続した空き家の売り値をめぐって揉め事になった例では、この持分移転によって問題の解決が図られました。サポートを依頼された私の会社が不動産鑑定士の評価に基づく公平な適正価格を提示して、Aさんの持分をお兄さんに買い取ってもらう形で話をまとめることができたのです。

なお、この持分移転を行う際には、売却価格の設定方法に気をつけてください。「とにかく手放したいから、値段はいくらでもいい」などと、相場と比べて著しく低い売り値を設定してしまうと、税務署から贈与とみなされて、持分の移転を受けた側に贈与税が課されるおそれがあるからです。

【共有名義を解消する方法(4)持分買い取り】他の共有者の持分を買い取って、不動産を単独で所有する

(4)持分買い取りは、持分移転とは逆に、他の共有者の持分を買い取って不動産を自分1人で所有する方法です。この方法を選択した場合、甲土地の全部についてXが単独の所有権を取得し、Y、Zの持分の価格を賠償することになります。

書籍『あぶない!!共有名義不動産』第二章で取り上げた【事例5】共有名義不動産を弟たちが勝手に売りに出した例では、この方法による解決が図られました。そこで触れたように、Eさんは、今後自分がとるべき選択肢として、以下の4つを考えていました。

  1. やむを得ず弟たち主導の売却に応じる。

  2. 断固、売却に応じない。

  3. 適正価格にて弟2人の持分を買い受ける。

  4. 自分の持分だけを売却する。

Eさんから相談を受けた私は、このうち3番目の選択肢にトライしました。具体的には、弟2人の持分の価格を不動産鑑定士に算出してもらった後、代理人として両人と面談し、Eさんの意向を伝えたうえで買い取り価格を提示しました。

しかし、弟2人は「もっと高く買い取ってくれ」とまったく譲歩する気配がありませんでした。そこで、Eさんは弟2人に鑑定価格以上の代金を支払うことを決めました。こうして、Eさんは弟たちの持分を取得し、共有状態を解消できたのです。
このケースのように、持分の買い取りのために適正価格を超える金額が支払われるのは、実は非常に珍しいことです。

そもそも、共有名義不動産の持分は一般に市場価格が低くなりがちです。たとえば、1,000万円の時価の土地を2人で2分の1ずつ共有している場合、それぞれの持分の価格は単純に2で割った500万円になるわけではありません。そこからさらに数十万円以上は差し引かれた額になります。

なぜなら、持分を購入したからといって、その不動産を自分の好きなように自由に使えたり、処分できたりするわけではないからです。持分を持っている不動産を「人に貸したい」「売りたい」と思っても、共有者の同意が得られなければ不可能です。

このように、持分は所有権の一種とはいえ、その権利は大きく制限されていることから、あえて「ほしい」と思うような人は少なく、購入者は前述のように投資家や買取業者などに限られてしまいます。市場価格が需要と供給によって決まる以上、通常の不動産に比べて需要の乏しい共有持分は、どうしても高い値段で売ることが難しくなってしまうのです。

そして、兄弟間で持分買い取りが行われるような場合にも、基本的に市場価格を基準として売り値が決められることになります。そのために、売却を求められた側が「そんなに安いのなら、このまま持ち続けよう」と手放すのを惜しむケースも少なくありません。

本記事は、2017年5月26日刊行の書籍『あぶない!!共有名義不動産』から抜粋したものです。稀にその後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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