共有持分の査定方法は?査定に影響する要素や事例を紹介

作成日:

共有持分の査定方法は?査定に影響する要素や事例を紹介

共有持分の査定方法は?査定に影響する要素や事例を紹介

共有持分と聞くと、手続きが複雑で「売却は難しいのでは?」と感じる方も多いのではないでしょうか。

特に、親から相続した土地が兄弟姉妹の共有名義になっているケースなどでは、話し合いがまとまらず、売却を諦めてしまうことも少なくありません。

しかし、共有持分にはその性質に応じた適正な査定方法が存在します。

この記事では、共有持分の売却を検討している方のために、その査定方法から、査定額に影響を与える具体的な要素、そして実際の売却事例までを、分かりやすく解説していきます。

共有持分の査定方法

共有持分の査定方法には主に以下の3つがあります。

  1. 机上査定(簡易査定)
  2. AIによる査定
  3. 不動産鑑定士による査定

1. 机上査定(簡易査定)

机上査定は、不動産の物理的な調査を行わず、公示価格や近隣の取引事例を元におおよその価格を算出する方法です。

基本的には、インターネット上で提供されている不動産データを使い、市場動向や相場価格を基にした推定値を出します。

メリット:

  • すぐに査定結果が出る。
  • 手軽に査定ができる。
  • 料金が無料の場合が多い。

デメリット:

  • 共有持分特有の問題(持分割合や利用形態)が考慮されない。
  • 実際の不動産の状態や価値を反映していないことがある。

2. AIによる査定

近年では、AIを活用した不動産査定も登場しています。

これらのサービスは、AIが不動産市場の膨大なデータを分析し、瞬時に査定額を算出します。AI査定は、過去の取引データや地域ごとの相場情報を基にしており、ある程度精度が高いとされています。

メリット:

  • 数分で査定結果が出る。
  • 価格の傾向を素早く把握できる。
  • 一部のサービスでは、地域ごとの独自のデータを活用。

デメリット:

  • 共有持分に関する細かな要素が反映されないことがある。
  • 実際の不動産の状態(内部の状態や立地条件)は考慮されない。

3. 不動産鑑定士による査定

不動産鑑定士による査定は、最も精度が高い方法の一つです。

不動産鑑定士は、現地調査や法的確認を行い、物理的・法的要素を考慮に入れて正確な査定を行います。

特に、共有持分の売却に関しては、持分割合や現地の利用状況、借地権の有無など複雑な要素が絡むため、専門的な知識が求められます。

メリット:

  • 共有持分特有の問題を詳細に考慮した査定。
  • 正確で信頼性が高い査定が得られる。
  • 将来的な売却や相続時に有用なデータとなる。

デメリット:

  • 費用が高額。
  • 査定に時間がかかる。

共有持分の査定に影響する要素

共有持分の査定には、共有持分ならではの特有の要素も存在します。

以下は、共有持分の査定額に影響を与える主要な要素です。

  • 持分割合
  • 共有者との関係性
  • 不動産の使用状況
  • 売却理由
  • 立地条件
  • 借地権の有無

1. 持分割合

持分割合は、売却できる価値を直接的に示すため、査定に最も大きく影響します。持分割合が大きいほど、当然ながら査定額も高くなります。

一方で、割合が小さすぎると、買い手が見つかりにくくなるため、売却価格が低くなる傾向があります。買い手が将来的に「他の共有者の持分を全部を買い取って所有したい」と考える場合、少ない持分では魅力が薄れるからです。

2. 共有者との関係性

他の共有者との関係は、査定額を大きく左右する重要な要素です。

関係が良好で、売却に協力的であれば、買い手にとっても安心材料となり、査定額は高くなります。

逆に、関係が悪化している場合や、他の共有者が売却に反対している場合は、トラブルのリスクを考慮して、査定額が大幅に引き下げられることがあります。

3. 不動産の使用状況

現在、不動産を誰がどのように使用しているかも査定に影響します。

他の共有者が居住している場合、買い手は購入後すぐに物件を使用できないため、その分価値が下がります。

また、賃貸に出されている場合、家賃収入の有無や賃借人との契約内容も査定額に反映されます。空室で活用されていない場合、維持管理費などの負担が考慮されます。

4. 売却理由

売却に至った経緯も査定額に影響を与えることがあります。相続問題や離婚トラブルなど、ネガティブな理由で売却する場合、他の共有者との関係性が悪化しているケースが多く、前述の理由から査定額が低くなることがあります。逆に、金銭的な理由など、個人的な事情であれば、他の共有者との関係に影響は出ないため、査定額への影響は少ないでしょう。

5. 立地条件

不動産自体の立地条件は、通常の不動産査定と同様に重要です。

駅からの距離、周辺環境、利便性、再開発の予定など、客観的な価値を判断する上で欠かせません。立地が良い物件であれば、共有持分であっても買い手が見つかりやすいため、査定額は高くなります。

反対に、郊外など立地が悪い場合は、市場流通性も乏しいことから買い手が見つからず、査定額も低くなる傾向にあります。

6. 借地権の有無

査定対象がが借地権付き建物である場合、査定額に大きく影響します。借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有する権利のことです。

借地権付き建物の共有持分を売却する場合、地主との関係や、借地料、契約期間などが査定に影響します。所有権と比べて制約が多く、買い手が見つかりにくいことがあるため、査定額は低くなる傾向があります。

共有持分の査定事例

上で紹介した共有持分の査定に影響する要素をもとに、実際の査定額について事例をもとに解説します。

事例1:持分割合が大きく、早期売却につながったケース

不動産: 東京都世田谷区にある一戸建て
持分割合: 依頼者は持分2/3(親族3人の共有)
共有者との関係性: 一人の共有者が売却に非協力的

査定結果:
不動産全体の市場価値は8,000万円。依頼者の持分割合2/3(5,280万円)に対し、6,000万円で査定。持分が過半数を超えており、需要が多いエリアのため、大きな減価要因がなく、早期に買い手が見つかった。

事例2:他の共有者が居住中で使用不可

不動産: 福岡県福岡市にあるマンション
持分割合: 依頼者は持分1/3(兄弟3人の共有)
共有者との関係性: 良好

査定結果:
不動産全体の市場価値は3,000万円だったが、持分割合の1/3(1,000万円)ではなく、600万円で査定。他の共有者が現在も居住しているため、買い手はすぐに使用収益できず、賃貸に出すことも困難なことから、価値が減額された。

事例3:相続争いによる売却で査定額に影響

不動産: 兵庫県神戸市にある土地
持分割合: 依頼者は持分1/4(親族4人の共有)
共有者との関係性: 相続争いにより悪化

査定結果:
土地全体の市場価値は4,000万円だったが、持分割合の1/4(1000万円)ではなく、600万円で査定。売却に至った経緯が相続争いのため、他の共有者とのトラブルリスクが高いと判断され、大幅な減額となった。

事例4:好立地で査定額が高く維持されたケース

不動産: 東京都港区にあるマンション
持分割合: 依頼者は持分1/2(友人との共有)
共有者との関係性: 良好

査定結果:
不動産全体の市場価値は1億2,000万円。持分割合の1/2(6,000万円)に対し、5,000万円で査定。都心の一等地であり、将来的な開発計画もあって需要が高いため、共有持分であることによる減額はあったものの、比較的高い価格が維持された。

事例6:借地権付きで大幅な減額

不動産: 京都府京都市にある借地権付き一戸建て
持分割合: 依頼者は持分1/2(親族との共有)
共有者との関係性: 良好

査定結果:
借地権付き建物全体の市場価値は5,000万円と評価されたが、持分割合の1/2(2500万円)ではなく、1500万円で査定。土地が借地権であり、所有権ではないため、買い手が見つかりにくいこと、地主との交渉が必要となるリスクを考慮し、大幅な減額となった。

センチュリー21中央プロパティーの共有持分の査定方法 — AIと不動産鑑定士のダブル査定のメリット

センチュリー21中央プロパティーでは、共有持分の査定において、AI(人工知能)と不動産鑑定士による「ダブル査定」を実施しています。

この方法は、従来の単一の査定方法では得られない精度と信頼性を提供し、特に共有持分のような特殊な不動産においてその効果を発揮します。

1. AIによる高速かつ客観的な査定

AIによる査定は、膨大な不動産データや過去の取引事例をもとに、瞬時に市場価格を算出します。

これにより、物件の立地、面積、過去の取引履歴、周辺環境などの要素を総合的に評価し、迅速に査定結果を得ることができます。

AIは人間の主観や感情に影響されることなく、過去のデータに基づいて公平かつ客観的な価格を提示するため、特に複雑な要素が絡む共有持分の査定において有効です。

2. 不動産鑑定士による詳細な分析

AIによる査定は市場データをもとにした一般的な指標を提供しますが、不動産鑑定士はそのデータを実際の不動産に即した形で詳細に分析します。

例えば、共有持分の取引は他の不動産取引と異なり、共有者間の関係性や持分割合、使用状況、立地の特殊性など、様々な個別要因が査定額に影響を与えます。

鑑定士はこれらの要素を十分に考慮し、実際の取引の可能性を見極めた上で、より精緻な査定を行います。

3. ダブル査定による精度と安心感

AIと不動産鑑定士の両者による査定を組み合わせることで、互いに補完し合い、より精度の高い査定が実現します。

AIは市場全体の傾向を反映させ、客観的なデータを提供する一方で、不動産鑑定士は現地調査や個別事情を考慮して、人間的な判断を加えます。

ダブル査定により、AIだけでは把握しきれない物件の特殊性や市場の動向を反映させた、より信頼性の高い価格が算出されます。

このように、AIと不動産鑑定士によるダブル査定を取り入れることにより、センチュリー21中央プロパティーは、共有持分のように特殊な状況を抱える不動産でも、精度高く、かつ迅速な査定が可能となります。

まとめ:共有持分の査定は専門家に依頼しよう

共有持分の査定は、単独所有の不動産とは大きく異なります。

法律や市場の特殊性を理解した上で、複雑な権利関係や共有者間の事情を考慮する必要があるためです。一般的な不動産会社では、共有持分のような特殊な案件に十分な知見がない場合も少なくありません。

そのため、適切な査定額を知り、スムーズな売却を実現するには、共有持分に特化した専門家への相談が不可欠です。

私たちセンチュリー21中央プロパティーは、共有持分の売却を数多く手掛けており、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者

大村 進オオムラ ススム

不動産鑑定士

不動産鑑定士・株式会社大村不動産鑑定事務所 代表・宅地建物取引士
1995年に宅地建物取引士(旧宅地建物取引主任者)登録(第37393号)。2001年には不動産鑑定士登録(第6786号)を行い、20年以上にわたり不動産鑑定評価の最前線で活躍している。2018年からは東京不動産鑑定士会会長を務め、業界を牽引する権威として知られる。

株式会社大村不動産鑑定事務所の代表として、不動産鑑定評価業務をはじめ、価格査定、意見書作成など、不動産の価格に関するあらゆる業務に精通。

特に、業者間で査定額に大きな差が生じやすい共有持分の不動産鑑定において、市場動向を考慮した精度の高い査定には定評がある。その豊富な経験と専門知識は、お客様の不動産に関する疑問や不安を解消し、適切な意思決定を強力にサポートする。

おすすめの記事はこちら