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共有物分割請求訴訟を起こされました|弁護士Q&A

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共有物分割請求訴訟を起こされました

ご相談内容

数年前に相続で大阪市平野区にあるビルの共有持分を取得しました。

しかし、共有持分権者でもあるB氏の共有持分が競売入札により、C法人が取得することになり、そのC社から共有持分を買い取りたいと連絡がありました。

C社から買取金額の提示がありましたが、同じ共有持分権者でもある私の親族は反対しております。C社の金額提示に納得できず、C社から訴訟を起こすとまで言われたそうです。私としては、築古で収益もあがらないビルなので、未練もなく売ってもいいと思うものの、C社の提示してきた金額が妥当なのかどうかわかりません。

親族に売るにしても、資金的に厳しいことはわかっているし、ましてや、C社に売るとなれば、親族の反感を買うことも予想されるし、どうしたら良いのか迷っています。C社ではない第三者に売れば、訴訟もされずに解決できるのでしょうか。

ご相談のポイント

  • 不動産を適正に評価してもらう方法
  • C社が言う「訴訟」とはどのような訴訟か
  • C社が言う「訴訟」により相談者が被るデメリットとは何か
  • 訴訟を避けるための方法

①不動産を適正に評価してもらう方法

不動産の価値は、様々な要因が複合的に影響して決まるため、一体何が適正な価格であるかの判断は、一般の方では困難です。 

特に今回の場合は、不動産全体ではなく、持分のみでの売却を考えざるを得ませんので、評価はより複雑になります。 

不動産の適正な評価を行なう最も確実な方法は、専門家である不動産鑑定士に鑑定を依頼することです。 鑑定士に依頼する費用の準備が難しい場合には、不動産業者に査定を依頼することも考えられます。 

但し、不動産全体ではなく、持分のみが売買の対象となる場合は、持分の売買の経験が豊富な業者でないと、査定を出すことは難しいでしょう。

 ②C社が言う「訴訟」とはどのような訴訟か

C社が言う「訴訟」とは、共有物分割請求訴訟(民法258条1項)のことを意味しています。 

共有物の分割方法は、まずは共有者間の協議をもって決めるものですが、協議が纏まらない場合や協議自体が出来ない場合に、裁判所に対して、共有物の分割を求めて訴えを提起するものです。 共有者の一部が原告となる場合は、それ以外の共有者の全員を被告として訴えを提起する必要があります。

 訴訟での分割方法は、現物分割と賠償分割(他の共有者の共有持分を買い取る方法)が原則とされていますが(民法258条2項)、いずれの解決も困難である場合は、競売による換価分割(競売の売却代金を持分割合に応じて分ける方法)が命じられます(民法258条3項)。

③C社が言う「訴訟」により相談者が被るデメリットとは何か

前述のとおり、共有物分割請求訴訟では、共有者の全員が当事者となることが要請されます。逆に言えば、共有者である限り、同訴訟への関与を余儀なくされます

代理人弁護士を付けなければ、裁判所への出廷を含めて全て本人で訴訟対応する必要が生じますし、他方、代理人弁護士を付ければ、弁護士費用の負担が生じます。 

裁判での最終的な解決(共有関係の解消)までには相当時間がかかりますし、また、共有者全員が主張をぶつけ合って争うことになりますから、たとえ共有関係の解消が実現できたとしても、他の共有者との個人的な関係が悪化する懸念もあります。 さらに、前述の共有物分割請求訴訟の構造から、裁判所が命じる分割方法が、必ずしも当事者の望まない内容になる恐れがあります。

④ 訴訟を避けるための方法

自身を当事者とする共有物分割請求訴訟が提起される事態を回避するには、共有者全員で任意に分割協議を纏めるか、共有者の立場から離脱するか、いずれかが必要になります。 

しかし、前者の実現が困難ということであれば、後者の方法が現実的な選択肢ということになります。具体的には、共有持分を第三者に売却するという方法です。 

持分の譲渡の相手方は、他の共有者でも、共有者以外の第三者でも構いません。いずれでも、他の共有者の同意なく、単独での譲渡が可能です。 

なお、共有持分の処分方法としては、他に、共有持分の放棄(民法255条)がありますが、持分の放棄自体は単独で出来るものの、放棄した事実を登記するには全共有者による共同申請が必要であり、同意しない共有者がいた場合は、その共有者を相手に訴訟をしなければならないので、共有者の任意の協力が期待できないケースでは、持分放棄の方法を取ることは避けるべきです。

まとめ

共有持分を売却して共有関係から離脱すれば、C社が共有物分割請求訴訟を起こしても、訴訟当事者となることを回避できます。

共有持分の適正な価格の調査については、不動産鑑定士に鑑定を依頼するのが最も確実です。

費用面で鑑定が難しい場合は、共有持分の売買の経験が豊富な不動産業者に査定を依頼して、参考にするのが宜しいでしょう。

現在の共有者以外から共有持分の買い手を探すに当たっても、共有持分の取引の実績がある不動産業者に相談することが適切です。

不動産業者のネットワークから投資家等の買い受け希望者を探してくれますし、条件次第では不動産業者自身が持分の買取りを検討してくれる可能性もあります。

また、売買価格の条件以外に、例えば「購入した後で親族とトラブルを起こす恐れがある人には売りたくない」といった要望がある場合も、ノウハウのある業者であれば、販売活動の時点から柔軟に対応してくれるでしょう。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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