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【弁護士Q&A】地役権について相談です|弁護士Q&A

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【弁護士Q&A】地役権について相談です

民法改正で共有物の管理ルールが変更|共有不動産の所有者必見

所有地の隣人から下水管を通すために、土地の一部を譲って欲しいと言われています。
そこで共有持分にしないかと提案したところ、「将来土地の所有者が変わるとトラブルになるかもしれないから」と拒否され、「もし売買が無理であれば、その土地に隣接する道路側の一画に地役権を設定したい」と言っています。不動産や司法書士に相談してみましたが、それぞれ意見が違うのでどうしたらよいのかわかりません…

まず、隣人が第一希望とする土地の一部売却は、具体的には、ご相談者様の所有地の一部を分筆し、隣人名義に変更することになります。この場合、分筆部分は隣人の単独所有となるので、その後の土地の権利関係や使用について揉めるリスクはなくなりますが、ご相談者様の所有地の面積は減ることになりますので、その資産価値が減少するデメリットがあります。
次に、ご相談者様が提案された『共有持分にする』という手法ですが、もし、土地の分筆をせずに、持分割合だけ決めて登記することを考えているのであれば、下水管を通すのに不要な範囲も含めて土地全体が隣人との共有になってしまいます。かといって、分筆した土地を敢えて共有にすることにメリットもないので、少なくとも『共有』の路線は取るべきではないでしょう。
隣人の第二希望の地役権は、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利(民法280条)であり、今回のケースに当てはめると、隣人の土地を要役地、ご相談者様の土地を承役地として、隣人のために用水地役権を設定することになります。
地役権は、設定行為で特段の定めがない限り、所有権に対する付従性が認められているため(民法281条1項)、要役地たる隣地の所有権が移転した場合、地役権も当然に新所有者に移転することになります。そのため、地役権設定の方針には応じるものの、あくまで現在の所有者である隣人に限って地役権の行使を認め、所有権が第三者に譲渡された場合は地役権を消滅させたいときは、その旨の特約を隣人との間で合意する必要があります。
なお、以上は、いずれも隣人との合意により権利が発生するケースですが、令和5年4月1日に施行された民法213条の2第1項は、『土地の所有者は、他人の土地に設備を設置し・・なければ・・水道水の供給その他これらに類する継続的給付・・を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置・・することができる。』と定め、一定の要件を満たす場合に、法定の設備設置権が発生するとしています。
但し、設置の場所や方法は他の土地の所有者の損害が最も少ないものでなければならない、事前に他の土地の所有者へ目的・場所・方法を通知しなければならない、他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない等の義務があるため、権利があるからといって制限なく行使できるわけではありません。

まとめ

  • 土地の分筆は、権利関係は明確になりますが、所有地の面積・資産価値の減少というデメリットがあります。
  • 地役権を設定する場合は、特約がない限り、隣地を取得した第三者にも地役権が認められることに注意が必要です。
  • 一定の要件を満たす場合は、隣人には、法定の設備設置権が認められることになります。

この記事の監修者

菅原 悠互スガワラ ユウゴ

弁護士

弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。

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