相続財産の「共有」と共有持分の「共有」の相違|用語集
相続財産の「共有」と共有持分の「共有」の相違
ご相談内容
相続財産の「共有」と共有持分の「共有」は、どう違うのでしょうか。

詳細解説
どちらも「共有」と字は同じなのだから、意味も同じに決まっている?確かにそう思う方もいるかもしれませんが、法律用語ではそうではない場合もあるので問題になるのです。例えば、「無効」という言葉は条文上も出てきます。同じ無効でも取消的無効や絶対的無効など、状況によって解釈が分かれているのです。
例:
(公序良俗)
民法90条:「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」
(錯誤)
民法95条:「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。」
公序良俗に反する場合には絶対的無効、錯誤による無効は取消的無効と言われています。
それでは「共有」の場合はどうでしょうか。
(共同相続の効力)
民法898条:「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」
判例は以下のように述べています。
♦参考判例:最判昭30年5月31日
判旨:「相続財産の共有(民法八九八条、旧法一〇〇二条)は、民法改正の前後を通じ、民法二四九条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。…遺産の共有及び分割に関しては、共有に関する民法二五六条以下の規定が第一次的に適用せられ、遺産の分割は現物分割を原則とし、分割によつて著しくその価格を損する虞があるときは、その競売を命じて価格分割を行うことになるのであつて、民法九〇六条は、その場合にとるべき方針を明らかにしたものに外ならない。」
結局のところ「共有」の意味は同じです。「なんだ!一緒じゃないか!」と思われるかもしれませんが、実は裏には深い意味が存在する場合が伝わったなら幸いです。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。