修繕費を払わない共有者がいる場合どうする?|共有持分を相続した方
修繕費を払わない共有者がいる場合どうする?

A、B、Cが家を共有しています。
雨漏りがひどいので修理することになり、修繕しましたがその代金(総額300万円)をCが一向に支払いません。
ABは請求できないのでしょうか。
※なお各持ち分は3分の1ずつです。

100万円請求することができます。
解説
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
引用元:民法第249条
とあるように、基本的に各共有者は共有物全体について利用することはできますが、その他については持ち分割合が付きまといます。例えば共有物の管理については、
共有物の管理に関する事項は…各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。
引用元:民法第252条
とあり、管理に関する事項は各共有者の持ち分の価格に従いその過半数で決められます。本件ですとA〜Cのうち二人が同意すれば管理行為をすることができます。また、
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用元:民法第253条
とあります。管理費などの経費についても各共有者は「持分に応じ」て、負担しなければいけないことになります。本件の屋根の修繕費用だと、A〜Cの持ち分は3分の1なので総額費用の3分の1ずつ、つまり、100万円ずつ費用を負担する必要があります。
とはいえ、すんなり経費を払ってくれない場合もあります。
そのような場合、A,Bは下記のような手段をとることが法律上明記されています。
共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
引用元:民法第253条2項
他の共有者は、経費の分担に応じない共有者に対して、相当の金銭を支払うことで、持ち分を取得することができます。 CがABの請求にもかかわらず、修繕費用の支払いを拒み続けている場合、1年が経過するとABは相当の償金を払うことで、Cの持ち分(3分の1)を取得し、Cを共有関係から離脱させることができます。
相当の償金は共有物の価値と持分割合により決まると解されています。例えば、本件だと家の価値が900万円の場合は各共有者の持ち分は300万円ずつになり、相当の償金の目安は300万円と考えられます。
管理費用や経費の支払いをしないような共有者と共有関係にさせておことは他の共有者としては良い気はしませんし、このままいくとこの先も同様の事態も考えられるため、法は共有関係を離脱させる方法を担保しています。

この記事の監修者
弁護士
エルピス総合法律事務所 代表弁護士/宅地建物取引士
東京大学法学部を卒業後、20年以上にわたり不動産法務の最前線で活躍する不動産トラブル解決のスペシャリスト。東京弁護士会に所属し、弁護士資格に加え宅地建物取引士の資格も有することで、法律と不動産実務の両面から深い専門知識と豊富な経験を持つ。
特に共有不動産における紛争解決においては、業界屈指の実績を誇り、共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など、複雑な案件を数多く解決に導いてきた。相続や離婚による共有名義不動産のトラブル解決に従事してきた。
著書に「事例でわかる 大家さん・不動産屋さんのための改正民法の実務Q&A」がある。メディア出演やセミナー登壇実績も多数。