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持分の売却前に抵当権の抹消登記を!

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持分の売却前に抵当権の抹消登記を!

ご相談内容

前夫と共有名義のマンションを所有しています。

3年前離婚の際、前夫が共有持分(私所有の30%)を買い取ってくれるとの約束でしたが、その後全く処理せず連絡しても応じてくれない状態です。

現在マンションは、賃貸に出しているのですが、賃料も前夫が独り占めしており、分配も受けていない状態です。

前夫は、数年前に、自分の持分70%を自分の会社名義に変更しました。

また、根抵当権設定がありましたが、銀行に確認したところ、「既に消滅しており、借り入れもなく、根抵当権抹消登記してないだけ」と言われました。

前夫と共有状態になっていることが、ストレスなので、自分の持分を売却したいと考えています。

本件トラブルのいい解決策があれば、アドバイスをお願いいたします。

ご相談のポイント

  • 相手共有者に請求できること
  • 共有持分の売却及び債権譲渡
  • 担保権の登記が残っていることのデメリット

①相手共有者に請求できること

まず、前夫は、持分を買い取ると一旦約束しながらその約束を履行していないということなので、債務不履行を理由とした損害賠償請求が考えられます。

しかし、もし約束が口頭のみの場合は、約束があったことの立証が困難ですし、買い取る合意はしたが具体的な買取金額の合意までには至っていなかった場合は、損害の事実及び損害額の立証が困難です。

次に、前夫が共有物件の賃料収入を独占している場合は、不当利得返還請求権に基づき、持分割合に応じた賃料の分配を請求することが可能です。

但し、法律上の請求権が額面としては存在していても、前夫に支払う意思が無い場合は、各種の法的手続(保全・訴訟・執行)を自ら行わなければなりませんし、そもそも前夫に支払能力が無ければ、費用をかけても何も回収できずに終わる可能性すらあります。

したがって、ご自身で前夫に対して金銭債権の請求を行なっていく方向性は、確実に前夫の資産からの資金回収が見込まれるケースでもないと、ハードルが高いと言えます。

②共有持分の売却及び債権譲渡

ご相談者様の共有持分を第三者に売却することは、前夫あるいは現在の共有者である会社の同意がなくとも可能です(民法206条)。

実際、数年前に前夫から会社に共有持分の名義が移った際も、ご相談者様の同意は求められなかった筈です。

共有持分を売却すれば、その時点で共有関係から離脱することになり、不動産の問題をめぐって自ら前夫と協議・裁判をする必要もなくなります。

また、共有持分の売却と併せて、前夫に対する金銭債権を、共有持分の買主に債権譲渡することも可能です。

この場合、譲渡金額そのものは、債権の額面よりも割り引かれた金額にはなってしまいますが、債権譲渡をすれば、金銭債権の問題に関しても、ご自身で前夫との間で協議・裁判を行う負担から解放されます。

前述のとおり、金銭債権が実際に額面通りに回収できるかは不確実であり、回収するにも多大なコストがかかる以上、共有持分の売却&債権譲渡で前夫との関係を清算するということには、金額には表れない大きなメリットがあると言えます。

③担保権の登記が残っていることのデメリット

不動産に担保権の登記が設定された後、被担保債権のローンが完済された場合、当然、その担保権の登記は抹消されるべきものです。

但し、担保権者=債権者側で抹消手続を行なってくれる訳ではなく、担保権者から必要書類を貰った上で、債務者側において抹消登記の手続きを行なう必要があります。

ですが、債務を完済している以上は特段問題ないと考えて、完済しているにもかかわらず抹消登記が放置されているケースが時折見受けられます。

しかし、担保権の登記が残っていると、登記簿を見た第三者=共有持分の購入検討者には、本当に被担保債権が完済されているのか否かが判断できません。

そうすると、殆どの人は、実はまだ被担保債権が残っていて、持分の購入後に被担保債権の滞納を理由に競売になってしまうリスクを考えて、持分の購入の検討を止めてしまいます。

したがって、共有持分の売却の前提として、売却の支障となる担保権の登記を抹消しておく必要があります。

共有不動産に設定された担保権の登記の抹消申請は、全ての共有者にとっての利益になるため、保存行為(民法252条5項)に該当し、各共有者が単独で行なうことが可能です。

具体的には、債権者から必要書類の収集を行った上で、抹消登記の申請手続きを行なうことになります。

但し、中には有効期限付きの書類もあるので、書類収集から抹消登記の申請までを迅速に行なう必要があります。

登記申請は、勿論ご本人でも行なえますが、短期間で確実に登記申請を完結させることを目指すならば、司法書士等の専門家に代理申請を委任することも選択肢です。”

まとめ

相手共有者に対して法律上の金銭債権が存在するとしても、現実に債権を回収できるか否かは、相手共有者の支払意思と支払能力に左右されます。

共有持分の売却と債権譲渡を併せて行なった場合は、不動産の関係でも金銭債権の関係でも、自ら相手共有者と協議・裁判を行なう負担から解放されます。

被担保債権が完済されているにもかかわらず、登記簿上に担保権の登記が残ってしまっていると、第三者への共有持分の売却の支障となります。

迅速かつ確実に抹消登記申請を行なうことを目指すのであれば、司法書士等に代理申請を委任することも選択肢です。

この記事の監修者

都丸 翔五トマル ショウゴ

社内弁護士

当社の専属弁護士として、相談者の抱えるトラブル解決に向けたサポートをおこなう。
前職では、相続によって想定外に負債を継承し経済的に困窮する相続人への支援を担当。これまでの弁護士キャリアの中では常に相続人に寄り添ってきた相続のプロフェッショナル。

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