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共有持分を相続放棄したい方必見!相続放棄以外の解決方法もご紹介|共有持分を放棄したい

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共有持分を相続放棄したい方必見!相続放棄以外の解決方法もご紹介

1.相続放棄とは

「面倒な遺産相続争いに巻き込まれたくない」
「他の相続人と疎遠で、今更連絡を取り合いたくない」

このように面倒な相続トラブルを避けたいと考える人は、多いのではないでしょうか。
相続トラブルを回避する手段として、「相続放棄」があります。
最高裁が2021年に発表した相続放棄の申述受付件数は25万件を越え、その数は年々増加しています。

本記事では、共有持分の相続放棄について解説します。

1-1.相続放棄とは

相続放棄とは、プラスの財産、マイナスの財産含め、すべての財産を相続する資格を放棄することをいいます。 

相続は、プラスの遺産だけでなく、マイナスの遺産も継承するのが基本です。
例えば、被相続人(亡くなった方)が不動産や土地、預貯金などのプラスの遺産は全くない状態で、借金やローンなどマイナスの遺産しか遺さなかった場合を考えてみましょう。
恐らく、ほとんどの方が引き継ぎたくない(=相続放棄したい)と考えるのではないでしょうか。
相続放棄は、このようにプラスの財産よりもマイナスの財産の方が多いシーンで有効です。

相続放棄をおこなった場合、初めから相続人とならなかったものとみなされ、相続人ではなくなります。

  • (相続の放棄の効力)
    民法第939条:「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」

1-2.相続放棄のメリット・デメリット

相続放棄のメリットは、2つあります。

  1. マイナスの遺産を継承せずに済む

  2. 面倒な相続トラブルに巻き込まれずに済む

先述した通り、プラスの遺産よりもマイナスの遺産の方が多い場合には、相続放棄のメリットは、大きいです。
また相続放棄をすると、相続人ではなくなるため、面倒な相続争いから逃れることができます。

相続放棄のデメリットは、2つあります。

  1. プラスの遺産も継承できなくなる

  2. 相続放棄には手間と費用がかかる

被相続人の借金等、マイナスの財産だけではなく、不動産や預貯金等プラスの財産も含め、一切の相続財産を相続することができなくなります。 
また、相続放棄の手続きには必要書類を集める手間や費用がかかります。詳しくは、下記で解説します。

1-3.相続放棄の期限

相続放棄をする場合は、相続があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。

  • (相続の承認又は放棄をすべき期間)
    民法第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

決められた期限の中で、相続放棄をするかどうかの判断や申請手続きをおこなう必要があります。

2.共有持分を相続放棄することはできる?

「共有持分をもつ父が亡くなり、それを母と子で相続した」
「共有名義不動産を夫婦で購入したが、夫が亡くなり妻と子で相続した」

上記のように共有持分を相続するケースは少なくありません。 
ここでは、共有持分の相続放棄について解説します。

2-1.共有持分とは

共有持分とは、1つの不動産を複数人で共同所有している際、その所有権割合のことを指します。
例えば、夫婦共有名義で不動産を購入した場合などが挙げられます。
【共有持分とは?】

共有持分の場合は、自身の意思だけで該当の不動産を売却したりリフォームしたりすることはできません。売却やリフォームをしたい場合には、他の共有者の同意が必要です。
そのため、共有不動産の管理や処分を巡って、他の共有者と意見が割れ、トラブルに発展してしまうケースは少なくありません。

2-2.共有持分のみ相続放棄することはできる?

共有状態を残しておくと後々面倒なことになってしまう可能性もあるため、他の相続財産は放棄せずに、一部不動産の共有持分のみを相続放棄したいという方もいらっしゃるでしょう。
しかし残念ながら、他の相続財産は相続して不動産の共有持分のみを相続放棄するということはできません。 

相続放棄は100か0、すなわち、相続財産を全て相続するか、全てしないかの2択しかないため、どうしても共有持分を相続したくない場合は、他のすべての財産も全て相続放棄する必要があります。

共有持分でのトラブルを避ける他の手段として、一旦共有持分を相続した後に、相続した自己の持分のみを売却するという方法もあります。
共有持分は、自己の持分のみであれば他の共有者の同意なく、売却できます。当然、売却をするため金銭的な利益を得ることができます。
共有持分を売却する方法については、下記の記事でも解説しています。
参考:共同名義の不動産の売却について

2-3.相続放棄と限定承認のちがい

相続放棄と比較される手段として、限定承認があります。
限定承認とは、被相続人のマイナスの遺産をプラスの遺産内で清算する方法です。
マイナスの遺産の方が多いことが明らかな場合は、相続放棄が良いですが、借金の額がいくらかわからない場合は、限定承認という選択肢もあります。

但し、限定承認は相続人全員での申述が必要です。
また、相続放棄同様に相続の発生を知った日から3ヶ月以内に申述が必要ですので、その点には注意しましょう。

3.共有持分を相続放棄したらどうなる?

共有持分を相続放棄した場合、定められた相続順位の通り、相続権が移ります。 
ここでは、相続人の順位や相続人がいない場合について解説します。

3-1.相続順位と法定相続割合

相続が発生した場合の相続順位と法定相続割合は下記の通り、定められています。

  • (法定相続分)
    第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
    一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
    二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
    三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
    四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

例えば、夫が死亡し妻と子が相続したケースで考えてみましょう。
夫には、マイナス財産しかなかったため、妻と子は相続放棄することにしました。この場合、夫の父と母が健在であれば、2人が相続人となります。父も母も死亡している場合は、被相続人である夫の兄弟が相続人となります。

相続放棄の制度によって、後順位の人が本来は相続することのなかった財産を相続することになったとしても、それは相続放棄した相続人からの贈与とはみなされないため、贈与税を支払う必要はありません。 

3-2.共有持分を相続放棄した場合

  • (持分の放棄及び共有者の死亡)
    民法第255条「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」

具体例を見てみましょう。

  • 夫と妻、長男、長女がいて不動産は夫と妻の共有(2分の1ずつ)、夫が死亡した事例(※長男が相続放棄)
    このような場合、長男は相続放棄したことから、相続人としての地位が無くなり、妻が夫の共有持分の2分の1、長女が夫の共有持分の2分の1相続します。

  • 夫婦が不動産を2分の1ずつの持分割合で共有しており、夫が死亡した事例(一人の子が相続放棄、夫の父親存命)。

本ケースの場合、妻は夫の共有持分を3分の2、夫の父親は共有持分を3分の1取得します。

3-3.他の相続人がいない場合や全員相続放棄した場合

プラスの遺産があるにも関わらず、相続人がいない場合や全員相続放棄をした場合は、最終的には遺産は国庫へ帰属することになります。

マイナスの遺産の方が多い場合は、利害関係人が家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任の申し立てをします。

4.共有持分の相続放棄における手続きと必要書類

相続放棄をするには、相続開始を知ったときから3ヶ月の間に家庭裁判所申述をする必要があります。 

  • (相続の放棄の方式)
    民法第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

ここでは、相続放棄の手続きの流れと必要書類について解説します。

4-1.相続放棄の申述に必要な書類

家庭裁判所への申述には、下記書類を用意する必要があります。

  • 被相続人の住民票の除票

  • 相続放棄する本人の戸籍謄本

  • 収入印紙

  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

  • 郵便切手(書類郵送用)

4-2.相続放棄の流れ

4-2-1.相続放棄の手続きは誰がおこなう?

相続放棄は、原則相続人本人が申し立てます。
相続人のうち、複数人が相続放棄する場合でも、誰かがまとめて申述の手続きをおこなうことはできません。
※但し、相続人が未成年の場合は、法定代理人による申し立てが認められています。

4-2-2.相続放棄の手続きはどこでやる?

必要書類が全て揃ったら、被相続人の生前最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄の申し立てをおこないます。
申述書と必要書類を管轄の家庭裁判所へ郵送または直接窓口へ出向き提出します。
申述書は、下記よりダウンロードする方法と家庭裁判所から取り寄せる方法があります。
参考:相続の放棄の申述書(成人)

4-2-3.相続放棄の申述から完了まで

申述書の提出後、家庭裁判所より照会書が届きます。
照会書には、相続放棄をする理由や相続を知った経緯等の項目が記載されているため、回答を記入のうえ返送します。

相続放棄の申述が受理された場合、相続放棄申述受理通知書が裁判所から届きますので、これで相続放棄の手続きは完了となります。

5.相続放棄の注意点

5-1.マイナスの遺産だけでなく、プラスの遺産も相続できない

相続放棄は、マイナスの遺産も含むすべての遺産を放棄することが前提です。マイナスの遺産は相続せず、プラスの遺産だけ相続する、といったことはできないため相続放棄は慎重に検討しましょう。

5-2. 一度相続放棄すると、撤回はできない

相続放棄をしてしまうと一切の財産を相続する権利を喪失してしまいます。
後から「やっぱり相続したかった」というような変更もできないため、注意が必要です。

  • (相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
    民法第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

5-3.相続放棄できなケースもある

相続放棄をする間に相続財産を使い込んでしまった場合や、相続放棄すべき期間の3ヶ月以内に放棄しなかった場合(熟慮機関の経過)、相続放棄自体ができなくなってしまいます。 
相続発生後の3ヶ月は、あっという間に過ぎてしまうため、期限にも注意して対応しましょう。

  • (単純承認の効力)
    民法第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

  • (法定単純承認)
    民法第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
    一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
    二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
    三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

5-4.金銭的な利益は得られないため、勿体ない

トラブルになりやすい共有持分を相続したくない、相続トラブルに巻き込まれたくないからといって、相続放棄をして他のプラスの財産まで相続しない場合、当然ですが金銭的な利益を得ることはできません。

もちろん、結果的に負の財産が多い場合は、相続放棄をすることも有効な手段といえますが、共有持分は自己の持分のみであれば、自己の判断で売却することもできます。一旦相続をした後に、自己の共有持分のみを売却して現金化を図るという手段も検討してみるのも一つです。

まとめ

相続はいつ自分に降りかかってくるかわかりません。日ごろから準備をしていたとしても想定外のことが起こりがちです。相続のトラブルは親族間のトラブルに発展し、修復不可能な絶縁状態になってしまう場合もありますので、不安がある方はまず専門家に相談してみるとよいでしょう。
 
中央プロパティーでは、共有持分を専門とする不動産会社です。
共有持分のトラブルでお悩みの方は、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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