共有名義の空き家は危険?放置のリスクと解決策を解説!
共有名義の空き家は危険?放置のリスクと解決策を解説!

「親から相続した空き家が兄弟との共有名義で、どうすれば良いか分からない…」
共有名義の空き家は、所有者全員の意見が一致しないと、売却や活用が難しいという問題があります。放置すると、固定資産税や維持費がかかり続けるだけでなく、倒壊や犯罪の温床になるなど、様々なリスクも伴います。
この記事では、共有名義の空き家を放置することのリスク、解決策、そして活用方法をわかりやすく解説します。

共有名義の空き家を放置するリスク
共有名義の空き家を放置すると、以下のようなリスクがあります。
- 固定資産税・都市計画税の負担が続く
- 特定空き家に指定され行政処分を受けるリスク
- 倒壊のリスク
- 犯罪の温床
- 近隣トラブル
固定資産税・都市計画税の負担が続く
空き家を放置すると、固定資産税と都市計画税の支払いが継続的に発生します。
これらの税金は、土地や家屋の所有者に課せられるもので、たとえ空き家であっても、所有している限り支払う義務があります。
共有名義の場合、それぞれの共有者が持分に応じて税金を負担することになります。もし、一人でも支払いを拒否する共有者がいると、他の共有者がその分の負担を強いられる可能性があります。
また、固定資産税は、住宅用地の場合、一定の要件を満たせば減額措置を受けることができますが、空き家は対象外となるケースが多いです。そのため、居住している場合よりも税負担が大きくなる可能性があります。
このように、共有名義の空き家を放置すると、税金による経済的な負担が大きくなる可能性があり、共有者間でトラブルに発展する可能性も高まります。
特定空き家に指定され行政処分を受けるリスク
一定の条件を満たす空き家は、「特定空き家」に指定される可能性があります。
特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置が受けられなくなるだけでなく、行政から改善命令や罰金などの行政処分を受ける可能性があります。
特定空き家に指定される条件は、
- 周囲の生活環境に悪影響を及ぼしている
- 倒壊の危険性がある
- 防犯上問題がある
などです。
共有名義の空き家の場合、共有者間で意見がまとまらず、適切な管理が行われていないと、特定空き家に指定されるリスクが高まります。特定空き家に指定されると、所有者としての責任を果たしていないと判断され、行政から強制的な措置を取られる可能性があります。
最悪の場合、行政代執行によって空き家が解体され、その費用を所有者が負担させられることもあります。
倒壊のリスク
空き家を放置すると、老朽化が進んで倒壊する危険性があります。特に、木造住宅は、経年劣化によって木材が腐食し、強度が低下しやすいため、注意が必要です。
倒壊のリスクを高める要因としては、
- 建物の老朽化
- 地震や台風などの自然災害
- 不適切な増改築
- 放置による劣化の加速
などが挙げられます。
共有名義の空き家の場合、共有者間で意見がまとまらず、必要な修繕や補強が行われないまま放置されるケースがあります。その結果、倒壊のリスクが高まり、周囲の建物や通行人に被害を与える可能性も出てきます。もし、倒壊によって被害が発生した場合、所有者は損害賠償責任を負うことになります。
犯罪の温床
空き家は、人目につきにくく、管理が行き届いていないため、犯罪の温床になる可能性があります。
空き家で発生しやすい犯罪としては、
- 不法侵入
- 放火
- 窃盗
- 薬物栽培
などが挙げられます。
共有名義の空き家の場合、共有者全員が責任を持って管理することが難しく、防犯対策が不十分になりがちです。そのため、犯罪者に狙われやすくなり、地域住民の不安や治安悪化に繋がる可能性もあります。
近隣トラブル
空き家を放置すると、近隣住民とのトラブルに発展する可能性があります。
よくある近隣トラブルの原因としては、
- 雑草や樹木の繁茂
- 害虫やネズミの発生
- 悪臭
- 雨漏りや排水不良
- 不法投棄
- 騒音
などが挙げられます。
共有名義の空き家の場合、共有者間で意見がまとまらず、適切な管理が行われないまま放置されるケースがあります。その結果、近隣住民に迷惑をかけることになり、トラブルに発展する可能性も高まります。
共有名義の空き家問題を解決するには?
共有名義の空き家問題を解決するには、共有者間で話し合い、以下のいずれかの方法をとる必要があります。
- 売却する
- 活用する
- 解体する
1. 売却する
共有名義の空き家を売却する方法は、以下の3つです。
- 他の共有者と一緒に空き家全体を売却する
- 共有者間で持分を売買する
- 第三者に持分を売却する
1. 他の共有者と一緒に空き家全体を売却する
共有名義の空き家を売却する最も一般的な方法は、共有者全員の同意を得て、空き家全体を第三者に売却することです。
この方法のメリットは、空き家全体を売却することで、比較的高額な売却益を得られる可能性がある点です。
しかし、この方法では、共有者全員の同意を得る必要があります。もし、一人でも売却に反対する共有者がいる場合は、この方法を選択することはできません。
また、共有者の中に連絡が取りにくい人や、認知症などで判断能力が不十分な人がいる場合は、売却手続きが複雑になる可能性があります。
2. 共有者間で持分を売買する
共有者の一人が、他の共有者に対して自分の持分を売却する方法です。
例えば、兄弟2人で共同所有している空き家の場合、兄が弟に自分の持分を売却することで、弟が空き家の単独所有者となり、自由に処分できるようになります。
ただし、この方法では、買い手となる共有者が、売却する共有者の持分を買い取るだけの資金を用意できるかがポイントとなります。
また、共有者間で価格交渉を行う必要があり、価格が折り合わなければ、売買は成立しません。
3. 第三者に持分を売却する
共有者の一人が、自分の持分を第三者に売却する方法です。
この方法のメリットは、他の共有者の同意を得ずに、自分だけの決断で共有名義の空き家問題を解決できる点です。
しかし、第三者に持分を売却する場合、買い手を見つけにくいというデメリットがあります。
なぜなら、第三者が共有名義の空き家の持分を取得しても、他の共有者の同意なしに、空き家を自由に活用したり処分したりすることができないからです。
そのため、第三者に持分を売却する場合は、共有持分に特化した不動産会社のサポートを受けるのがおすすめです。共有持分専門の不動産会社であれば、市場では買い手が見つかりにくい持分でも、独自のルートで買い手を見つけて貰えます。

2. 活用する
空き家をリフォーム・リノベーションして、以下のように活用する方法もあります。
- 賃貸住宅: 賃貸住宅として貸し出すことで、家賃収入を得る。
- シェアハウス: シェアハウスとして運営し、複数の入居者から家賃収入を得る。
- 民泊: Airbnbなどの民泊サービスを利用して、宿泊施設として貸し出す。
- 店舗・事務所: 店舗や事務所として利用する。
- 地域貢献: 地域のコミュニティスペースやイベント会場として活用する。
3. 解体する
空き家の放置によるリスクを回避するために、解体を検討する方もいますが、慎重な判断が必要です。
その理由は、解体には高額な費用がかかるうえ、更地にすると固定資産税が最大で6倍に増えてしまうためです。
まず、解体費用についてですが、一般的な30坪ほどの戸建てを取り壊す場合、およそ150万円〜200万円の費用が発生します。
また、共有名義の不動産を解体するには、すべての共有者の合意が必要です。解体費用も持分割合に応じて各共有者が負担することになります。(民法第253条)
さらに、空き家を解体して更地にすると、住宅用地の特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が6倍に上がる点にも注意が必要です。
画像引用:国土交通省:固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置
共有名義の空き家に関するよくある質問
Q: 共有名義の空き家を売却したいのですが、共有者の一人が全く連絡が取れません。どうすれば良いでしょうか?
A: 共有者の一人と連絡が取れない場合でも、売却できる可能性はあります。まずは、戸籍謄本などで住所や連絡先を調べてみましょう。それでも見つからない場合は、弁護士や司法書士に相談し、以下の方法を検討します。
- 不在者財産管理人:家庭裁判所に申し立てて選任された人が、不在者の代わりに売却手続きを行います。
- 失踪宣告:一定期間所在不明の場合、家庭裁判所に申し立てて失踪宣告を受けると、法律上死亡したものとみなされ、相続手続きを経て売却できるようになります。
Q: 共有者の一人が売却に反対しているのですが、どうしたら良いでしょうか?
A: 共有者全員の同意が得られない場合は、売却が難しい状況です。解決策としては、以下の3つの方法が考えられます。
- 当事者間での話し合い: まずは、売却に反対している共有者と、なぜ反対なのか理由を丁寧に聞き、解決策を一緒に探ることから始めましょう。
- 共有持分の売却: 自分の持分を他の共有者または第三者に売却する方法です。
- 裁判: 裁判所に共有物分割請求を行い、空き家を分割または売却する方法です。
Q: 空き家を売却する際にかかる費用は、誰がどのように負担するのでしょうか?
A: 売却にかかる費用としては、仲介手数料、印紙税、測量費用などがあります。これらの費用は、基本的には共有者全員で持分割合に応じて負担します。
Q: 共有名義の空き家を売却する場合、税金はどのようになりますか?
A: 空き家を売却して利益が出た場合は、譲渡所得税がかかります。譲渡所得税は、売却益から取得費や譲渡費用などを差し引いて計算されます。 共有名義の場合、それぞれの共有者が自分の持分割合に応じた譲渡所得税を支払うことになります。
また、相続した空き家を売却する場合は、一定の条件を満たせば、3,000万円の特別控除など、税金に関する優遇措置を受けることができます。

この記事の監修者
代表取締役 /
宅地建物取引士
CENTURY21中央プロパティー代表取締役。静岡県出身。宅地建物取引士。都内金融機関、不動産会社を経て2011年に株式会社中央プロパティーを設立。共有持分を始めとした相続トラブル・空き家問題の解決と不動産売買の専門家。主な著書に「[図解]実家の相続、今からトラブルなく準備する方法を不動産相続のプロがやさしく解説します!」などがある。