亡き夫の母親と妻・子のトラブル|法律・税金|相続

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亡き夫の母親と妻・子のトラブル

質問AはBと結婚し、子が一人Cがいます。
ABはAの母親甲と同居しており、(1)生前母親甲は自分の唯一の息子のAに家を贈与していました。
ところが、Aは若くして亡くなってしまいました。
(2)相続により、家は妻B、子Cに渡りました。
しかし、
(3)これを良く思わないAの母親がこの家は敷地利用権がない家だ。土地の所有者である私がいうのだから取り壊す。
と言ってきています。
何か良い解決方法はないでしょうか。

亡き夫の母親と妻・子のトラブルの図

解説

法律関係の整理

1. 生前贈与について

母親甲が息子Aに家を贈与したのは、甲の方が早くなくなり相続が起きるのであれば、事前に早いうちに贈与(生前贈与)することで相続税対策にもなるためと思われます。実際、課税遺産が圧縮される結果、相続税が少なく済むというメリットがあります。

本件のように唯一の子供でもあることから、死後に寄与分等でもめる可能性も低いことも生前贈与を行う大きな理由とも言えます。

2. 相続発生後の関係

しかし、母親との思惑とは異なり、息子Aが先に亡くなってしまいました。法律関係(相続関係)を整理してみましょう。

民法890条:「被相続人の配偶者は、常に相続人となる。…」

とあり、本件妻Bは相続人となります。また、

民法900条:「同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。」
同条1号:「子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。」

とあります。子及び妻が相続人である場合、その法定相続分は2分の1ずつになり、子及び妻のみで相続分は完結します。すなわち、子がおり、配偶者がおり、被相続人の親がいる場合、親は相続人にはならないのです。

これは、仮に親が相続してもなくなったらまた子へ相続するという繰り返しが起こるだけで、被相続人に子や配偶者いる場合はそのものらに相続させれば足りるという趣旨が含まれています。よって、本件甲は相続人にはなれません。

3. 家を取り壊すという点

本件家の土地は母親甲の所有であり、家は相続後BCの所有になっていると考えられます。従前生前贈与により家の所有は息子A、土地は母親甲、このAと甲の関係は使用貸借関係があったと考えられます。

使用貸借とは

当事者の一方(借主)が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方(貸主)からある物を受け取ることを内容とする契約。

民法593条:「使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」
民法599条:「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」

とあり、借主(ここではA)が死亡することによって使用貸借は終了し、新たに使用貸借を締結しない限りBCは土地の占有権原は不適法となってしまいます。
使用貸借には借地借家法の適用もなく借主の立場は非常に弱くなっています。そのため、本件家屋は適法な占有権限がないため土地の所有者甲が取り壊すといっている以上、取り壊すことは適法といえます。

遺産分割協議で誰かが単独所有としない限りは、被相続人の相続財産は「共有」になります。本件の場合、後妻Dと前妻の子BCとは家屋及び土地について共有関係になるということです。

その持分は、D:2分の1、B:4分の1、C:4分の1(法定相続分による)の割合となります。共有関係になると、

問題解決方法

さて、上記のように家がそこに存続するためには土地所有者の許可がいることになります。ただ、許可するかしないかはもちろん本人(本件ではAの母親)の自由で、拒否することも適法です。
「どうにかして住み続けたい」法律に則った解決だけではなく、様々な観点からの交渉が必要になってきます。

当社は不動産に関するトラブル解決のプロ集団です。お客様により良い解決方法をご提案できる自信がございます。是非一度ご相談ください。

この記事の監修者

岡田 卓巳オカダ タクミ

弁護士

弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。

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