契約締結上の過失|用語集
契約締結上の過失
意義:契約締結の段階またはその準備段階における契約締結を目指す一方当事者の過失のこと
詳細解説
本来契約に至っていない場合には、当事者は何も義務を負っていないため、契約前の責任追及はできないのが原則です。

契約締結上の過失とは、契約に至る準備段階でも、単なる接触を超えて具体的な契約条件の交渉の段階は言った場合には、信義則上の義務を与えようとするものです。参考判例をまずは見てみましょう。
♦参考判例1:最判昭59年9月18日判決
判旨:「原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、上告人の契約準備段階における信義則上の注意義務違反を理由とする損害賠償責任を肯定した原審の判断は、是認することができ…」♦参考判例2:最判平19年2月27日判決
判旨:「…そうすると,被上告人は,一面で原審が指摘するような立場にあったとしても,Aから本件商品の具体的な発注を受けていない以上,最終的に被上告人とAとの間の契約が締結に至らない可能性が相当程度あるにもかかわらず,上記各行為により,上告人に対し,本件基本契約又は4社契約が締結されることについて過大な期待を抱かせ,本件商品の開発,製造をさせたことは否定できない。…したがって,被上告人には,上告人に対する関係で,契約準備段階における信義則上の注意義務違反があり,被上告人は,これにより上告人に生じた損害を賠償すべき責任を負うというべきである。」
このように契約に至る前段階でも信義則上の義務を負う場合があります。
- 注意義務の発生時期
- 第1段階
当事者の接触はあるが、具体的商談は始まっていない段階
→この段階では特段の義務は生じず。 - 第2段階
具体的な商談に入った段階で「将来当事者となるべきものが、自らもしくは履行補助者により、契約の申込又は申込の誘引をなし、相手方がこれに基づきこれを受容して契約締結を指向した行為を始め、いわゆる商談が開始された」時
→この段階では、当事者には、「配慮義務」「開示義務(説明義務)」等の注意義務が課されます。 - 第3段階
代金等を含む契約内容についてほぼ合意に達し、正式契約の締結日が定められるに至った段階
→この段階では当事者には、「配慮義務」「開示義務」等の注意義務のほか「誠実に契約の成立に努めるべき信義則上の義務」が付加されます。
契約に至る段階によって、それぞれ課される義務は異なっています。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。不動産の共有関係解消など相続と不動産分野の案件へ積極的に取り組む。主な著書に「一番安心できる遺言書の書き方・遺し方・相続の仕方」「遺言書作成遺言執行実務マニュアル」など。