親が亡くなったら必要な手続き~不動産相続のよくあるトラブルも解説~|共有持分とは

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親が亡くなったら必要な手続き~不動産相続のよくあるトラブルも解説~

親が亡くなったら必要な手続きは、複雑で多岐に渡ります。

あらかじめ流れを把握しておかないと、期限に間に合わなかったり、二度手間になる可能性もあるでしょう。

特に、遺産相続として不動産を相続する場合、遺産の価値や額などに関わらずトラブルが起こりやすいです。親を亡くしたときの関係者とのいさかいは、大きな心のダメージになりかねません。

しかし必要な手続きを事前に知っておけば、トラブルを回避できる場合もあるでしょう。

この記事では、親が亡くなったら必要な手続きを、流れに沿ってご紹介しています。また、相続不動産を長年扱ってきた当社の経験から、相続で揉めないポイントも解説しました。

最後までお読みいただき、万が一への心構えと準備をしましょう。

1.親が亡くなったら行うこと

親が亡くなった時に行う手続きには、順番や期限があります。まず第1章で大きな流れを説明し、2章以降で細かく解説していきます。

1-1 葬儀と法要~葬儀前の流れ~

それでは、親が亡くなったら葬儀前にどんな手続きをするか、具体的な流れを確認していきましょう。

1-1-1 死亡診断書を受け取る

医師が発行する死亡診断書を受け取ります。事故死等の場合、警察での遺体の検案や身元確認の後、死体検案書が渡されます。死亡診断書と死体検案書は、書類の名称が異なるだけで記載内容は同一です。

死亡診断書は1通5,000円程度です。受け取ったらコピーを5枚程度はとっておきましょう。生命保険の請求や、銀行口座の名義変更などで提出を求められます。

1-1-2 身近な人への連絡

親が亡くなった旨を身内や、職場の人、友人や近隣の住民に連絡します。葬儀社の選定が済んでおり、葬儀の日程が決まっていればあわせて伝えましょう。

1-1-3 葬儀社を選ぶ

故人が葬儀に関する希望を残していればそれを考慮の上、葬儀社を選定します。遺体の搬送や死亡届の提出をオプションとして葬儀社に依頼できるので、任せてしまってもよいでしょう。

葬儀代は葬儀から約1週間後に請求書が届くケースが多いですが、葬儀当日に現金で支払う場合もあります。あらかじめ確認しておきましょう。

また、火葬代は火葬場を予約する際に前払いします。自治体が運営する公営の火葬場は、0~5万円程度で、民営の火葬場では7万円~8万円くらいからが相場です。

1-1-4 故人の搬送と退院手続き

病院で亡くなった場合、数時間で退院になります。遺体の搬送と同時に入院費を支払うため、費用を準備しておきましょう。遺族間で、誰が支払うかやおおよその入院費用を事前に共有しておくとスムーズです。

故人が自宅、もしくは葬儀場に安置された後は、通夜や葬儀の準備をします。また、葬儀の後も初七日や四十九日などの法要を行います。

亡くなった当日以降の流れは、2.葬儀と法要 で詳しく解説します。

1-2 役所への届け出

遺体を搬送し安置したら、死亡診断書(死体検案書)の左側にある死亡届を記入し、役所に提出します。

死亡届は亡くなった日から7日以内が期限です。しかし、葬儀を行う場合、早めに役所に死亡届を提出し火葬証明書を取得しましょう。葬儀後の火葬には火葬証明書が必要です。

葬儀を終えたら、保険や年金などの手続きも必要になります。3.役所への届け出 を参照し、期限内に手続きを行いましょう。

1-3 遺産相続

親が亡くなると発生する遺産相続は、遺言書がない場合、相続人全員で協議し決定します。相続人と疎遠な場合は、連絡がつくまでに時間がかかるなど協議も難航しがちです。

また、疎遠でなくても、遺産が不動産のみである場合などは分配が難しく、トラブルになる場合もあるでしょう。

遺産相続は、期限を意識して進めていく必要があります。例えば、相続放棄は自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内です。(民法915条1項)負債があった場合も、放置すると相続放棄の機会が失われてしまいます。
4.遺産相続 で解説します。

2.葬儀と法要

ここでは、親が危篤と告げられた際の対応と、親が亡くなってから葬儀の手配までの一般的な流れを解説します。

おおまかな流れは図1に示す通りです。

図1_法要葬儀の流れ

(図1_法要葬儀の流れ)

それぞれ具体的にみていきましょう。

2-1 近親者への連絡

親が病気等で危篤状態に陥った場合、すぐにその場にいない家族に連絡を取りましょう。たとえ疎遠になっていても最期に会わせたい人がいれば、知らせて来てもらいましょう。

他界後は、すぐに近親者にも連絡を入れます。故人と特に親しい人には、優先して知らせましょう。このタイミングで連絡するのは、通夜や葬式より先に駆けつけて欲しい相手です。

2-2 通夜・葬儀の手配

遺体を自宅、または葬儀場に搬送し、安置したら、葬儀の内容を検討します。葬儀社に葬儀の希望や予算を伝え、喪主や葬儀の日時等を決めましょう。

通夜や葬儀の日時・場所が決まったら、関係者に連絡します。ここでは通夜や葬儀に来て欲しい人に伝えましょう。

プランによっては、葬儀の会場準備などの諸事はすべて葬儀社が行います。

2-3 火葬の手配

一般的には、葬儀後は火葬場に移動し、遺体を火葬します。火葬には自治体の許可が必要なため、事前に死亡届を提出し、火葬許可証を申請しましょう。

火葬場へは火葬許可証を持参します。火葬が済むと火葬許可証が返却されるので、大切に保管してください。

2-4 法要の準備

葬儀の準備とともに、法要の準備も進めましょう。近年のライフスタイルの変化により、葬儀後に引き続き初七日法要を行う「繰り込み法要」をとるケースが多くなりました。

初七日は命日を含めて7日目に行う法要です。故人が三途の川のほとりにたどり着く日とされます。渡る川の流れが緩やかであるようにと願って供養するのです。

仏道では、故人は7日ごとに裁定を受け、四十九日で来世の行き先が決まります。親が亡くなってから忙しい日々になりますが、四十九日の間は故人が極楽浄土に行けるよう供養しましょう。

四十九日法要は、ご住職や近親者と相談し行いましょう。その後、納骨・一周忌の法要を行います。

3.役所への届け出

図2_届出の流れ

(図2_届出の流れ)

役所への届け出について解説します。親が亡くなったら、早めに死亡届と火葬許可証申請書を提出します。

葬儀が終われば、健康保険・介護保険の資格喪失届の提出や、受給している年金を止める手続きを行います。

ここでは、亡くなってから14日以内に手続きすべきものと、高額療養費の還付金についてみていきましょう。

3-1 死亡届の提出

死亡届は、故人の死亡地・本籍地、または届出人の所在地の役所に提出します。届出人は、故人との関係で順番が定められています。同居する親族、同居人(親族以外)、家主や地主、別居の親族、後見人の順です。

死亡届の提出は命日から7日以内です。しかし、葬儀を行う場合は、死亡届は火葬許可証申請書とともに亡くなった翌日に提出しておくとよいでしょう。
参考:法務省_死亡届

3-2 年金と健康保険の手続き

年金の受給停止の手続きや、健康保険証の返却など、各種手続きを行います。

3-2-1 厚生年金・国民年金

故人が年金を受給していた場合は、給付停止の手続きを行います。厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内に年金事務所などに年金受給権者死亡届を提出します。

ただし日本年金機構にマイナンバー(個人番号)が収録されている場合、原則として提出は不要です。
参考:日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき

3-2-2 健康保険

国民健康保険の場合、14日以内に「国民健康保険資格喪失届」を役所に提出し、保険証を返却します。
参考:江東区_国民健康保険被保険者(加入者)の方がお亡くなりになったとき

勤め先の健康保険組合等から支給されている健康保険証は、事業主に返却する必要があるため、送付先を事業主に確認しましょう。
参考:健康保険被保険者証の返納手続き

3-2-3 介護保険

故人が以下のいずれかに当てはまる場合、14日以内に資格喪失手続きを行いましょう。

  • 65歳以上の方

  • 医療保険に加入済みで、要介護・要支援認定を受けていた40歳以上65歳未満の方

介護保険被保険者証は、資格喪失手続きの際に返却しましょう。
参考:江東区_介護保険被保険者証の交付と回収

3-2-4 高額療養費制度の申請

亡くなった方の1ヶ月の医療費が自己負担額限度を越え、高額療養費制度の適用条件に当てはまる場合、、相続人が代わりに申請を行うことで医療費の払い戻しを受けられます。しかし、相続財産にあたるので、払い戻された医療費を受け取った場合、相続放棄できなくなる点に注意してください。

申請できる人

相続人、遺言書で指名された受遺者

申請先

・国民健康保険:故人の死亡時の住所地の市区町村村役場
・健康保険:加入していた健康保険組合等

必要書類

・高額療養費支給申請書
・医療費の領収書
・戸籍謄本など、故人との関係がわかるもの
・預金通帳など振込先口座のわかるもの
・故人の保険証

期限

診療を受けた月の翌月1日から2年間

3-3 世帯主の変更

故人が世帯主だった場合、命日から14日以内に「世帯主変更届」を提出します。死亡届と同時に提出する場合も多いです。ただし以下のように提出が必要なケースと不要なケースがあります。

世帯主変更届が必要なケース

  • 世帯に15歳以上の人が2人以上いる場合

世帯主変更届が不要なケース

  • 故人の死亡で世帯がなくなる場合

  • 単独世帯(世帯主が明白なため)

  • 15歳以上の人1人と、15歳未満の子の世帯など

届出人:新しい世帯主・同じ世帯の人
提出先:居住地の市区町村村役場
必要書類:本人確認書類・印鑑・委任状(代理人の場合)

3-4 公共料金の手続き

電気・ガス・水道といった公共料金も、解約もしくは名義変更の手続きが必要です。故人の口座は凍結されるため、振替口座の変更手続きも行いましょう。手続きが遅れ、引き落としができずに滞納すると、遅延損害金が加算される可能性があります。

各サービスセンターに問い合わせると必要書類が送付されるので、早めに手続きを済ませましょう。

4.遺産相続

図3_遺産相続の流れ

(図3_遺産相続の流れ)

遺産相続は、人が亡くなると発生します。遺産分割協議に時間がかかる可能性もあるので、なるべく早めに取り掛かりましょう。

ここでは、遺産相続の流れに沿ってポイントを解説します。

4-1 遺言書の確認

まずは、遺言書の有無を確認しましょう。遺言書は、公正証書遺言や、法務局で保管されている自筆証書遺言でない場合、裁判所の検認が必要です。遺言書が有効の場合は、遺言書に沿って遺産相続を行います。遺言書がない場合、遺産の分割方法は遺産分割協議で決定します。

4-2 相続人の調査

遺産分割協議までに、故人の財産をすべて把握しましょう。通帳がない場合、金融機関に問い合わせを行います。不動産は毎年5月に固定資産の課税明細書が送られてくるので、それで確認できます。見つからない場合は、役場で名寄(なよせ)帳を取得しましょう。これは、固定資産税台帳を所有者ごとにまとめたものです。

なお、前述した高額医療費の還付金も相談財産の一つなので、忘れないようにしましょう。

ただし借金も相続財産に含まれます。そのため故人に借金があった場合は相続人に返済義務が生じるため注意が必要です。

4-4 遺産分割協議

遺産分割協議は相続人全員で行います。一人でも欠けると、協議での決定が無効になります。遺産分割協議は、誰が取り仕切るかの決まりがありません。協議は対面のほか電話やメールなどでもかまいません。連絡係を担ったり、協議をスムーズに進行させるために、誰が取り仕切るか決めておくとよいでしょう。

なお、2023年の民法改正で遺産分割に関するルールが変更になりました。
詳しくは、民法改正で相続時の遺産分割はどう変わる?|相続人必見をご覧ください。

財産をどのように相続するかを遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名と押印します。

また、遺産分割協議で話がまとまらない場合や、相続人が協議に参加しない場合、裁判所に遺産分割調停の申し立てが可能です。

遺産分割について、さらに詳しく知りたい方は共有持分と遺産分割についてをご覧ください。

5.不動産の相続

不動産の相続は、特にトラブルが起こりやすいです。その理由を解説します。

5-1 不動産の相続で最も多いトラブル

不動産の相続は、預貯金とは異なり、人数に応じた分配が容易ではありません。特に不動産が建物の場合は、誰か一人が住むことになると他の共有者は建物を活用できません。その分の対価として、居住者に家賃を請求することもできますが、不動産の場合、価値や権利を明確にお金に換算した際の代償金を算出するのが容易ではありません。

例えば、兄弟三人で実家を相続した場合をイメージしてみましょう。兄弟のうちの一人が「自分は長年同居し、親の介護をしてきたので、実家は自分一人が相続すべきだ」と主張した場合、他の兄弟が納得できないこともあるでしょう。

また、相続人同士での揉め事を避けるため、「とりあえず、共有名義」と問題を先送りにすることは絶対に避けましょう。その時はよくても、さらに相続が発生すれば、共有者が増え権利関係がどんどん複雑になります。

共有名義の不動産は、時間が経つごと共有者が増え続け、トラブルになりやすく、解決に向けた対応も困難になります。

まとめると下図のように、誰が相続するか意見がまとまらない、公平な分割が難しいといった理由から、トラブルが起きやすいのです。

図4_よくあるトラブル

(図4_よくあるトラブル)

5-2 相続不動産を分割する方法

それでは、相続した不動産を複数の相続人で分けたい場合、どのような方法があるでしょうか。相続不動産を分ける方法としては、3つあります。

以下の図5に父親が亡くなった場合を例としてまとめました。

図5_現物分割・代償分割・換価分割

(図5_現物分割・代償分割・換価分割)
それぞれの方法を詳しくみていきましょう。

5-2-1 現物分割

現物分割は、不動産そのものを相続人で分け合う方法です。分筆と呼ばれる手続きで、不動産を物理的に分割し、それぞれを相続人が取得します。各相続人は、単独名義で不動産を所有でき、平等性が高いです。この方法は、不動産の中でも土地には有効ですが、建物は分筆できませんので解体の問題が発生します。また、不動産の面積が小さくなるため、分割前より資産価値は下がってしまうでしょう。

5-2-2 代償分割(価格賠償)

代償分割は、1人の相続人が不動産を相続して、他の相続人に見合った額を代償金として支払う方法です。1人が不動産の現物を手にし、その他の相続人も現金が取得できます。しかし、不動産を取得したい相続人が複数いる場合、誰が取得するかでトラブルが生じるばかりか“価格”について主張が対立する可能性があります。

5-2-3 換価分割(代金分割)

換価分割は、不動産を売却・換金し、相続人で分ける方法です。不動産は手放すことになりますが、最も平等に近い形で分配が可能です。しかし、不動産に買い手がつかない場合は換価分割はおこなえません。

5-3 不動産の相続で揉めてしまったら

不動産の相続で協議がまとまらない場合や不動産の相続後に共有者間でトラブルになってしまった場合、当事者同士での解決は難しいです。不動産や法律の専門家への依頼を検討しましょう。

相談先は、大きく弁護士と不動産会社の2つです。

当社では、共有持分をはじめとする相続不動産のトラブルに強い弁護士が初回のご相談から同席、売却後のアフターフォローまで手厚くサポートします。当事者同士の話し合いでは、感情的になりやすく、合理的な解決が望めません。法律や不動産の専門家による法的根拠や知見をもとにした適切なサポートを受け、合理的な解決を目指すことをおすすめします。

まとめ

親が亡くなった当日は、死亡診断書をもらい近親者などに連絡をします。次に葬儀社を決めて、退院手続き(入院費用の支払い)と遺体の搬送を行います。

葬儀の準備は葬儀社が主導しますが、必要に応じて初七日の繰り込み法要も行いましょう。通夜、葬儀(初七日)火葬と進行します。火葬には、火葬許可証が必要なので、役場等で死亡届を提出する際に申請し、火葬場に持参しましょう。

年金の受給停止や健康保険証の返却といった手続きをそれぞれの期限内に行いましょう。

遺産相続は、有効な遺言書があれば書かれている内容に沿って行われます。ない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い決定します。特に、遺産分割協議で揉めやすいのは不動産の相続です。不動産は平等な分配が難しく、協議が難航するのです。

不動産の相続で揉めた場合は、専門家である不動産会社や弁護士への相談を検討しましょう。相続で揉めたくないから、「とりあえず、共有名義」は後々トラブルの火種となるため、絶対に避けましょう。

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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