(民法上の)正当防衛及び緊急避難|用語集
(民法上の)正当防衛及び緊急避難
目次
民法720条1項:「1.他人の不法行為に対し、2.自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、3.やむを得ず 4.加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。」
同条2項:「前項の規定は、5.他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。」
正当防衛について
1. 他人の不法行為
この「他人の不法行為」は故意・過失の要件を備えていることは不要で、客観的・外形的に違法であれば不法行為とされます。
2. 自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため
防衛の意思はもちろん必要ですが、同時に侵害者に対する攻撃的な意思があってもよいとされます。
3. やむを得ず
他人の侵害が急迫で国家の救済(例えば警察に助けを求める等)を求める時間的な余裕がなく、加害行為をする以外には他に適当な方法がない場合をいいます。
4. 加害行為
この加害行為は不法行為者に対するものでも第三者に対するものでも良いとされています。
- 民法上は第三者の加害行為も正当防衛として認められるのが刑法上の正当防衛との違いです。
4. 防衛すべき利益と、加害行為によって侵害された利益との間に合理的な均衡
これは、些細な利益を守るために、大きな利益を奪ってはいけないということです。例えば、時計を守るために人の命を奪うことは均衡がありません。この場合、過剰に防衛したとして民事責任では不法行為責任が発生する可能性が高いです。

緊急避難について
5. 他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合
他人の「物」から生じた急迫の危難を避けるために侵害行為(防衛行為)が行われた場合です。民法上の緊急避難は、「不法行為」によるものでなくても緊急避難になります。たとえば、不可抗力で犬の鎖が切れて襲われたような場合がこれにあたります。動物は法律上「物」と扱われます。
- 民法上の緊急避難は危険が「物」から生じたものに限られる点が刑法上の緊急避難と大きく異なります。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で共有物分割や遺留分侵害額請求など相続で発生しがちな不動産のトラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。