民法改正(相続)のポイント|法律・税金

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民法改正(相続)のポイント

質問民法、特に相続関係での改正のポイントはどこですか?

今回の民法改正については、平成29年(2017年)12月20日に、「民法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(平成29年政令309号)が公布され、改正民法の原則的な施行期日は、平成32年(2020年)4月1日とされました。
相続法の分野の大きなポイントは下記になります。

  1. 配偶者居住権の新設
  2. 結婚期間20年以上の夫婦は住居の贈与が特別受益の対象外に
  3. 被相続人の介護・看病に貢献した親族の金銭請求が可能に
  4. 法務局で自筆証書遺言を保管が可能に
  5. 自筆証書遺言の検認が不要に

それでは、簡単に解説していきます。

解説

(1)配偶者居住権の新設、(2)結婚期間20年以上の夫婦は住居の贈与が特別受益の対象外に

まず、「配偶者居住権」とは、「死亡した人(被相続人)の配偶者が自宅に住み続けることができる権利」とされています。配偶者が死亡し、遺産分割が発生してしまうと、残された配偶者が家から出ていかなければならなくなってしまいます。そのような状態を避けるために、配偶者居住権を新設し、残された配偶者を保護する形となっています。

婚姻期間が20年以上継続している場合、配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居は原則として遺産分割の計算対象とみなさないとする規定も新設されます。

(3)被相続人の介護・看病に貢献した親族の金銭請求が可能に

例えば、夫の親を献身的に介護したお嫁さんがいたとします。お嫁さんは夫の親の相続財産について相続する権利はありません。献身的に介護したにもかかわらず、相続財産を得られないのはあまりに酷です。相続財産は被相続人に貢献した人にも行くべきで、それを実現させるようにしたのが今回の改正です。

(4)法務局で自筆証書遺言を保管が可能に

今までは、被相続人が作成した自筆証書遺言は自宅で保管するか、弁護士に預かってもらうしかできませんでした。そのため、費用と手間をかけ、遺言書を作成する必要がありました。自宅で保管する場合は遺言書の紛失・偽造の可能性があり、トラブルに発展することもありました。改正後は、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができます。法務局にあずかってもらうことで、紛失や偽造のリスクは今までよりも少なくなるといえるでしょう。

(5)自筆証書遺言の検認が不要に

(遺言書の検認)

民法1004条:1項「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。」

同条2項:「前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。」

同条3項:「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。」

(過料)

民法1005条:「前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。」

上記のように自筆証書遺言が見つかった場合、今までは相続人全員が立ち会いのもと、家庭裁判所で検認という手続きが必要でした。検認手続きをしないと遺言書の内容を確認することができず、無断に開封してしまうと過料に課されてしまうという規定まであります。改正後には、検認手続きが不要となるため、相続手続きの時間短縮につながることでしょう。
尚、自筆での遺言書作成が時代に合わなくなってきていることから、法務省はデジタル機器での遺言書作成を認める方針で検討を進めています。(2023年10月時点)

相続イメージ

この記事の監修者

塩谷 昌則シオタニ マサノリ

弁護士

弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。共有物分割訴訟、遺産分割調停、遺留分侵害額請求など共有持分をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。

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